良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『マッド・マックス』(1979)最初に見た時に受けた衝撃は今も覚えています。

 かなり昔の話になりますが、小学生の頃、夜のテレビで映画を見ていたら、暴走族と警察官が殺し合いをする作品を夜9時ごろに普通に放送していました。  その日の夕方に友達と遊んでいたときにちょっとマセガキだった彼は「今日の映画はスゴいらしい。なんでもバイク事故でスタントマンが死んじゃったらしいぜ!」と言い出しました。
画像
 「へえ!スゴそうやね!」とぼくは返し、その放送を待ち続けていました。ウチはアクション映画が大好きな家庭だったので、無事に見ることが出来ましたが、ダメだった家もあったようで、何人かのクラスメイトは残念がっていました。  近未来のオーストラリアのハイウェイで警官から奪った盗難車のインターセプターで暴走した挙句に事故死を遂げるナイトライダー(ヴィンス・ギル)と彼らの報復を受けて、暴走族にガソリンで火だるまにされた同僚グース(スティーヴ・ビズレー)、そして復讐のために女も子供もお構いなしにバイクで轢き殺そうとするボスであるトー・カッター(ヒュー・キース・バーン )の外道ぶりには驚いたのを覚えています。
画像
 同僚グースと奥さんは病院ではまだ瀕死の状態ではありましたが、まだ生きていました。ただし続編には出てこなかったのでたぶん亡くなったのでしょう。追跡される前におばあちゃんがライフルをブッ飛ばすシーンではなぜか『狩人の夜』で子供を守ろうと奮闘するリリアン・ギッシュを思い出しました。  同僚と家族を失った警官マックスを演じたのは当時はまったくの無名だったオーストラリア人俳優のメル・ギブソンです。彼を一躍スターダムに押し上げ、世界的な俳優にした作品こそが『マッド・マックス』『マッド・マックス2』でした。  もっとも評価が高いのはさらに夢も希望もない最終戦争後の未来を描いた続編である『マッド・マックス2』であり、ぼくも大好きな作品ではあります。しかしながら、オリジナルである本作品がなかったら、続編が世に出ることはなかったでしょう。
画像
 『北斗の拳』をはじめとするサブカルチャーに大いに影響を与えた続編が世に出るためにもこの『マッド・マックス』の存在意義は極めて重要に思えます。  マックスの復讐劇もまた過激で、記憶に残るシーンが数多い。いわゆるチキン・ゲームを多用しながら、族たちを精神的に追い詰めて恐怖を与える様は殺伐として異様な迫力です。  有名になったバイカーの後頭部に勢い余って激突するバイクの前輪は衝撃映像でした。実際には死亡しなかったそうですが、見世物の煽りとしては最高の宣伝となりました。実際、『マッド・マックス2』の回想シーンでもこのカットを使用していました。
画像
 ラスト・シークエンスで5分以内に足首を切断しなければ助からないと族の生き残りのジョニーに冷徹に言い放つメル・ギブソンに痺れたアクション映画ファンも多い。  よく見るともっと暴走族の人数はもっと多かったように思いましたが、予算の都合からか、本物の暴走族(セリフのないバイカーは本物の暴走族を起用していたそうです。)があまり集まらなかったのかマックスの家族を轢き殺すシーン以降は徐々に減ってくる。  ただし、前述したようにストーリーはいたって単純な復讐劇である。では何が世界的な成功の要因となったのだろうか。この映画の製作費は400万ドルで、金が底を尽きてからはジョージ・ミラー監督のマイカーまでもアクション・シーンに使ったそうです。
画像
 世界中でかき集めた利益は1億ドル以上と言われていて、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が出るまではギネス認定されていました。それだけ世界中の映画ファンを熱狂させてきた理由は何だろうか。  まず第一に思い付くのは身体を張ったスタントマンたちの危険を顧みない頑張りだろう。アメリカよりも規制がユルいオーストラリアならではの危険さと火薬の使用量は迫力のある画面を作り出しています。  バイクや改造車による乱暴な運転の連続でも死者を出さなかったタフネスぶりはまさに漢が見るに相応しいアクション映画である。
画像
 もちろん疾走するバイクのスピードや猛烈に腹に響いてくるエンジン音は爽快です。もしこの映画の公開時に夜中に上映されていたのを見たならば、何度も通ったかもしれない。  1980年代にシルヴェスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガー主演でこの『マッド・マックス』に似たようなあまり何も考えていない映画が山のように公開されましたが、お金を使っている割りにはまったく面白味のないものばかりでした。
画像
 両者とも『ロッキー』『ターミネーター』ではたしかにあった必死さや新鮮味が消え失せていて、パプリック・イメージ通りに与えられた仕事をこなしているだけでした。しかし『マッド・マックス』でのメル・ギブソンにはチャンスをものにしようとする意志を感じます。  そうはいっても、メル・ギブソンも例外ではなく、『マッド・マックス2』『リーサル・ウェポン』までは活き活きと躍動していましたが、その後は普通のアクション俳優になっていきました。
画像
 ただ彼とスタローンらとの違いはアクションでなくとも、または裏方に回っても『パッション』『アポカリプト』などの衝撃的な作品を世に送り出したことでしょう。  欧米とはどこかテイストが違うオーストラリア独特の文化が映画に焼き付いているように思います。何だかんだ言っても、V8インターセプターのエンジンが唸る爆音とトーカッターへの執拗な追跡を見れば、ただそれだけでぼくは十分に満足できる。
画像
 後からゴチャゴチャと意味付けする必要はない。これがなければ、後に『マッド・マックス2』は出てこないし、『北斗の拳』は違ったものに変容していたでしょうし、身長が低い俳優メル・ギブソンが世に出るのも難しかったでしょう。  寡黙なだけでなく、小柄なメルが乱暴な暴走族たちに復讐を遂げていくからこそ、観客も彼を応援したのです。あれがシュワルツェネッガーだったら、彼が勝っても誰も共感しません。
画像
 この映画は何度かテレビ放送されていて、中学生時代に深夜放送された時もしっかりと見ていましたし、ビデオレンタルされたときには嬉しくて、何度もオリジナル音声を楽しみました。この映画は昼間や夜9時くらいに見るよりも、真夜中に見た方がより楽しめます。  オリジナルではオーストラリア訛りが強すぎるためにアメリカ公開時には音声の吹き替えが行われたそうですが、同じ英語という言語のはずなのにそこまで分かりにくいのを知り、なんだか可笑しくて、笑ってしまいました。
画像
 初見から30年以上が経過しましたが、未だに色褪せない暴力の魅力と若々しく、哀しみに満ちたマックスの表情は新しいファンを獲得し続けるでしょう。オリジナル版のこの作品、そして第二弾『マッド・マックス2』はDVDにメディアが変わっていっても、何度も繰り返し見ています。  さすがに『マッド・マックス3 サンダー・ドーム』は劇場まで観に行ったもののあまり好きではなく、数回しか見ていません。第4弾も出ると聞いていましたが、未だに製作はされていないようです。
画像
 メル・ギブソンも高齢になってきましたので、やるとすれば新しい若手俳優を主役に持ってきて、彼を戦術的に補佐する謎のホームレスのおじいちゃん役か何かで起用するのだろうか。見たいような、あまり見たくもないような複雑な気持ちです。 総合評価 80点
マッドマックス [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by マッドマックス [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル
マッドマックス2 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by マッドマックス2 [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル
マッドマックス / サンダードーム [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by マッドマックス / サンダードーム [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル