良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)不死身のウルヴァリン、スピンオフ第二弾だったはずだ…

 映画館での予告編が流れていた時から気になっていて、今週末から公開されている『X-MEN フューチャー&パスト』を見るための復習を兼ねて、ただいまシリーズの過去作品群を見直しています。  とゆうか“FUTERE&PAST”とわざわざ英語表記にせずとも「過去と未来」とか「時空を超えて」とかでいいじゃないかとも思いますが、とにかくまた公開されます。  記事としてまだ書いていなかったのは三作目とこの『ウルヴァリン:SAMURAI』でしたので、これを選びました。何よりも注目なのは今回の舞台が日本なので、本来であれば日本の映画ファンとしては喜ぶべきでしょう。
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 ただおそらくハリウッド映画が欲しがる日本らしい映像は現実の日本ではない。彼らが求めているのはいまだにサムライ、芸者、アキハバラ、忍者にヤクザなどの現実的ではないファンタジーなのでしょう。  SFなのだから、ごちゃごちゃ言わずにまあいいかで済ませましょう。主演はもちろん、ヒュー・ジャックマンですが、気になるのは日本勢。真田広之はナイスチョイスですが、後に続くのはTAO(ヒロイン)、福島リラ(予知能力者で剣術使い。)。  ハル・ヤマノウチ(ヤシダ爺ちゃん)、スヴェトラーナ・コドチェンコワ(魅力のない蛇女ヴァイパー)、ケン・ヤマムラ(若いころのヤシダ氏)、そしてファムケ・ヤンセン(幻影のジーン)。最後まで見た人はこれにマグニートーとプロフェッサーXが加わるのを知っているでしょう。
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 有名な日本の俳優は真田のみです。一応、チョイ役で小川直也が出てくるのですが、あまりにも呆気なくやられてしまうのでがっかりします。アクションと演技が出来る人をちゃんと探して欲しかった。しかも真田にはたいした見せ場もないのは重ね重ね残念です。  ラスボスに千葉真一とかを使ってくれたなら、そしてミュータント役で志穂美悦子を上手く起用してくれていたら、石井輝男ファンは狂喜したに違いない。
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 それはともかく、記憶に残るシーンがいくつかあります。冒頭、長崎市湾内の造船所が並ぶ中心部に巨大なB-29の機体からファットマンが投下されるシーンには吐き気がします。  なぜならば、ぼくは学生時代に長崎市内に住んでいて、そろばんドックが近くにあり、あの構図に似た風景が眼前に広がっていたからです。  また爆心地の公園では毎年、写生コンクールなども開催されていて、あちこちの場所に思い入れがあります。また関西は今でも住んでいますし、AKBの本拠地である秋葉原の様子も親しみ深い。
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 ヒュー・ジャックマンとTAOの逃避行で、京都駅近く(たぶんあのボコボコしたビルは京都駅近くだったはずですが、勘違いならご容赦ください。)のラブホテル(ホテル街は難波っぽい。)でのシーンをクッションに長崎から東京まですぐに到着してしまったりと地理的には首を傾げるシーンが多々あります。  ただ同じように外国映画でも観光名所を巡っていくときのシーンの繋ぎを見ていると、時間的にも地理的にも疑問が生じることもままあります。まあ、気にしない、気にしない。  それよりも気になったのはヒロインがいつまでも喪服のままで、ユニクロなどで目立ちにくいカジュアルに身を包むことなく、普通に緋牡丹ねえさんのように走り続け、新幹線に乗ってしまう衣装でした。
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 敵方のミュータント(蛇女ヴァイパー。なんか昔見た『Ⅴ』みたいな感じ。)の不意打ちに遇い、再生能力を奪われてしまったウルヴァリンが矢志田家の孫娘(TAO。僕らが知るタオは田尾安志かなあ。)を保護しながら、暗殺組織の追撃を避けていく過程では二人が新幹線に乗車する場面があります。  追っ手として襲い掛かってくる“普通の人間”のチンピラと不死身のミュータント・ウルヴァリン(このときはヴァイパーにより、本来の能力を抑制されている。)との争いの最中、屋根の上で戦う展開に移っていくと、高速で走り抜けていく真上で、ルパンみたいな漫画チックなつばぜり合いを持ってきています。  新幹線のパンタグラフが無くなっているなあとか、カーブなどもあるのに何で真っ直ぐにしか飛ばされないのだろうかとか突っ込みどころはありますが、ヤクザとの戦いはユーモア一杯に描かれています。
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 負傷したウルヴァリンを治療するのが獣医というのはウルフだから獣医で良いやとなったのかなあ。ごちゃごちゃ言わずに楽しみましょう。  真田広之と忍者でいっぱいの矢志田邸で戦ったり、要塞化した町並みやお城のような本拠地で最終決戦に挑んだりとあれこれ工夫はしています。  が、そもそも原爆投下時に命を助けた日本人が死に際に、恩人であるアメリカ軍捕虜だったローガンにお礼を言いたいからという理由で彼を呼び寄せたはずだったのに結局はただ騙し討ちにして、彼の能力を奪い取り、自分の延命を図りたかっただけという目的が明らかになるにつれ、感情がどんどん萎えていってしまいます。
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 せっかく舞台を日本に設定して、“X-MEN”という看板を棄てて、ウルヴァリンの独立物として扱い、しかも“サムライ”というタイトルを冠しているにもかかわらず、武士らしい潔さはまったく描かれない。  しかも不死身のウルヴァリンなのに中盤までは能力を奪われているので、まったく強くない。何を見せたかったのだろうか。矢志田のジイサンが最後にパワード・スーツと一体化しているシーン(正体を現したときはダース・ヴェイダーのアナキンが死ぬ寸前を思い出しました。)はありきたりで展開が読めてくるとさらに冷静になっていく自分を見つけられるでしょう。  矢志田ジイサンのパワード・スーツがどうしてもアラレちゃんの産みの親(センベイさん)の宿敵であるDr.マシリトキャラメルマン1号に見えてしまいます。
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 Xメンらしさというか面白味は敵方のミュータントの能力やデザインにありますが、今回の蛇女はあまり強くないし、予知能力があるだけの福島リラとの一対一の格闘でやられてしまう程度なので魅力はありません。  また矢志田ジイサンもしょせん復活したウルヴァリンの敵ではなく、回線をズタズタにされてから放り投げられただけで退治されてしまう。  問題点は敵キャラの弱さとウルヴァリンの不死身さを前面に押し出していない点、ジーンの幻影に悩まされるシーンが多すぎることでしょうか。夢にうなされる描写は始まりと終わりだけで良いのでは。
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 まあ、いろいろ問題点があったとしても、大好きなシリーズが日本で撮影されたことは楽しかったのはファンならば一致した思いではないだろうか。  さあ、新作に期待しよう。週明けにでも友人と一緒に映画館まで観に行く予定にしておりますが、X-MEN好きな彼女とニコニコしながら、スクリーンを後にして、食事に出て行けたら良いなあ。 総合評価 60点