良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ラプラスの魔女』(2018)すずちゃん&櫻井を無駄に使っている?

 価格と価値について考えながら観る映画になってしまったのが櫻井翔主演で謎のヒロインに広瀬すずちゃんを迎えた『ラプラスの魔女』です。

 どういうことかと言うと、映画を映画館まで見に行くという行為に掛かるのは交通費、鑑賞料金、食事代などのお金の部分だけではなく、費やした時間の要素があります。

 残り少ない人生の時間を配分するにおいて(すぐに死ぬとかではなく、平均年齢とかから逆算するとあと何年くらい生きられるかは目安がつく)、時間という要素は案外重要なのです。

 ライフシフトなどと言われ、人生100年時代になりましても、皆が確実にそこまで辿り着けるわけではない。空気や水と同じく、ふだん当たり前すぎて意識はしていないが時間とは各自にとって取り返しがつかない要素なのです。論理的にはこれはダメだと判断した段階で席を立ち、他の用事を済ませるほうが正しい。

 これはサンクコストという概念で、取り返しがつかず、しかも損するだけであると判断したならば、別の機会を窺うべきなのです。でも出来ないのが一般人であり、映画マニアなのです。これまでに費やしたコストとこれからそれがもたらす利益がどれくらいかを秤に掛けて、損失だけだと判断すれば、損を確定すべきなのです。

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 株式取引もそうで、たとえば10万円で株を買い、1万円利益が出た時と、不幸にして1万円ほど時価に損失が生じて、9万円になったとします。このときぼくら凡人は1万円の利益よりも1万円の損失の方が苦しく感じます。

 損失は利益の3倍の苦痛が生じると言われています。投資では損を確定して、次の機会を窺う感覚が必要で、損切りを出来ない者は市場から退場することになります。

 それでも映画ファンの性質として、最後まで責任を持って見届けるべきですので見捨てずにエンドロールまで空虚な時間を過ごしました。

 映画の鑑賞料金には価格がありますが、これはどの作品を観に行っても変わらない。ピチピチで可愛い広瀬すずちゃんが出ている映画もむさ苦しいオジサンばかりの作品もだいたい1800円くらいです。

 観に行って、損をしたという時はお金と時間の両方を意味しています。ではこの映画の場合、櫻井翔のファンと広瀬すずのファンならばどうだろう。

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 二人が映っていれば、とりあえずは満足だろうか。ある程度は満足できるでしょうが、作品そのものについては印象に残らないでしょう。それで良いのだろうか。せっかく観に行ったのに巨大スクリーンに映し出されるだけでどれくらいお金を払った価値があるだろうか。

 ストーリー展開や演出によって、もっとマシな作品に仕上げられなかったのかという段階に入るはずです。作品としての価値を高める努力の跡が見られないことがコアな彼らのファンでも看過できないレベルに達しているのではないか。

 なんだかモヤモヤするなどという程度ではない、ポンコツ感が拭えない凡作になってしまいました。ストーリー展開がどうのこうのとかいうレベルではなく、何を見せたいのかが分からないですし、人間が描かれておらず、息づかいというか、体温を感じません。

 言い換えれば、共感が得られないのです。特殊な手術を受けると予測能力が尋常ではないレベルまで上がるようで、福士蒼汰とすずちゃんが超能力者のような設定で過去の清算をするべく動き回りますが、いまいち感情移入できません。

 さらにもっとも酷いのが豊川悦司演じる映画監督で、ただのキ●ガ●でしかない。クライマックスで自然現象を利用して、このオッサンを殺害すべく仕掛けを施し、奇妙な館が全壊するような事態になるが、その場に居合わせたすずちゃん、福士、豊川、そしてついでにサトエリが皆無事に生き残っている。

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 しかも瓦礫の中から、ゴソゴソ動き出します。まるでその様は大昔、毎週土曜日に見ていたドリフの爆破コントとあまり変わらない。大風呂敷を広げた上に何も回収できていない。演出の意図が見えず、脚本が迷走してしまうと、演者に出来ることは無くなってしまう。

 せっかく多忙を極める彼らのスケジュールを押さえたのだから、もっと出来上がりに責任を持つべきでしょう。ついでに思ったのはタイトルをガリレオにして、キャストを福山雅治に変え、プロットを映画用に捻れば、もっと違う展開になったでしょうし、『三度目の殺人』以来の共演となれば、話題を呼んだかもしれません。

 脚本が人間を描けておらず、演出の意図があまり見えず、映像も普通でした。原作はもう少し興味を持って読むことが出来たのだろうか。スター俳優が出ていても、さすがにこれだけ意味不明だともったいない。

 櫻井翔にとってはこの映画はあまり意味を持たなかったのではないか。撮影の合間にすずちゃんにビシビシ鍛えられていたことのみしか記憶に残らないでしょう。

 ちなみに観に行ったときの観衆は30人程度なのでそこそこ入っていました。ほとんどが櫻井ファンと思われますが、満足できたのだろうか。たぶん、訳が分からないままに我慢していたのでしょう。久しぶりに映画館に行って、眠りそうになった、というか所々記憶がありません。

 硫化水素にぼくもやられてしまったのだろうか。人を眠らせるのに薬品は要らない。ただ退屈な映画を静かな環境で見せればいい。

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総合評価 38点

 

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  • 発売日: 2018/11/14
  • メディア: DVD