良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『稲村ジェーン』(1990)寒かったし、長かったよね、これ!音楽は最高だが…

 ここ一ヶ月以上、緊急事態宣言の影響で映画館に通えなくなっていたため復活した趣味の1つがレコード鑑賞で当然聴くのはレコード時代に存在していたアーティストやバンドの作品群です。
 
 僕が10代だった頃に聴いていた日本人アーティストはYMO、RCサクセション、佐野元春松任谷由実スターリンなどのインディーズ、そしてサザンオールスターズなどでした。今年の春先はよくユーミン(おもに荒井由実時代)を手に取っていましたが、夏が近づき、最近はサザンオールスターズが我が家のレコードプレーヤーにちょいちょい載っています。
 
 『10ナンバーズ・カラット』『タイニー・バブルス』『ステレオ太陽族』『NUDE MAN』『綺麗』『人気者で行こう』『KAMAKURA』などのアルバムや『ボディスペシャルⅡ』『YAYA あの時代を忘れない』などのシングルを聴いています。
 
 そんなときにふと「『希望の轍』って、何に入ってたんだろう?シングル盤ってレコードあったっけ?」と思い立ち、「『みんなのうた』はレコード買ったなあ。『フリフリ'65』ってレコード持っていた記憶があるけどCDだったかな?」とか色々思い出してきました。
 
 そして、「そうだ。確か『稲村ジェーンに入っていたなあ。」と思い出し、サントラ盤を調べると、ヤフオクとかでもCDだけでした。たぶん『世に万葉の花が咲くなり』やシングル『女神たちへの情歌』辺りからは残念ながら、フォーマットが変わってしまったようです
 
 ついでに映画『稲村ジェーン』を見たくなり、DVDをAmazonでポチ買いしようと探しましたが、実はビデオしか発売されておらず、それも10000円を超えていてさらにびっくりしました。
 

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 だったらヤフオクはどうなのかなあと見に行くと、やはりDVDはないようで、バカ高いビデオの出品があるだけです。ここはK-プラスさんの出番だと思い、検索をかけてみると取り扱いがあったので、さっそく借りてきました。
 
 リストを見ると出演者は伊武雅刀草刈正雄泉谷しげる尾美としのり、金山一彦、清水美沙、的場浩司小泉今日子、そして加勢大周らが揃っていて、桑田佳祐原由子らバンド・メンバーもカメオ出演しています。
 
 サザンの桑田が映画初監督作品を撮るということで、バブルが弾けつつあった1990年ではありましたが、すぐに元に戻るさという楽観的な雰囲気の下、この映画は製作されました。
 
 しかしながら、公開当時もたへんな話題作品ではありましたが、はっきり言って映画としての仕上がりは最低最悪で、草刈と加勢の病院での”稲村ジェーン”についての思いで話など所々に綺麗な写真になっているカットがあるものの、繋がりは悪く、微妙なお遊びがすべて空回りしていて、痛々しい。

 

 『希望の轍』『愛は花のように(Ole!)』『真夏の果実』『忘れじのBig Wave』。サントラは粒ぞろいの名曲で埋め尽くされている。音楽は素晴らしい。

 

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 このあとのサザン作品では好きなのは『YOU』『愛の言霊』などで『TSUNAMI』は好みではなかったので、ここ20年くらいはあまり印象はない。売れなかったけど、個人的には『YELLOW MAN』なんかの実験作は好きです。

 

 致命的なのはストーリー構成がまるで出来ておらず、交通整理が皆無で見づらいこと。時おり良い写真になっているカットがあるものの全体を通すと無駄なシーンの羅列でしかない。

 

 劇中でサーフィンやバンド音楽について語るシーンが多いものの、サーフィンのシーンは皆無に近く、清水美沙がボードに乗っかっているくらいで、これから加勢が波に乗るというカットはあるが、実際には波乗りシーンはない。

 

 パドリングは波乗りとは言わない。80年代、大島や江の島がぼんやり見え、富士山を毎日海岸で見ている平塚に住んでいたので、高校生や大学生の兄ちゃんたちはみな土日は海岸に出て、波に乗ろうと海に入っていましたし、台風の時は海に入って死んだ人もいましたが、みなお構いなしでした。ぼくら小学生にはとてもカッコ良く見えましたよ。

 

 印象的なセリフとして持ってきた"暑かったけど、短かったよね、夏"という有名なセリフが清水美沙から飛び出しますが、個人的な印象は「寒かったし、長かったよね、これ!」という感じです。

 

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 伝説の大波"稲村ジェーン"の話をちょこちょこするのに誰も波乗りをしないというのは何も起こらなかった『マジカル・ミステリー・ツアー』と同じで、もしかすると波乗りシーンを撮ろうにも天候や波の調子がイマイチで、テレジェニックな波乗りが撮れなかったのかもしれません。

 

 しかしまあ、重ね重ね思うのは伝説の大波のことをダラダラと語り続けるくせにクライマックスであるはずのシーンでは誰一人恐いからというクソみたいな理由で波乗りをしないというのはあまりにもみっともない。さらに意味不明の取ってつけたような特撮シーンが加わります。

 

 なんだか訳が分からないカオス状態にしてしまい、収拾がつかなくなってしまった終わり際を見ても、残念ながら桑田佳祐には映画製作の才能は全く無いことは明白で、以降二度と手を出すことがなかったのは賢明といえます。

 

 単純に当時の桑田が忙しく、思うように撮影用のスケジュールが取れなかったのか、今となっては何とも言えませんし、主演の加勢大周の薬物が原因の逮捕もあり、そもそも出来が残念なので、ソフト化を躊躇したのか、お蔵入りしてしまった理由はどれなのかはっきりとしませんし、すべての要因が重なっての封印だったのかもしれない。

 

 『ヒッピー・ヒッピー・シェイク』『ラヴ・ポーションno9』『ふられた気持ち』などの名曲も入っていて、総じて音楽を選ぶセンスは良いのですが、映像を組み立てる才能は桑田佳祐にはなかったようで、そのあとは映画製作をしていません。

 

総合評価 46点

 

稲村ジェーン(リマスタリング盤)

稲村ジェーン(リマスタリング盤)

 

 

 

上島ジェーン

上島ジェーン

  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: Prime Video