『快盗ルビイ』(1988)キョンキョンの可愛さを前面に押し出したコメディ。
ここ数年、何かと世間を騒がせているのが僕ら世代のアイドルだった小泉今日子です。マスコミからはバッシングされがちですが、個人的には「キョンキョンなんだから、何やってもイイじゃん!」「見逃してやれよ!」という感覚で見ています。
アイドル界の正統派の太陽として中心に君臨し、出す曲のほとんどをチャート1位に送り込んだ松田聖子。彼女の後を追うようにデビューして、陰がある不良っぽさが売りで孤高の北極星のような実力派の中森明菜にはファンが二大派閥を作り、お互いに認めない感じがしていました。
一方で表面上はサバサバしていて明るくて、カメレオンのようにパブリック・イメージを変えていったのが小泉今日子です。彼女は姉御肌というか、サッパリした姐さんという感じではあります。
当時から、ぼくらのミューズだったキョンキョンは男前な厳しさを眼の奥底に持つ番長のような雰囲気を持っていました。不思議なことに聖子や明菜を嫌う人はいましたが、キョンキョンが嫌いという人には会ったことがない。
今でも明菜とキョンキョンのレコードをベスト盤やシングル中心に持っているので、ちょこちょこ聴いていますが、彼女たちが『難破船』『Sweet Memories』『木枯らしに抱かれて』を歌っていたのは二十代前半です。
最近のアイドルの楽曲全般は一部を除いて小中学生向けではっきり言って、歌詞に重みがない。このへんが飽きられやすい原因でしょう。それはともかく、楽しいのはキョンキョンのベスト盤です。
初期の楽曲を纏めた『セレブレーション』は赤いジャケ(しかもレコードは赤盤)、『夜明けのMew』までの中期をセレクトした『ザ・ベスト』は青いジャケで、ビートルズマニアならば、思わずニヤニヤしてしまう仕掛けになっています。
アナログ時代のベストでは明菜も二枚目のベスト盤まではいわゆるみんながよく知っているナンバーが満載されています。
残念ながら、『TANGO NOIR』にカビが生えていたので、①静電気除去②クリーニング液に浸す③歯ブラシで研磨④バキュームクリーナー使用⑤仕上げの不織布で水分を取り⑤クリーニング再生を数回繰り返して、元通りの状態に戻しました。
キョンキョン作品に関してはベスト盤2枚、ヒットしたシングル『半分少女』を収録していて何故か一番好きだった『ウィスパー』、そして今回記事にする『快盗ルビイ』、その他では『GOOD MOONING CALL』『水のルージュ』『木枯らしに抱かれて』『Fade Out』などが残っています。
キョンキョンのライヴにもちょこちょこ出かけていた時期とレコードからCDに切り替わるタイミングが同じでしたので、当時はどっちを買おうか迷う頃でもありました。
最後に見に行った頃は『快盗ルビイ』が公開され、『学園天国』などもヒットしており、ライヴでもアクビちゃんの歌を楽しそうに歌っていました。
懐メロをライヴで歌うときはステージにミラーボールが降りてくるベタな演出が楽しかった。キョンキョンはけっこうアニメ好きのようで、のちには『やつらの足音のバラード』などもカバーしていました。
なんてったってキョンキョンの可愛らしさを全面に押し出した作品に仕上げられており、スクリーンにアップで映し出される彼女を見て、ボンクラばかりのボクら観客は多幸感に浸りながら時間を過ごしました。
その他覚えているのはキョンキョンの部屋に飾られたハンフリー・ボガードの大きな壁掛け写真、『ハロー・メリールウ』『ポエ卜リー・イン・モーション』などのオールディーズナンバーの選曲のセンスが良い。
黒のボディコンスタイルで歩いているシーンで、友人が「キョンキョン、これノーブラじゃないか?」と言い出したのを妙に生々しく覚えています。
挿入されるエピソードとしては5000円するキャビア(劇中に出てくるようなサイズの小瓶は今でも同じ程度の値段です。)を大事そうに食べるシーンなどです。
バブル期には5000円というのはそれほど高価という訳ではありませんでしたので、天本英世とのやりとりで分かるのは真田広之が慎ましく水野久美と暮らしていて、バブルにも踊らされずに真面目に生きていた庶民だったということでしょう。
キャスティングが洒落ていて、カメオ出演のように岡田真澄、吉田日出子(じつは大好き!)、天本英世、名古屋章、伊佐山ひろ子、斎藤晴彦、木の実ナナ、水野久美ら渋めの俳優たちがキョンキョンを支えてくれています。
まあ、それでも間抜けな泥棒一味、ルビイ快盗団の暗躍はどこか微笑ましい。あくまでも快盗であり、怪盗ではない。
本人からすると、ヤンチャな感じで「よけーなお世話だよ〜!」って笑いそうです。ぼくらデビューからついて行っているボンクラファンは何やっても支えます。ただ選挙だけは止めて欲しいなあ…。
総合評価 70点