良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『GET BACK』(2021)ようやく円盤が出るようですが、出来れば劇場が良かった。

 数年前、まだ武漢ウイルスが世界中に広まっていないころ、ピーター・ジャクソン監督がこの作品を製作すると聞いたときは期待感が大きく膨らみ、どのようにビートルズの崩壊を描くのかに興味がありましたし、彼らの人間味をどの程度引き出してくれるのかを見る上でのポイントにしていました。

 

 ぼくが『GET BACK』に期待したことの一つは彼が世界的に珍しく、"自分"の意志で上映時間を決められるという特異なスタイルで監督できる映画人であることです。

 

 普通、映画上映するとなれば、劇場の回転率や後のテレビなどでの放映を考えて、15分おきくらいに"切りやすい"ような編集を行ったり、120分以上にはならないように一本にまとめるという作業を強要されます。

 

この時間制限の制約をクリアできる監督はピーター・ジャクソンクエンティン・タランティーノなどごくごく一部でしかありません。なので、ピーター・ジャクソンがこの作品に駆り出されたというのが一番大きな期待ポイントでした。

 

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 しかしながら、武漢ウイルスが世界中に放たれてから、世界は激変し、映画館での上映は早々に無くなり、拝金主義者ディズニーでの配信のみになってしまったと聞いて、絶望しました。ブルー・ミーニーズではなく、中共露西亜の共産枢軸陣営の赤いレッド・ミーニーズに世界は酷い目に遭わされています。

 

 お金をどれだけ儲けるかという行動指針のみしかない彼らがどうやってビートルズの魅力を昔からのファン、新しいファンの両方に満足させることは可能なのだろうか。

 

 ディズニーからの圧力に屈せずにピーター・ジャクソンは思い通りにフィルムの編集が出来るのだろうか。ディズニーだけではなく、残っているメンバー、亡くなったメンバーの家族や権利者に忖度することなく、人間臭さやイヤらしさ、反目や倦怠を描き切ることは出来たのだろうか。その辺が見るポイントになっていました。

 

 ファンからすると、これだけ見て、後はどうでもいいのにウェブサイトのデザインが難解で退会方法がどうせ分かりにくくしているであろうディズニーの配信という名の"チャリンチャリン"の課金ビジネスに半永久的に屈するのは嫌なので、Blu-rayでの販売を待ち望んでいました。

 

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 そろそろ出るだろうと思い、年末くらいから二週間程度、ずっと探していましたが見当たらず、欧米盤が出たと思っても、転売屋のクズどものせいでなかなか手ごろな値段では出ておらず、困っていました。鬱陶しいなあと思いつつ、ダメもとでふと検索してみると通常価格で出ていたので、狂喜しました。

 

 いつ出るのか、まだ出ないのかと毎日のようにAmazonで検索していたので、上手い具合にちょうど注文できる状態になっていたのは助かりました。

 

 定価と思われる3980円でポチ買い予約しました。ちょっと前には15000円とかいうふざけた価格が出ていて、相変わらずの悪徳業者にイラつきましたが、そこでは買わずに待っていました。まあ結局、アメリカ盤は来ず、日本盤を再度予約し直した状況です。

 

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  ただ、時節柄、確定申告(毎年2月1日スタートでしたが、今年は2月16日~)や決算業務などただでさえ忙しいのに、あちこちの部署で武漢ウイルスのせいで2週間のピットインを余儀なくされる社員が相次ぎ、無駄に倒れない僕ら残った社員に仕事が押し付けられています。

 

 しかも、三回目のワクチン予約をしようとしても、近場はどこも満員で、いつになったら打てるやら分からない状況です。その後、三月になり、二回目まではどうしようもないくらい遅くなった頃とは違い、3月上旬には三回目接種を済ませました。

 

 ぼくはモデルナ→モデルナ→ファイザーだったので高熱は出ず、倦怠感が数日続いたのみでした。腕の痛みはモデルナ時は肩パンチを三日打ち続けられるくらいの痛みがありましたが、ファイザーは肩パンが二日だけでしかも高校生が小学生に叩かれる程度でしたのが、へっちゃらでした。

 

 この分だとせっかくBlu-rayをゲットしても、見るのは来月以降になりそうです。ここで一番の疑問がありまして、何故、あれだけ出し渋った『レット・イット・ビー』の元ネタである『ゲット・バック』を今更出す気になったのだろうということです。

 

 おそらくアップルに眠っていた映像・音源がとうとう枯渇してきているのだろうか。実際、『エイト・デイズ・ア・ウィーク』のエンドロールで、ファンが持っている映像フッテージをアップルが募集しているというテロップが流れたのは衝撃でした。

 

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 はじめて映画『レット・イット・ビー』をシネ・クラブ主催の上映会で観たのはたしか1984年でした。この時、『レット・イット・ビー』に加え、『ヘルプ!』『ビートルズがやってくる ヤアヤアヤア!』『マジカル・ミステリー・ツアー』も一挙上映するというハチャメチャなスケジュールでした。

 

それでも、友人らとともにマニア道に進みつつあった僕は当時中三で体力が有り余っていたため、疲れ知らずで楽しんできました。

 

 友人たちと書きましたが、特に学生時代はお金もないし、みんなが持っている情報や音源をコピーしたり、ダビングしたり、ラジオのライヴ情報などを共有している方がより知っていることが増え、詳しくなってきます。

 

 その日から40年近くが経ち、毎年毎年残業が続き、気力体力共に消耗し、ヘロヘロになってきた50代には6時間超の長時間のBlu-rayを三枚見続けるのはさすがに無理ですし、そもそも学生とは違い、視聴時間を取るのがとにかく難しい。

 

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 それでも、よくもあの強欲のディズニーが3枚組のBlu-rayを4000円弱の良心価格で出してくれたものです(その後、発売日になっても配達されることも無く、結局はバカ高い日本盤で妥協しました)。

 

 音と映像がずれている粗悪品だったら、どうしよう。家に運ばれてきて、6時間を見終えるまでは安心できない自分がいます。

 

 中学の頃に見て、寂しい思いをしながら帰路についてからもう40年。『レット・イット・ビー』にあった冷たい空気感はこの『GET BACK』ではどのように処理されたのだろうか。そのままなのか、温かい雰囲気が出ているのか。

 

 スタジオ・ライヴの雰囲気を持つ『GET BACK』がどのような事情でフィル・スペクターの自己顕示欲の塊のオーケストラで埋め尽くされたのであろうか。

 

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 まずは音源から振り返りますと、アルバム『ゲット・バック』をアナログではじめて聴いたのは中学時代の友人が住んでいた地域の繁華街の外れにある輸入盤中心の中古レコード屋さんに出ていた海賊盤『モア・ゲット・バック・セッション』のレコードをコピーしてもらったのが最初でした。

 

 自分でもその後、海賊盤に断片的に収められた音源を片っ端から聴いていき、大学になったころについに『ゲット・バック』そのものの海賊盤を大阪で買ってからでも35年以上経っています。

 

 このアルバムにはあるインストゥルメンタル・ナンバーが収録されていて、これには『ロッカー』『インストゥルメンタル42』『リンク・トラック』など色々な名前が付けられていました。

 

 ようやく昨年末の『レット・イット・ビー』のアナログ・ボックスが発売された時に『アイム・レディ』というオフィシャルの本名が与えられました。aka:ロッカーとなっていて、どっちでもいいみたいですwww

 

 内容は海賊盤と同じではありますが、さすがのオフィシャル盤ではノイズがなく、ジャケが綺麗という質的なスペックが上がっています。若いファンからすれば、「音スカスカじゃん!」とか失笑が漏れてきそうですが、僕ら世代からすると、「うるせー」となります。

 

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 オフィシャルで出るだけでもありがたい。『ゲット・バック』の存在を知ったのが中学生の頃でしたので、40年近く経って、たとえ、ボックス・セットを買わせるための悪質な"釣り"、もしくはカツアゲだったとしても、アップルの公式盤として登場しただけでも感慨深い。

 

 悪名高いアンソロジー・シリーズにしても、新しいファンへの売り方を間違えていただけで、さんざん海賊盤で聴いてきたテイクばかりではあるものの、音質が改善されていて、まとめた聴けるだけでも有難い。

 

 個人的にはコンプリート・ビートルズジョージ・マーティンが初期の活動期に名前を出していた『ファット・スワロー』音源を聴いてみたい。

 

 何でも与えられてきた世代とは違い、ヤフオクなどもない時代に自分の足で全国の中古屋に勘を頼りに欲しい一枚を探しに行く旅をしてきたので、オークションやなんなら外国サイトからでもやる気になれば押さえられるという、今のレコード探しはかなり楽に思えます。

 

 そして、ようやく4月後半にはAmazonから国内盤『ゲット・バック』が届くはずです。さあ、だらだら・ぐだぐだ・ミステリー・ツアーになるのか、解散後にイコライザー処理でマスター音源の音がつぶれてしまい、さらにエンジニアの解散への悲しみが音にも出てしまって陰陰滅滅としている日本の旗帯盤『レット・イット・ビー』で受けた肌寒い感じをまた思い出すのか。

 

 それとも、現役時代のまだ解散するなどと思われていない頃に期待のニュー・アルバムとして発売されていた、アメリカ・赤リンゴ・レーベル盤、ブラジル・モノラル盤、英国オリジナルの初期マトのスタンパ―が若い盤、日本の赤盤などに残されているカラッと明るく、楽しさを感じる世界に戻るのか。発売日が待ち遠しい。

 

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 なんだかんだ言っても、バンドの核はリンゴ・スターなのではないでしょうか。解散後もみんな困ったら、彼のlittle helpをアルバムやステージで求めています。またポールが仕切っている印象が強い後期でも、ルーフトップに登場したジョン・レノンがステージ真ん中に仁王立ちするだけでメンバーのテンションが高まり、ピリッと来る凄味が伝わってきます。