良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966)ずっと勘違いしていました。バラゴンだって....

 ガメラ映画初の対決物であり、以後はすべて対決路線が続いていきます。前回での反省を生かしてきたのか、今回は登場人物をすべて大人のみにして、子供たちを排除しました。このため、ガメラ物では唯一の大人向け作品として君臨し続ける事ができました。  30年間ずっと誤解してきたことがありました。この怪獣の名前はバルゴンであって、バラゴンではなかったということです。なぜにゴジラ映画で有名な東宝の怪獣がわざわざライバル大映まで遠征しに行ったのかどうしても分からなかったのです。  今回レンタルしてみて、やっと過ちに気付きました。他人だったんですね。てっきり友情出演かと思っていました。バラゴン自体もかなり地味なキャラクターで、フランケンに投げられる以外には目立つシーンには出ていません。山本小鉄寺西勇のような感じとでも言いましょうか。  ドラマ部分はパプア・ニューギニアで宝を探す3人の元日本兵たちが秘境からオパールの馬鹿でかい宝石を盗み出し、日本に持ち帰ろうとする。途中で欲望のために仲間割れを起こし、どんどん殺されてゆく。無事に運んだは良いが、港についた途端に船が沈没し、お宝は失われ、かわりにバルゴンが出現し、ガメラと戦う。そして結末は...。  自分の欲望のために災難を招いておきながら、全く反省せずにさらに悪事を重ねていく藤山浩二と、過ちに気付き、原住民の女性(江波杏子)と共にバルゴン退治に真剣に参加する本郷功次郎コントラストを描いています。  主役を演じた本郷よりも、欲望のみに奔っていき、最後は自滅する悪役を演じた藤山が素晴らしく、最も光っていました。悪役が良いと映画は締まりますが、これは典型的でした。  台詞にも戦後の影が色濃く反映され、「内地」、「パプア・ニューギニア」、「遺骨」、「戦死」など第二次大戦の暗さを引きずっています。これらの暗さがあるために作品が硬質のものになったとも言えます。  気味悪い映像が結構あり、バルゴンの孵化シーン、紫の流血シーン、断末魔の目など生物的にどうなのかを検証して作られていくガメラ・シリーズらしい演出がファンを喜ばせる。  叫び声も個性的で、しかも野太く素晴らしい効果を上げています。また、こちらもお得意である都市破壊シーンの出来も良く、きっぷの良い破壊振りにスカッとします。最初のガメラによる黒部ダム破壊シーンも優れていました。しっかりお金を掛けているのが分かります。  神戸に上陸し、新世界を破壊し、大阪城まで壊しに来る。バルゴンが関西を破壊する時に、バルゴンの足元のホテルか旅館の一室から逃げようとする女性の映像が挿入されているのも 細部にわたる細やかな神経が行き届いていた証拠である。  しかし、まあなんで怪獣はみんな観光名所が好きなのだろう。バルゴンも神戸タワー、通天閣大阪城、そして琵琶湖を回ります。ローカルなところも大映らしいです。ガメラは世界中旅していますので、見聞も広いのではないか。  見た人たちが実際にこれらの観光名所へ行った時に、「ああ、バルゴンはこれくらいの大きさだったんだなあ」とか分からせる、いわば「タバコの箱」の役割を負わされたのが、これら名所旧跡なんでしょうか。  自衛隊によって、作成される怪獣掃討作戦もかなりレベルを上げ、前回のガメラホイホイよりも格段の進歩を遂げています。バルゴンの怪光線を反射させて、バルゴン自体にダメージを与えるミラー作戦(のちに対ゴジラ作戦を主導するG-フォースでも、この成果が取り入れられ、スーパーⅩ2に採用?対ビオランテ参照)、人工降雨作戦など科学的な作戦を採用しています。何故次回、ギャオス退治作戦として「ぐるぐる椅子作戦」が取られたのかは大いなる謎です。  これでも駄目な時には原点に戻って、バルゴンがダイアモンドを好きな性質を利用して、彼の目の前にぶら下げて、琵琶湖に連れて行くという原始的なニンジン作戦で勝負を決めに掛かります。ダイアが大好きなどというおばちゃんみたいな性質を持つこの怪獣はいったいなんなのだろう。  人間もダイアや宝石に目が眩み、命を落としていきますが、バルゴンもダイアにつられて移動してきたばっかりにガメラに仕留められてしまいました。琵琶湖を発つときに、湖の水面に反射するガメラの回転飛行の映像が美しい。ガメラのマーチを聴かなくてすむのも有り難い。  ただ不思議なことが二つばかりあります。ひとつは昭和シリーズといえば、監督で思い出すのは湯浅憲明監督なのですが、この作品は田中重雄監督作品であること、第二は「ガメラ対~」と銘打っているにもかかわらず、ガメラはほとんど脇役になっていることの二つです。  映画としての評価が一番高いのが、この作品であることを考えるとガメラ・ファンにはなんとも言い難い作品なのでしょうか。 総合評価 73点 大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン
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