良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『GET BACK ルーフトップ・コンサート』(2022)大画面で見ることに意義がある。

 とうとうこの日がやってきたと言いたいところだが、もともとは先月に期間限定で5日間だけ特別上映されたのが3月3日までアンコール上映されていた『GET BACK ルーフトップ・コンサート』です。

 

 先月上映されているのに気が付いたのはお休みでしたが、すでに上映時間に間に合わない夕方でした。最初の上映期間中、無理矢理に会社を休んで観に行こうと思えば、何とか行けない状況ではありませんでしたが、流石にそんなことをする蛮勇はなく、指を咥えながら、見に行ける人は良いなあと思う程度でした。

 

 見に行った人に聞くと、顔をニヤニヤさせながら、「見たいのは演奏なんで、警官とかインタビューは要らない!」「とりあえず、これを見るのが夢だった!」と嬉しそうに語っていました。ただ、こういう意見を聞いても、観に行けてなかったので、ただただ羨ましい限りでした。

 

 2月にはアメリカ盤Blu-rayが出ると言われていました。しかし予約が出来ていたのに急に発売自体が保留となり、どうなるのかなあと不安だったところに、国内盤Blu-rayが4月に発売されるというお知らせがAmazonに載っていました。

 

 国内盤が出るまで仕方ないかと諦めていましたが、3日前にふといつも観に行く映画館の上映スケジュールを眺めていると、再上映スケジュールがあり、すぐに行ける日を予約しました。

 

 ワクワクしながら画面を見ていると、普段よりやたらと多い予告編と広告にイライラは最高潮に達しました。お金を払ってきているのに広告なんて見たくはありません。

 

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 それでも我慢の子で待ち続けていると、今度こそようやく始まりました。しかしながら、始まったのはビートルズの歴史であり、マニアなら次にメンバーが何を言うかも分かっているインタビューや過去のライブ映像の切れ端を延々と流し出しました。

 

 大画面で見られるという経験以外には無意味な時間が過ぎていき、体感30分くらいが過ぎたような錯覚の後、ようやく本編が始まりました。

 

 まずはアップル屋上にリンゴ、ジョージ、ポール、そしてジョンの4人と奥さんたちや取り巻き連中がダラダラと上がってきて、機材のチェックが始まります。在りし日のマル・エヴァンスがリンゴに頼まれ、ライヴ前のバンドのボーヤ仕事に復帰します。

 

 グリン・ジョンズやマイケル・リンゼイ=ホッグが持ち場について、古びた屋上でソワソワしています。張り切るポールは仕切りながら、どんよりとした寒空の中ではあるものの、久しぶりの演奏機会という場を温めようとしていて、なんだか楽しそうでもあります。

 

 そして、とうとう『ゲット・バック』の演奏がスタートし、ロンドンの曇天に突然爆音が響き渡ります。予め各所でスタンバイしていたカメラと音声スタッフが戸惑いながらも、思わず足を止めて、屋上から鳴り響いてくる彼らの演奏に引き込まれ、アップル周辺に黒山の人だかりを作っていきます。

 

 映像ではないが、音楽用の録音物としてはブートで色々なカメラロールの音源がこれまでに数多く出回っていますので、音源自体には目新しいモノはない。

 

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 嬉しそうにニコニコしている人だけでなく、あからさまに嫌がる人々、騒音?に対して、早速警察に苦情を入れる人の様子が捉えられる。

 

 『ゲット・バック』は2回繰り返され、『ドント・レット・ミー・ダウン』『アイヴ・ガット・ア・フィーリング』『ワン・アフター・909』『ディグ・ア・ポニー』が後に続く。

 

 『ドント・レット・ミー・ダウン』『アイヴ・ガット・ア・フィーリング』『ディグ・ア・ポニー』は2回演奏され、締めは3回目の『ゲット・バック』がもっともタイトな状態に仕上げられます。

 

 さすがはビートルズらしいなあと感じさせる展開で各曲も様々なアイデアとともに繰り返されながら、どんどんまとまりが良くなってきます。

 

 この間ずっと警察との押し問答は続いていて、到着から事務所入り口での時間稼ぎ、とりあえず現場に立ち会わせるまでの「屋上には重量制限があるから、ちょっと待ってくれ!」とかの間抜けな言い訳が笑わせてくれます。

 

 もう抑えきれないと判断した下の階のスタッフがマル・エヴァンスに変わり、マルが警察官たちを屋上に連れていきます。警察官を目にしたときのポールの表情の変化とジョンへの目配せが最高に微笑ましく、まるでハンブルグ時代の悪ガキに戻ったように見えます。

 

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 警官による騒音苦情に対処するマルがアンプを切ると、すぐにジョージがイライラしながら、邪魔するなとばかりに電源を入れ直す下りは映画『レット・イット・ビー』にもありましたが、今回もしっかりと収録されています。

 

 さまざまな困難がバンドに起こっていた時期ですが、ファンは誰もそんな事情は知らない。実際にその場に立ち会わせた、超幸運な人々もそれが彼らの最後の生演奏になるとは思いもよらない。

 

 もしかするとメンバーも最後になるとは思ってなかったかもしれません。今これを見たら、最後の演奏と分かった上での鑑賞となりますが、その事実を知らずに見れば、このあとはどんな活動をしたのだろうと期待するでしょう。

 

 そんなこんなのさまざまな考えが常に頭の中を駆け巡るうちにジョンの有名な「オーディションに受かるかな?」ジョークが放たれ、ゲリラ演奏は終わりを告げます。画面はアップル前の人だかりを映し出し、騒然とした街がいつものどんよりとした状態に戻って行きます。

 

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 演奏を終えたメンバーと妻たちはスタジオに戻り、ポールが仕切る完璧主義にウンザリしながら、渋々同じ曲を何度も繰り返し演奏していきます。

 

 ライヴの即興の楽しさをレコーディングでも出してみようというコンセプトだったはずですが、上手く行かなかったことが解る映像です。なんとか良いものにしようとして周りの反感を買う様子は痛々しい。

 

 それでも今になって、これを映画館で見せてくれたポールとリンゴには感謝しかない。まあ、だいたい十年おきくらいにCD化、アンソロジー、リマスター、モノラル音源のCD化、ハリウッド・ボウル、映画のBlu-ray化、またまた最新リマスターや未収録音源のちょこちょこ出しなどを繰り返し、中高年のファンやマニアをカツアゲしに来る姿勢はハンブルグ以来の不良のままではあります。

 

 たださすがに日本製Blu-rayの12000円は高い。アメリカ製が4000円程度なのに格差社会に移行している日本からどれだけぼったくるのだと糞ディズニーには抗議したい。でも買っちゃいます。いつまで経っても、これまでも、そしてこれからも彼らからの10年ごとのカツアゲには応じてしまうでしょう。

 

満足度 90点(警官とインタビューは要らないwww)

 

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