良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『トパーズ』(1992)村上龍の小説を本人が監督し、映画化。カルトかも?

 1980年代後半、いわゆるバブルという株や不動産投機で世の中が大騒ぎし、ディスコで踊り狂っていた頃、地味な片田舎の大学生だった僕には東京や大阪の喧騒はニュースで見聞きする程度でした。
 
 それでも徐々に近所の田んぼや畑、駅前がどんどん再開発されたり、久しぶりに会った、都会の大学に通っている友人たちのファッションや外車を乗り回す姿に「踊る阿呆に見る阿呆だな。」と思いつつ、景気も良さそうだし、みんな楽しそうだし、こんなもんなのかなと日々を過ごしていました。
 
 そんな頃、ぼくに衝撃を与えたのが村上龍原作の小説『トパーズ』でした。風俗嬢が客が来るまで控えている待ち屋の様子や人間関係、そこで行われているSM行為は異常そのものですが、提供者である風俗嬢は暮らしぶりは地味で、派手さもない。
 
 主演を務めた二階堂ミホの持つ危うさと強さ、天野小夜子、三上寛島田雅彦加納典明草間彌生ら周りを固めるキャスト陣の異様な雰囲気も功を奏して、なかなか個性的な作品に仕上がっています。
 
 映画としてはアートフィルムっぽい感じで、筋を追うタイプではありません。活動写真を楽しむタイプの映画です。最後に観たのは1990年代後半でしたが、数十年経っても覚えている場面はいくつもあり、高層ホテルの一室にいる加納典明が呼びつけたボンテージルックでほぼ裸のミホを窓に向かって手をつかせた状態で、尻を振らせる。

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 そのまま夕日が落ちるまで、数時間納得するまで腰を振らせ続けるドSプレイを楽しみ、その後、自分の女を呼び、ミホに繋がっている部位を舐めさせる異常行為を堪能します。
 
 阿部定と吉蔵が死に間際に試した首絞めプレイで仮死状態になった島田雅彦に驚き、逃げ出すシーンと島田が息を吹き返すシーンに久しぶりに笑いました。
 
 その他、夜の公園でオペラの歌に感動して涙を流すものの、結局は何事もなかったように電動コケシやSMプレイ道具が入っている赤いバッグを抱えて指定場所に向かっていくシーン。
 
 手話を交えて、サルサのリズムに腰を振りながら観客を挑発するエンディングに繰り返される『ジェゲ・ジェゲ』もちょうどクライマックスにかかる間奏部分が演奏される。けっこう数十年経っても覚えているシーンが多く、驚きました。
 
 あれだけ稼げた時代に風俗嬢としてしか生きて行けなかったのはよほどの事情があったのだろうとは今となれば、それなりに理解は出来ますが、当時はそんなことには思いも及ばず、昔の人たちが永井荷風谷崎潤一郎田山花袋の小説を陰でコソコソ読んでニヤついていたのと同じような思いで、『トパーズ』の各章に向き合っていました。
 
 その後、大学を無事に卒業後、何気なく新作映画の記事を見ると、なんとこんな風俗嬢の話が映画化され(地元映画館にも掛かったが、いく前に終わってしまった)、ついにはレンタルビデオ屋さんに大量に並ぶ日が来ました。
 

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 村上龍作品は何度も映画化されていて、デビュー作品『限りなく透明に近いブルー』『だいじょうぶマイ・フレンド』『トパーズ』『KYOKO』『ラヴ&ポップ』『オーディション』などはビデオなども発売されました。
 
 村上龍本人も監督していて、正直言いますと「餅は餅屋に任せろ」とも思いますが、ファンならば、そこそこ楽しめます。
 
 今ならば、大ヒット公開中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をようやく着地させた庵野秀明が監督した『ラヴ&ポップ』は別の見方が出来るでしょう。
 
 『トパーズ』は音楽が素晴らしい。オープニングで響き渡るキューバの国民的サルサ・ドゥーラ(ハード・サルサ)の雄であるロス・ヴァン・ヴァン(ロス・バン・バン)の『ジェゲ・ジェゲ』が作品の方向性を決定づける。
 
 天才ベーシスト、ファン・フォルメル、同じく奇才チャンギートが乱れ撃つドラミングの凄まじさに触れるとレゲエが霞んできます。
 
 ただレゲエは生き方でもあるし、ボブ・マーリーのレコードも大好きで、『LIVE!』『カヤ』『レジェンド』などは今でもちょくちょく聴いています。
 

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 ロス・ヴァン・ヴァンのアルバムはCDならば、今でも日本盤が安価で手に入りますが、レコードはそもそも発売されてないようで、イギリス盤やキューバ盤を探さなければいけません。これがとても難しい。
 
 理由の一つはCD化された時に僕が聴いてきたアルバムタイトルと当時のキューバで発売されていた原題が違うことです。例えば、最高傑作と呼ばれる『coleccioN Juan Formell Y Los Van Van Vol. Ⅲ』は『1974』としてタイトルされています。
 
 この『1974』はロック・ファンならば、一度は聴いてほしい傑作です。ラテンに持っている明るくテキトーというイメージは覆ります。
 
 CDの最後に収録されている『キューバ人の勇気とプライドは永遠だ』はアルバムの締めとして最高なのですが、CDのみのボーナストラックだと後に知り、愕然としました。
 
 アメリカ人がずっとキャピトル編集盤でビートルズ『ラバーソウル』『リヴォルヴァー』を聴いていたのが、フォーマット統一で初めてイギリス盤に接する感覚です。
 
 村上龍キューバ音楽を日本に広めることにも貢献していて、ロス・ヴァン・ヴァン以外にもエネ・ヘ・ラ・バンダを猛プッシュしていた時期があり、数年後に監督した『KYOKO』でもサントラに使用しています。
 

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 もうひとつ、レコードで聴くのが難しい理由があります。それは海外盤、とりわけ中南米各国ではレコードは信じられないくらい雑に扱われていて、盤に傷があるのは当たり前、ジャケがボロボロなのは当たり前、落書きなんか当たり前、針飛びしなかったら上等なのです。
 
 以前、ボブ・マーリーのベスト盤『レジェンド』の本家本元ジャマイカ盤を見つけ、喜んで買ってきましたが、キズだらけでカビだらけ、落書きまみれでジャケも信じられないくらいボロボロでした。
 
 よって事情はキューバも一緒です。イギリス盤を選ぶのが無難でしょうが、そもそも需要がなく、出物もない。
 
  理由の最後は武漢ウイルスのせいで日本よりも深刻な状態に陥っている中南米からの物資の往来が途絶えていて、交易がままならないということです。
 
 
 これだけ世界中に害毒を撒き散らしておきながら、なんら謝罪も賠償もすることなく、更にはウイグル族を虐殺し、台湾やフィリピン、インドやわが国に戦いをふっかけてくる共産中国はナチスの21世紀版であり、打倒しなければならない。
 
 
 これら様々な要因が重なっているため、なかなか難しいのは分かります。アナログに思い入れがなければ、CDでも十分でしょうが、いつか『Ⅲ』を手に入れたい。
 

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 映画の音楽では天野小夜子がとまどう二階堂ミホの目の前で覚醒剤をキメて、電動コケシをマイクに見立てて歌う『恋のバカンス』は秀逸です。
 
 内容的には首をかしげる描写が多々あるでしょうし、風俗で働く人々やそれを消費して、彼女らをモノとしてしか扱おうとしない変態富裕層の姿は吐き気を催します。
 
 それでも都会のビルをバックに女の姿を舐めるように写しだすカメラの視点や拘束されて目隠しされて、覚せい剤を無理やり注入される風俗嬢の様子は退廃的ではあるが、現在の視点で見ると完全にNGでしょう。
 
 個人的にはそれらの映像のインパクトが大きく、ジャケットや宣伝でも頻繁に使われていた印象があります。村上作品では『限りなく透明に近いブルー』以外は当時からだいたい抵抗なく受け入れてきました。

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総合評価 69点

 

トパーズ~TOKYO DECADENCE“TOPAZ”~ [DVD]

トパーズ~TOKYO DECADENCE“TOPAZ”~ [DVD]

  • 発売日: 1999/10/29
  • メディア: DVD
 

 

 

トパーズ (村上龍電子本製作所)

トパーズ (村上龍電子本製作所)

 

 

 

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 (幻冬舎文庫)

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 (幻冬舎文庫)

  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 1997/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

 

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)なんだかんだで楽しませてくれました。

 なんだかマスコミは昨夜辺りから、新しいキラーワードとして“まん防”と騒いでいますが、なんともワードセンスが低く、「“マンボウ”って魚かよ!」とか、「浜辺美波で話題になった“あ~、う~ マンボ!”かよ!」と突っ込んで笑ってしまい、イマイチ緊迫感はない。
 
 緊張感がまるでない一部の市民はお花見だとか、自粛疲れだとかバカみたいな甘いことを言いながら、二週間後に変異種に罹って、後悔するのだろうか。そもそもこれまでが自由過ぎただけですから、自制しましょう。
 
 ようやく下半期決算業務も終わり、3月から公開されている『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をやっと観に来ることが出来ました。
 
 偶然ですが、今回観に来ているのは前回、実に9年前に『新エヴァンゲリオン劇場版 Q』を観たのと同じ映画館です。いやあ、9年前か!
 
 9年間の間には色々なことがありましたが、新劇場版が始まってからでも十数年前が経ち、ようやく完結編まで漕ぎ着けてくれたのは嬉しい。
 

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 どういう結末が訪れてもそれを受け入れよう。いつまでもグチャグチャ文句を垂れるクレーマーにはなるまいと心に決めて、スクリーンに臨んでいます。
 
 最初にテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』26話の有名なラストシーンを深夜放送で見て、「おめでとうって、いったい?」とイスからひっくり返りそうになってからでも20年以上の年月が経っています。
 
 ここからはネタバレがありますので、観に行く予定のある方はせっかくなので、できるだけ情報を入れずに楽しんでください。ぼくも今日まで興行収入のニュース以外はまったく情報を入れずに観に行きました。
 
 タイトルは『シン・エヴァンゲリオン劇場版※』となります。※のところはⅣではなく、音楽のリピート記号が入りますので、暗示するのは繰り返し。ちょっと嫌な予感もあります。
 
 さて大河ドラマのような劇場版4作目であり、最終話となる今作品をさきほど見終わって、最初の印象を起承転結で言います。
 
 マリちゃん大暴れの「起」、物語の大半を占めるシンジくんが半年くらいもウジウジ&引きこもりに明け暮れて、体感2時間以上に感じる「承」。
 

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 かつてのセカンドが発生した南極でのNERVとの最終決戦に入る「転」、そして碇家の人々が夫婦関係と親子関係の清算に入り、すべてのエヴァンゲリオンとチルドレンたちとの救済の対話を始める「結」があります。
 
 解決後に少し大人びたというか、大人になった(呪いが解けた?)シンジくんがまさかのマリちゃんと恋人未満っぽい関係になっていることにホッとします。アスカはかつての旧友ケンスケとの生活を選ぶようです。トウジは委員長と子供まで作っています。
 
 大人たちの勝手な都合で戦場に立たされたシンジくんにもようやく平穏な日々が訪れたようです。この描写の後にまさかの実写シーンが入ったり、前作ではアスカに手を引っ張られながら、子供のように連れて行かれていたシンジがなんとマリちゃんの手を引っ張っていく成長に驚かされました。
 
 長年エヴァンゲリオンを追いかけ続けてきたマニア全員を納得させることは不可能であるのはやる前から分かっていることで、製作サイドは腹を括って、自分たちが納得できた結果がこれだったのでしょう。
 
 一回見ただけですべてを理解するのは不可能でしょうし、いずれBlu-rayが発売される時には予約し、何度も繰り返して楽しみたい。いつか見たようなシーン(『Air/まごころを、君に』、アニメシリーズ第26話)ややりとりや異空間があちこちに出現するのでこれが今誰が話している世界なんだろうとかややこしい。
 
 マリちゃんがゲンドウや冬月と話していたりするカット、カジさんがカヲルくんに「司令」と呼ぶカットがあったりとなかなかまた伏線を撒いているようにも思える場面がちょこちょこあったりするのでファンとしてはどういうことだったのかとかも楽しめます。
 

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 なんだかんだ言いながら、20年以上の長きに渡り、楽しませてくれたことに感謝したい。まだかな、まだかなと新作を待ちわびる日々がもっとも楽しく、それを楽しめるのがエヴァなのです。
 
 さらば、全てのエヴァンゲリオン
 
 言い得て妙なコピーです。
 
 自分自身のエヴァへの思いであり、マニアたちへの挨拶だったのかもしれない。
 
 もうごちゃごちゃ言わないでね!という願望かもしれません。
 
 総合評価 80点
 
 

『東宝特撮未使用フィルム大全集』(1986)DVDは21000円!

 今週始めは朝の八時前に近所のB-SELSさん(奈良駅近くにあるビートルズレコード専門店)で購入したイギリス・パーロフォンのモノラル盤『リヴォルヴァー』のオープニングを飾る『タックスマン』を聴いてから、奈良駅方面にあるお役所に向かいました。
 
 そうです。今週から税務署で確定申告の受付が始まりましたので、早速休みが取れたこともあり、今年は確定申告開始の初日に書類を提出しに出かけたのでした。
 
 午前8:30くらいでしたが、すでに確定申告会場には相談の列に50人、提出の列には20人ほどがソーシャル・ディスタンスを取らされ、寒空に並んでいました。
 
 僕は昨夜にPCで書類作成を済ませていましたので、提出の列に加わりました。最近どこでも行われている消毒と検温がありましたが、寒空にいたため、ほとんどの人の体温は33度と表示され、「死んでますねwww」とお互いに笑いながら、自分の番まで待っていました。
 

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 こちらに並んでいるのはある程度、普通にPC操作が出来て、書類作成が既に完了している人たちなので、スムーズに列は捌けていき、15分程で係の人に呼ばれて自分の番となり、すぐに手際良くタックスマンによるチェックが進み、「寒い中、お疲れ様でした。」の言葉をいただき、会場を後にしました。
 
 出ていく頃には相談の方は80人、提出の列にも60人ほどが並んでいました。ぼくもあと二十分遅かったら、かなり待ち時間があったのかもしれません。
 
 確定申告を初日に行うのは初めてでしたが、武漢ウイルスへの警戒もあり、少なめだったのかもしれません。今回の確定申告では医療費控除、ふるさと納税、外国株式の配当控除などの手続きを行いましたので、数万円ほどの還付金が返ってくることになります。
 
 ネット上で全て完結させることも可能ではありますが、年一回のイベントとして、毎年直接出向いています。午前中に確定申告も終わり、自宅でゆっくりレコードを聴いた後、ついさっき手前を通過したレコード専門店に入り、パーロフォンの『ヘルプ!』『ア・ハード・デイズ・ナイト』『ジョンとヨーコのバラード』を購入してきました。
 

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 『ジョンとヨーコのバラード』はステレオテイクですが、45回転で流れるロックは33回転よりもパワーがあり、その他はモノラルですのでかなり迫力があり、現役時代のビートルズの音源を極東の日本で半世紀の時を越えて聴くのは楽しい。
 
 さて家に戻ってから聴いたのは1986年に発売された今回記事にした『東宝特撮未使用フィルム大全集』のサントラ盤の位置づけをされているレコード、『オスティナート』でした。
 
 これは劇中で使用されたオリジナル音源ではないもののこの新録に際しては伊福部昭を監修に招聘し、録音時には立ち会って、直接のアドバイスを得て製作されています。
 
 収録曲は『ゴジラ』のメイン・タイトル、『怪獣大戦争マーチ』『怪獣総進撃マーチ』『ゴジラの恐怖』などタイトルを知らなくとも、誰しも聞いたことがある曲が次々と出てきます。
 

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 このアルバムの存在を知ったのは大学生の頃で『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSキングギドラ』を一緒に観に行った特撮仲間から「ゴジラ音楽を大まかに抑えるなら、"おすてぃなーと"が良いよ!」と聞かされたときでした。
 
 "おすてぃなーと"?なんか"ぞうぶつがほざい"くらい聞いたことのないワードでしたが、ぼくはその時ボンヤリと聞いていたので、「おすてぃなーと」を薄っすらと記憶に留めている程度ですぐに忘れ、そのまま数十年が経過しました。
 
 そしてつい最近、久しぶりに見たくなった『東宝特撮未使用フィルム大全集』のDVDを探してみると、なんとDVDボックスの特典映像ディスクとして収録されているのみで21000円とかで売られていました。
 
 さすがにこれは高いのでビデオをAmazonで検索しましたが、これも7000円近く、かくなる上はヤフオクでと思い立ち、探しているとビデオが3000円で出ていましたので落札しました。
 

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 すると目に入ったのが『東宝特撮未使用フィルム大全集』のレコードのオークションでサントラ盤にはあるタイトルが表示されていました。
 
 そのタイトルこそがかつて旧友から聞かされていた『オスティナート』だったのです。反射的にこちらも落札しましたが、出品自体がかなり少なく、二枚しか出ていないうちの一枚でした。
 
 到着後、すぐに聴いてみるとほとんど聴かれた形跡がなく、キレイな状態で発売後、35年を経て、わが家のターンテーブルに載り、気持ち良く伊福部昭ワールドを再生しています。すでに6回ほど通して聴いてます。
 
 オリジナルの古い音源の良さは別格ではありますが、機材が揃い、しっかりと再演されたサントラ収録曲は解釈が新鮮で、これはこれで心地よく聴けました。CDはレコード盤よりも収録曲が多いので、興味のある方は探してみてください。
 

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 本筋に入りますと今回久しぶりに見た『東宝特撮未使用フィルム大全集』は出来が悪いわけではないが、本編の流れに合わずに惜しくもカットされたシーン、撮影現場の様子、田中友幸本田猪四郎の黄金コンビや中野昭慶らスタッフのインタビュー、文字通りのNGシーンなどのフッテージを60分に詰め込んだファンにとっては貴重な映像がてんこ盛りです。
 
 前半は戦争物映画での特撮の貢献が理解でき、後半は待ってましたのゴジラシリーズ特撮の様子が語られて行きます。
 
 東宝の所有する広大な敷地内に作られた巨大なプールに表現された海のセットに注ぎ込まれた数トン以上の寒天を見ると、作り込みへの熱意に驚かされます。
 
 今なら手軽にコンピュータでチョイチョイな所を人力とアイデアで形にして行く過程を覗き込めて楽しくなります。
 

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 書籍などで知ってはいても、実際の様子を映像で確認出来るのがこのビデオの最大の売りでしょう。『怪獣総進撃』で惜しくも日の目を見ることなく消されてしまった、幻の『ゴジラ対マンダ』のシングルマッチはプロレス的に言うと、地方会場のメインイベント程度でしょうが、ギリギリまでは本編に盛り込まれるところまでは仕上げられていたのだなあという感慨に浸れます。
 
 『三大怪獣 地球最大の決戦』でのキングギドラによる都市破壊シークエンスのOKテイクとNGテイクの微妙な差をナレーター水野久美(!)が見る者に問いかけてきます。
 
 『マタンゴ』『怪獣大戦争』のヒロインが作品ナレーターなのでそちらもワクワクします。『ウルトラセブン』のブルーレイとかで解説音声を菱見ゆり子にやってもらう感じです。
 

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 残念ながら、今回は変身人間シリーズに着いての言及や映像がなかったのですが、多くの作品をカバーしています。笑えたのは『キングコング対ゴジラ』でのゴジラによる熱海城破壊シーンで、堀に躓いて城に倒れ掛かり、城壁をグチャグチャにするはずが、城のセットがかなり頑丈なためにゴジラ(中のスーツアクターさん)が壊せずに、「どうなってるんだ?」とスーツの中で悲嘆に暮れるという一連の映像です。
 
 その他ではドゴラの不思議な動きの作り方、自衛隊(防衛軍?)の戦闘車両のラジコンが動作不良で止まってしまい、後続車が玉突き事故のようにストップする様子は可笑しいのだが、なぜか哀愁を誘います。
 
 主な収録作品は以下の通りです。『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』『日本海大海戦』『連合艦隊司令官 山本五十六』『連合艦隊』『日本沈没』。
 
 『モスラ対ゴジラ』『三大怪獣 地球最大の決戦』『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』『さよならジュピター』『地球防衛軍』『宇宙大戦争』『ゴジラ1984)』『妖星ゴラス』。
 
 『宇宙大怪獣ドゴラ』『海底軍艦』『フランケンシュタイン対地底怪獣』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』などなど懐かしのタイトルがいっぱいですので、見終わったあとはまた見たくなります。
 
総合評価 70点
 

 

ゴジラ DVDコレクションII(7枚組)

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  • 発売日: 2008/02/22
  • メディア: DVD
 

 

 

ゴジラ ムービーモンスターシリーズ キングギドラ2019

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  • 発売日: 2019/04/06
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

『ビートルズと映画スター』テレビがなかった頃、映画は最先端娯楽!

 ビートルズがイギリスで出したアルバムの中ではおそらくもっとも地味な一枚を選ぶと、それは『ア・ハード・デイズ・ナイト』と『ヘルプ!』という2枚の主演映画のサントラ盤に挟まれた『ビートルズ・フォー・セール』だろう。
 
 個人的にはもっとも好きなアルバムは『ア・ハード・デイズ・ナイト』だが、『ビートルズ・フォー・セール』も疲れたときによくターンテーブルに載る1枚です。
 

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 アルバム・ジャケットと同じく、ザラザラしたサウンドが好みでやっつけ仕事で無理くりクリスマス・シーズンに間に合わせたとは思えない程に落ち着いた雰囲気が全編に漂っています。
 
 単純に過密日程のために新曲を捻り出す時間的余裕がないためにすぐに録音できるものを探すとこれらしかなかったのであろう。BBCのラジオショーでもしょっちゅう取り上げていたお気に入りのカバーを使えば何とかなるという消去法の選択肢だったのであろう。
 

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 結果として、ハンブルグ時代に飽きるほど演奏していたであろう『ロック・アンド・ロール・ミュージック』『ミスター・ムーンライト』『カンサス・シティ』『ハニー・ドント』『ワーズ・オブ・ラヴ』『みんないい娘』をさらっと収録しています。
 
 この内の2曲を落として、A面トップに『アイ・フィール・ファイン』、B面トップに『シーズ・ア・ウーマン』を持ってきていれば、アルバムとしての魅力はぐんと増したのではないだろうか。
 

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 そんなことを考えながら、つい先日、B-SELSさんで購入したイギリスのパーロフォンのモノ・シングル盤『アイ・フィール・ファイン/シーズ・ア・ウーマン』を聴いてから、赤盤『ビートルズ・フォー・セール』を続けて二回ほど掛けていました。
 
 そのときにふと、「そう言えば、内ジャケットにある二枚の写真はいつのものだろう?」と気になりだしました。
 
 一枚の演奏シーンを捉えたものはワシントンDCでのひとコマ、もう1枚はトゥイッケナム・スタジオでのスナップだと言うのは知っていますが、スタジオ壁面の映画宣伝と思われるコラージュに写っている俳優や女優は誰なのだろうと気になりだしたのです。
 

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 それぞれ見たことがある顔もありますが、それが映画で見たから覚えているのか、40年以上前からこの内ジャケットを見てきて、それが刷り込まれているだけなのかが不明になってきたのです。
 
 普通に判別できるのはジェーン・マンスフィールド(『女はそれを我慢できない』)、ヴィクター・マチュア(『聖衣』)、イアン・カーマイケルくらいで印象的なサイレント時代の女優みたいな人も誰なのか分からない。
 

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  ずっと見てきたのに何故か『サージェント・ペパーズ』のように各々が誰かまで気にならなかったのは何故だろう。またサージェント・ペパーズではCDのライナーにも何番がどの顔とか解説されていたが、"フォー・セール"には一切記載がない。
 
 ちなみにサージェントにはメイ・ウェスト、シャーリー・テンプル、ダイアナ・ドーズ、マーロン・ブランドマリリン・モンロータイロン・パワートニー・カーチス、ジョニー・ワイズミュラーフレッド・アステア、そしてマレーネ・ディートリッヒなど錚々たる顔ぶれがそろっています。
 
 また本人が出演しているわけではありませんが、映画ファンには『アラビアのロレンス』で有名なトーマス・エドワード・ローレンスも写っています。ついでにガンジーもいましたが、政治的忖度で削除されています。
 
 海外でも事情は同じようで、英語記事を検索してみても山賊風なのは誰とか、サイレント映画の女優さんっぽい女の人は誰などの記載は見つけられませんでした。なんか、ずっと引っかかっています。コメディアンはローレル&ハーディ?
 

 

ビートルズ・フォー・セール

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女はそれを我慢できない [DVD]

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  • 発売日: 2010/08/04
  • メディア: DVD
 

 

 

聖衣(字幕版)

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  • 発売日: 2020/05/30
  • メディア: Prime Video
 

 

 

砂塵(字幕版)

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  • メディア: Prime Video
 

 

『マッカートニーⅢ』(2020)聖ポールから届いたクリスマス・プレゼント

 久しぶりに記事を書いておりますが、映画ではなく音楽になってしまいました。ウイルス感染が収まりかけたように見えた矢先、さらなる感染者が爆発的に増えてきてしまい、春はまだまだ遠そうです。

 僕自身の関心も今は散発で公開される映画よりもレコードを聴くことに向けられていて、ビートルズ&各メンバーソロやレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、マディ・ウォータース、浅川マキ、RCサクセションYMOなどのアルバムを聴いたり、昔聴いたシングル盤を掛けまくる日々が続いております。

 今年購入した高額レコードとしてはスターリンの『trash』の復刻版レコード、それの数倍するのが自宅からチャリで通えるほど近い、ビートルズのアナログレコード専門店のB-SELSさんで購入したビートルズ中期の傑作『リヴォルヴァー』のイギリス・パーロフォンのモノラルでマトリックスがA面はXEX605-2、B面はXEX606-1で刻印されている希少盤です。

 

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 料亭でおなか一杯食べれるくらいの価格でしたが、蟷螂の斧さんが親交をお持ちの森山直明さんが『レコードコレクターズ増刊』で発表されたことで人気が爆発して以来、長年探し続けた一品でしたので、最終的に迷いはございませんでした。

 有名なのはB面ラストを飾る『Tomorrow Never Knows』のサウンドエフェクトが聴けばすぐに分かるほどに違っていることです。商品自体はちょこちょこ入荷されていましたが、納得のいく一枚を求めるために入荷の度に視聴させていただき、半年くらいかけて選び抜きました。

 こちらのお店には2年くらい通っていて、月一回程度は顔を出すようにしています。レコードはオーナーの方(お名前はお互い知っていますし、お電話番号も知っていますが、当然書きませんwww)の経験と知識から厳選していただき、なんやかんやで赤盤すべて、キャピトルの大半、パーロフォンのシングル盤などを購入させていただいております。

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 本日も立ち寄らせていただきましたが、何気なく『恋を抱きしめよう/デイ・トリッパー』が気になり、オデオンシングル、アップル黒盤、パーロフォン初盤などを聴き比べていきました。

 聴いた印象はオデオン盤はモノラルなので、聴き慣れたステレオテイクとは違い、独特の力強さがあり、しかも日本盤特有の繊細さを持ち合わせていました。続いてアップル、パーロフォンと聴いていきましたが、個人的な好みはパーロフォン盤の音圧の高さと疾走感でした。

 45回転でモノラルというのはこれまで聴いてきたのと明らかに印象が変わります。1960年代当時の現役のビートルマニアが熱狂的に聴いてきた盤が大西洋を渡り(『アトランティック・クロッシング』ですね!)、極東の地で今でも迫力があるサウンドを聴かせてくれています。

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 そんなこんなでビートルズの話になってしまいましたが、今回の目的はつい先日リリースされた、聖パオロではなく、ポール・マッカートニーの新譜『マッカートニーⅢ』の感想を話すことでした。

 ポールの新譜をアナログで聴くという体験は『ヤア!ブロードストリート』以来だから35年ぶり?かなあと思いつつ、3回ほどアルバムを自宅のターンテーブルに載せてから、自分なりの感想もありましたのでチャリを転がしながらお店に着きました。

 するとオーナーがたまたま『マッカートニーⅢ』を掛けるタイミングだったので、そのまま一緒に聴くことになりました。今回のタイトルはずばり『マッカートニーⅢ』。このタイトルを付けられるということはポールの個人的なというか、内省的な内容になるだろうことは容易に推察できます。

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 最初の『マッカートニー』はビートルズ崩壊前後に製作されましたが、当時はあまり高評価を受けたという批評を見たことも無く、どちらかというと"否"の意見が多かったようです。ぼくはこのアルバムが好きです。

 地味ですが、ポールが奏でるギターの音色はとても豊かで、『ジャンク』『テディ・ボーイ』などの佳曲もあり、シンプルなのにスカスカと感じません。内ジャケも家族写真のピンナップを無造作に配置したようなデザインで派手さは全くない素のポールを感じます。ウイングス解散後の1980年に出した『マッカートニーⅡ』も前作同様にデモテープをそのままリリースしたような実験作の味わいがあります。

 ウィングス結成時にリリースした『ワイルド・ライフ』も好きなアルバムの一つです。もちろん大向こう受けする『ラム』『バンド・オン・ザ・ラン』なども完成度に驚かされますし、もっとも成功したビートルらしく、才能は圧倒的です。でも個人的なスタイルを持つ作品群の方がじつは好みです。そして今回の『マッカートニーⅢ』。

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 "マッカートニー"シリーズを冠されたからには今回のアルバムの狙いも大向こう受けではなくて、個人的な興味が赴くままに自宅で録音し、それらをスケッチのようにリリースするスタイルになるのは古くからのファンには理解出来るでしょう。

 予約していたアナログ盤が無事に届き、レコード針を落とすとシンプルだが、表情豊かで綺麗な音色のギターやピアノが部屋に広がってきました。A面は『ロング・テイルド・ウィンター・バード』『ファインド・マイ・ウェイ』『プリティ・ボーイズ』『ウィメン・アンド・ワイヴズ』『ラヴァトリー・リル』『スライディン』。

 B面が『ディープ・ディープ・フィーリング』『ザ・キス・オブ・ヴィーナス』『スィーズ・ザ・デイ』『ディープ・ダウン』『ウィンター・バード / ホエン・ウィンター・カムズ』となっており、収録時間に制限があるレコードとCDでは曲順が違っています。

 へヴィーな『ラヴァトリー・リル』、落ち込んでいる世界中の人達に向けたような『ウィメン・アンド・ワイヴズ』、ホワイトアルバムに入っていても違和感がない『ウィンター・バード / ホエン・ウィンター・カムズ』などはポールらしいですし、さきほど書いた通り、シンプルだけど音色が豊かなギターやピアノの拡がりにホッとします。

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 色々と文句を言う人もいるでしょうが、ポールは80歳に近づいており、新譜を届けてくれるだけで十分に嬉しい。あと何枚新作を楽しめるかなあと思う心があれば、彼の声や歌い方がどうのこうのとか、輝きが失われているとか平気で批判するレビューを見ると「神様になんて罰当たりなんだ!」という気持ちが強くなります。

 

 欧米の彼らとともに過ごしてきたであろう1960年代からのビートルマニアたちは武漢ウイルスのせいで、このポールの新譜を聴くことなく命を落とした人も多いでしょう。聴けるだけでも幸せなのだと実感しています。

 今自分に出来ることを各々がやっていくことが明日に繋がっていくというメッセージを受け取り、おそらく2019年以前には戻れない2021年以降に対応していきましょう。個人的にはおかげさまで普段の年よりも多忙を極める一年ではありましたが、明日は我が身なので気を引き締めて仕事に臨みたい。

 では皆さま、良いお年を!

 

 

 

 

ポール・マッカートニー(紙ジャケット仕様)
 

 

 

マッカートニーII(紙ジャケット仕様)

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