良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)エメリッヒらしいスケールが大きい(だけの)映画。

 ローランド・エメリッヒ監督作品というと、『インディペンデンス・デイ』『ゴジラ』やこの『デイ・アフター・トゥモロウ』などCGをふんだんに盛り込んだ(だけ?)スケールの大きな、そして宣伝がド派手な作品の監督を任されているものが印象に残る。

 これらの作品で、彼はいったい何を描いていたのかといえば、「宇宙人から(アメリカ人が中心になって)地球を取り返せ!」「アメリカ人は偉大だ!」「希望を捨てるな!明日は晴れるさ!」的な単純明快で考える必要のないことばかりである。

 一般アメリカ人はこんなのを観て、心の底から喜んでいるのだろうか。大スクリーンでこのスケールの大きな特撮シーンを観れば、そこそこ楽しめるのは保障されてはいるが、それ以外には全く見所のないスカスカの作品である。ポップコーンをボリボリ食べながら観ていても、だれにも迷惑が掛からない映画と言える。

 観終わった後に余韻を引くことはまずはないであろう。2時間の暇つぶしにはなる。楽しいが中身がないという典型的なハリウッド作品かもしれません。

 特撮だけに頼った、ドラマ部分に深みのない肩の凝らない映画ばかりを観続けている(供給され続ける)と、映画ファンとしての質は徐々に下がっていってしまうのを危惧します。ある程度は当たるかもしれませんが、あまりこのような作品を観たいとは思わない。

 昔からのアメリカの映画ファン達は今のようなハリウッド映画をどう思っているのだろう。アメリカ映画は今でも全世界の観客を魅了しているのであろうか。そうは思えない。

 たださすがはハリウッドだと思わせるのは大スクリーン上映には持って来いの作品をきっちりと仕上げてくるところです。最初から物語などは二の次で、「お前ら、とにかく迫力ある破壊っぷりを観ろよな!」とでも言わんばかりの豪快な氷河期映像の数々には苦笑するとともに、やりきる姿勢には感心する。

 メキシコに逃げようとして足止めされるというブラック・ジョークも秀逸でした。危機が去った後、バーで英国人が「マンチェスター・ユナイテッドに」と言って乾杯する様子は思わずニヤリとします。日本の場面の映像は違和感が凄かった。

 勿体無いのはこれだけの優れたCGを盛り込みながらも、作品の印象がそれだけということです。ストーリー構成をより現実味を持ったものにすれば、そして逃げ惑う登場人物たちをより観客に近づけた、いわば身近な環境にいる人々にすれば、より作品中に引き込まれていったかもしれません。せっかくお金を沢山かけるのですから、何十年経っても観れる映画にして欲しい。

 考えないで、ただ大きな迫力の映像に身を任せれば、それで良いという映画もあるということなのでしょう。しょっちゅうこんなのばかりを観ていると、映画への感覚が麻痺しそうですが、たまに何も考えずに観るには良いかもしれない。大きな映画は大スクリーンが一番という締めにしておきます。

総合評価 56点

デイ・アフター・トゥモロー [ベストヒット50]