良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『長髪大怪獣ゲハラ』(2009)NHKの番組企画で実現した、奇跡のおばか特撮映画!これは踏み絵だ!

 テリー伊藤が総合司会を務める、NHKの深夜番組『テレ遊び パフォー!』のなかで、マニアックな視点と趣味を持ち、さまざまなジャンルの著書で知られる、みうらじゅんが音頭を取って出来た企画に、オリジナルの怪獣映画を作るというものがありました。  その企画がトントン拍子に進み、いつのまにか本当に特撮映画を一本制作することになってしまい、出来たのがこの『長髪大怪獣ゲハラ』です。完成後には夕張ファンタスティック映画祭でも上映されました。また今回、この特撮映画に参加した田口清隆監督はとても才能のある監督です。
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 彼はこの『長髪大怪獣ゲハラ』だけではなく、圧倒的な完成度を誇る自身の自主制作特撮映画『G』を同じく夕張ファンタスティック映画祭に出品しています。『G』は50分弱の作品で、特撮へのこだわりも存分に出ていて、『ゴジラビオランテ』での権藤一佐(峰岸徹)のシーンへのオマージュもあり、ゴジラ・ファンを喜ばせてくれます。  あまり名を知られている監督ではありませんが、十分な予算をつけて、放送コードなどの規制を外し、やりたいように撮影させれば、かなりの確率で、歴史に残る特撮映画を撮る可能性がありますので、知らなかった方はぜひとも覚えておいて欲しい逸材です。
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 その他スタッフには樋口真嗣が控えており、彼は今回は監修的な立場にいたようです。大掛かりな特撮やその他のスタッフ集めには彼の知名度や力量が必要だったのかもしれません。彼が監督の人選をしていたとしたら、さすがに人の才能を見抜く目があるのだと思いました。  出演者には佐野史郎藤井美菜、大沢健、渡邊裕之、テリー伊藤森下悠里らが顔を揃えていました。15分の短編を制作するために揃った点を考慮すれば、かなり豪華なラインナップといえるのかもしれません。  そして今回の映画で、もっとも雰囲気とステイタスを向上させる要因となったのが、伊福部昭音楽の全面使用です。特撮には誰がなんといっても彼の音楽が必要で、彼の独特の音楽が入るだけで、作品の品格は上昇します。また、観る側のテンションはパブロフの犬のようにグングン上がり、期待感が湧いてくるのです。
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 内容的には特撮では鉄板とも言える設定が目白押しで、これを認めるか認めないかで特撮映画への愛情を計ることが出来るのかもしれません。海から出現し、漁船を襲い、地元では信仰対象となっており、観光旅行(今回は加賀100万石の金沢城)を欠かさず、都市を破壊し、科学者による秘密兵器によって倒される。  もちろんこの映画は番組の企画物ということで、急いで形にされましたので、あちこちに大穴や小穴が開いています。なんといっても全身を剛毛で覆われているゲハラの毛をどけて、攻撃しやすくするように制作された、防衛軍の秘密兵器は超巨大扇風機でした。しかも作動ボタンは「切」「弱」「中」そして「強」の4つだけという徹底振りでした。
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 思わず、席からずり落ちそうになるでしょうが、特撮ファンならば、ガメラの甲羅ひっくり返し作戦やガメラホイホイ作戦に狂喜したファンならば、失笑以上に愛情を感じることが出来るはずなのです。どれだけミニラやジェット・ジャガーが大嫌いでも、決してファンを止められない。弱くても、ダサくても、付いて行く。まるで阪神ファンみたい。自虐的になっていて、それでもトイザラスへ行くと、ソフビ人形を思わず眺めてしまう。でも止められない。  このように特撮ファンのなかでは、愛情とはいっても、無条件なものではなく、自虐的な笑いも根底にあり、愛情との絶妙なバランスの上に立っています。笑えて、楽しく、しかもマニアックな兵器や空想科学考証がないと駄々をこねる。それが正しい特撮ファンなのだ。
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 ここ最近はガメラも続編が作られませんし、ゴジラは引退してしまいましたので、特撮ファンとしては寂しい限りではあります。ニーズが無いといってしまえば、それまでではありますが、本当にそうでしょうか。『ALWAYS 三丁目の夕日 2』では冒頭にゴジラが出てくるシーンがあり、特撮ファンであるぼくはニヤニヤしながら観ていましたが、逆に寂しさもありました。  何年もそういう気持ちが続いているときに観たのがこの『長髪大怪獣ゲハラ』だったのです。突っ込みどころは確かに満載です。しかし不満点を言っても始まりません。とりあえずはここから盛り上げて、新たな特撮映画への追い風になって欲しい。
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 物語の内容はこれまでの特撮モノへのオマージュがほとんどで、とくに見るべきものはありません。しかしコンパクトに纏めた手腕は素晴らしく、きちんと作り込みは図られている。樋口真嗣と田口清隆監督による特撮シーンは迫力があり、最近の円谷モノにはない暗さも同居していて、昭和特撮ファンを大いに楽しませてくれました。  最後に次回?の予告シーンがあるのですが、これがまたぶっ飛んでいて、『怪獣大戦争』のパロディで観客を大いに笑わせ、しかも主人公の妹役だった藤井美菜がどうやらウルトラ・ウーマンに変身できる出来るようになるようなので、ぜひとも続編の制作にとりかかって欲しい。悪ノリするのならば、徹底的に最後まで突っ走って欲しい。 総合評価 65点
◆20%OFF◆ 特撮ヒーローズ 東宝怪獣総進撃
ザッキャラ
特撮ヒーローを2頭身にディホルメしたミニチュアフィギュアシリーズの第8弾。第8弾はゴジラを始めとした

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