良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ファントム・クリープス/ゾルカ博士の野望』(1)(1939)忘れられない君の名はアイアン・マン!

 『ファントム・クリープス/ゾルカ博士の野望』と言われても、ピンと来る方は少数派でしょうが、SF映画好きであれば、おそらくはスチール写真でアイアン・マンの強烈なヴィジュアル・インパクトに驚かれ、動くところを見てみたいと思ったに違いない。  ベラ・ルゴシと並んでも、その大きさは分かります。また、なんだか2m50㎝くらいの中途半端な身長と目玉がギョロッとしていて、サブちゃんをも凌駕するような、あり得ないほどの鼻の穴の大きさを見れば、いっぺんにこのアイアン・マンに魅了されるでしょう。
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 製作年度は1939年で、第二次大戦に入っていく不穏な時期であり、軍隊やスパイが科学兵器の秘密情報を血眼になって求める様子が描かれます。  またこの作品の延べ上映時間は240分間であり、知らない方がその上映時間を聞けば、さぞかし大金が掛かった大作なのかと思われるかもしれない。
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 しかしこれは連続活劇12エピソードの合計時間であり、各エピソードは20分間にまとめられています。連続活劇はシリアルと呼ばれ、テレビ放送での連続ドラマのような役割を映画が担っていた頃の形態です。  地元の映画館で毎週週代わりで、新作映画や過去の人気作品を流す前のウォーミングアップとして各エピソードをひとつずつスクリーンに掛けていくスタイルです。たまにディズニー映画やピクサー作品を観に行くと、本編映画を流す前に短編を掛けているあのイメージで、それが映画館に行く度に連続ドラマのように毎週楽しめるということです。
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 今回購入した『ファントム・クリープス』もそんなシリアルのひとつであり、せっかくこの形態を楽しむのであれば、毎週あえて1エピソードずつを見ていく方が当時の観客と同じようなワクワク感が味わえそうなので、自宅でDVDを見る前に1エピソードずつを見ています。 第一話 『恐るべき力』
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 ベラ・ルゴシはいつもどおりに悪役で、狂気の科学者ゾルカ博士を演じています。なんだかノリは仮面ライダー死神博士みたいです。そしてお待ちかねのアイアン・マンがすぐに登場します。もうちょっと勿体ぶって登場させても良かったとは思いますが、早めに出しておかないと途中で打ち切りになる可能性があるので、しかたなく出演させたのでしょう。  さて、肝心のアイアン・マンですが、見た目のインパクトは凄まじい破壊力なのでどういう動き方をするのだろうかとワクワクしながら見ていましたが、思わず「あれっ!?えーと…」となってしまう。ほとんど活躍することもなく、ただの荷物運びになっていました。
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 おそらく、でかすぎる頭部の重量と造形、さらには高身長が原因と思われますが、動きがあまりにもスローモーで、操演にたいへん苦労しているのがはっきりと解ります。  強烈な印象を与えるのにその後はまったく起用されなかったのは引退前の巨漢レスラーのような緩慢な動きのせいなのかもしれません。しかし、特撮ファンならば、アイアン・マンが動いているだけでも感涙モノであり、赤ん坊がはいはいするのを見ているような暖かい目で鑑賞に望むのが正しい。
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 ここまで書いてきて、物語のオープニングについて何一つ触れていないことに気がつきました。ベラ・ルゴシ(ゾルカ博士)はマッド・サイエンティスト役を嬉々として演じ、彼は磁気を利用した生物兵器爆弾やヴィジュアライザーという透明人間になれる腰に装着するベルト、そしてロボット兵器(ターミネーターの元祖だ!)アイアン・マンを惜しげもなく、第一話から披露してくれます。
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 展開は急で、奥さんを飛行機事故で殺害しかけたり、自分は身代わりを使って死んだことにしてみたりとエキセントリックな行動ばかりをする狂気の科学者らしい態度を終始とり続けて来週に続くという感じでした。  多くの特撮ファンはおそらく主役はアイアン・マンだと思っているでしょうし、僕もその一人でしたが、実際に活躍するのは悪の科学者ゾルカを演じるベラ・ルゴシであり、ファントムというのはヴィジュアライザーで透明人間化する彼のことを表しています。
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 まとめて一つの記事で書くよりも、全12話を少しずつ見ながら、一話ずつアップしていった方が楽しそうなのでぼちぼちと書いていきます。 総合評価 70点(第一話)