良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『アンドリエーシ』(1955)パラジャーノフ初期の冒険譚。後の嗜好はすでに散見できます。

 友人と彼女の家の近くにあるイタリア料理屋さんでランチをしたあとに車で駅まで送ってもらいました。最寄り駅から大阪九条まで行くために中継駅の西大寺で電車を乗り継がねばと思い巡らせていたところ、その駅から難波まで急行が出ていることをはじめて知りました。  炎天下で電車を乗り換えて、じっとホームで待ち続けるのは憂鬱でしたが、その手間と時間が省略できるのは助かります。阪神近鉄が繋がってくれて、本当にありがたい。
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 さて、先週観に行ったパラジャーノフ生誕90周年企画の三作品に続き、本日は『ざくろの色』『アンドリエーシ』『石の上の花』の三本です。  この『アンドリエーシ』はパラジャーノフの遺作となった『アシク・ケリブ』の雛型として位置しているように思えます。『アシク・ケリブ』は魔法の笛を使いこなす少年アンドリエーシの冒険譚を究極に進化させたアルティメット版なのではないか。
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 修行や魔法、宗教色溢れる民族衣装、恋敵との争い、成長する主人公などパラジャーノフらしさがそこかしこに出てきています。  鳥・水・風・樹木・笑いなどアンドリエーシが旅の途中で出会った精霊たちの助けを得て、魔法の笛を強化して、恐い悪魔「黒い嵐」を追い払う。
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 特撮シーンもかなり頑張っていて、嵐で飛ばされる家畜、高原を焼き尽くす業火、樫の木が崩れ落ちるシーンなど迫力があります。巨人との邂逅や預言者との出会い、パラジャーノフが大好きな駿馬のギャロップもしっかり登場しますし、今回はなんと駿馬は空を跳ぶ。  お伽噺なので、現代劇を撮るよりは制約が少なかったでしょう。一時間弱の小品なので無理なく誰でも楽しめる、パラジャーノフらしくない初期作品でした。
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 ただしカラフルで民族衣装を纏ったアンドリエーシが精霊たちの助けを借りて、悪魔を倒すのかと思っていたら、なんと彼は呆気なく負かされてしまい、結局は彼の師匠の羊飼いの英雄が悪魔を石に封じ込めて物語は閉じられる。これは物語としてはかなり弱い。  羊飼いの生活がアルプスの少女ハイジのペーターを思い出すのが笑えてきました。またもともとは鮮やかな色彩を持っていたであろうフィルムはブルーレイ化される際の修復処理を経ても限界があったようで、かなりハレーション気味に褪色してしまっています。
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 もったいない話ですが、作品として現存しているだけでも十分に価値はあります。なお悪魔が宇宙猿人ゴリに見えてしまったのもマイナスだったかもしれない。前半の出来が良かっただけに後半の物語の結末の描き方が悔やまれる。  ただ残念だったのは一人のマナーが最悪のオッサンがいたことです。九条シネ・ヌーヴォの最後列の座席のうしろには障害者の人たちが観やすいようにすぐにどけられるためなのか、パイプ椅子が並んでいます。
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 このおっさんは最後列の座席の部分を自分の荷物で塞ぎ、前に観客が座れないようにしてパイプ椅子に座っていました。ヌーヴォは昔ながらの全席フラットな作りなので、前にでかいオッサンとかが来ると全く見えにくいのが難点ではあります。  上映中もマナーを無視してあちこち席を移動し続け、そのたびにギシギシとパイプ椅子の音を立てていました。
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 映画まで待つ間も、座席ではボリボリとスナックを食べ続け、汚いゲップを連発していました。臭いしうるさいし、せっかくの雰囲気をぶち壊していました。  せっかく貴重なパラジャーノフ特集なのになぜこのような者が闖入してきたのか理解に苦しみます。よその地方から来たのだとすれば、どこだか知らないが、お里が知れる。その地方へ行けば、そういった所業が許されるほど、文化が成熟していない街があるのでしょうね。
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 映画そのものは明るい雰囲気の作品だということもあり、箸休めのような感覚で十分に楽しめる内容でしたので、なんとかこのおっさんを意識しないように過ごせました。 総合評価 70点