良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)カネ・クスリ・女の連打!

 確定申告シーズンということもあり、先週日曜日は税務署が朝からオープンするのをホームページで確認し、早めに申告しに行ってきました。目的は医療費控除です。  受付は9時からでしたが、8時20分ごろに着いたときにはすでに50人以上が寒空のもと不機嫌な顔で並んでいました。ぼくもすぐに不機嫌な人々の仲間入りして、ボーッとしながら『敗者のゲーム』を読んでいました。  年に一回だから別に良いやと思い、パソコン入力をせずに出向いて行ってきましたが、さすがに寒いので次回からはe-tax制度を利用して自宅で済ませるつもりです。  自宅に戻って見たのはこの作品『ウルフ・オブ・ウォールストリート』です。金融業界を描いた作品というと、たとえば『ウォール・ストリート』などは1980年代後半に日本でも大ヒットした『ウォール街』の正式な続編です。今回採り上げるのは長ったらしいが、似たようなタイトルでまったくの別物です。  よりウォール街の狂乱を描いているのはこちらの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のほうですので180分間という長時間上映に耐えられる方はご覧ください。金融業界を描いた映画なのに18禁映画というのも笑えます。  上映時間だけを聞くとどうしても敬遠してしまいそうな三時間という時間もいざ見始めるとあっという間に過ぎていきます。それだけ刺激的な展開が続くからです。ひたすらセックスをして、浴びるように酒を飲み、一日中薬物を乱用し、客を騙して金をまきあげ、国を騙して金を隠匿する。  この作品はいわゆる実録モノであり、モデルも存在します。1964年生まれのユダヤアメリカ人で、現在も活躍中のジョーダン・ベルフォートです。彼は狂乱の人生をこの映画のように歩んだ後は収監され、2年ちょっとで出所してからは公演活動をしています。著作もあるので、興味のある方はお読みください。ぼくは2冊ほど持っています。  この個性的な投資詐欺師ベルフォートを軸に、スコセッシ監督はレオナルド・ディカプリオを主演に起用し、ウォール街に蠢き、一攫千金を狙い、他人を出し抜き、違法行為を犯してもバレなければ(そういった事実はなかったことに過ぎず)、「それはやってない」「知らない」とウソぶく人でなしの世界を描いています。
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 描き方としてはレイ・ラモッタの半生を切り取ったスコセッシ監督の代表作の一つ『レイジング・ブル』を思い出させる。どちらも一時的に成功するものの転落していく人生です。  ただし、政府や多くの一般投資家に大迷惑をかける人でなしではありますが、欲にまみれ、恥にまみれる人間臭さは人一倍感じさせる作品でもあります。ディカプリオの演技に関しては『レヴェナント』よりも迫真の演技でこちらのほうがアカデミーにふさわしいのではと思います。  証券業界の内幕モノというと自分達には関係ない、取っつきにくい別世界の話だと思うでしょう。じっさい仕事の合間や時には仕事の最中に行われるのは乱痴気騒ぎ、薬物乱用、破壊行為、差別行動、セックスを伴う接待などが大半を占める異質な作品です。  つまり、これってロック・スターの自伝とたいして変わりはないのです。一方は証券ビジネスで巨万の富を貪欲に狙い、もう一方は美辞麗句を並べ立て、偽善の仮面をつけてティーン・エイジャーから小遣いをまきあげる。セックス・ドラッグ&ロックンロールの世界観です。  外面はハイクラスだったり、セレブ気取りだが、中身は欲ボケで色ボケのレオナルド・ディカプリオ率いる二流証券会社の面々が延々と薬物で朦朧として大失敗を重ねながらもそこからは抜け出せない弱い部分と顧客には猛烈に襲い掛かる攻撃的セールス手法を活き活きと描いています。  差別描写も徹底的で、小人症の双子を雇い、大きな的を作ってダーツゲームのダーツとして投げつけたり、マクドナルドで働く人々を貧乏人だとこき下ろします。じっさい、アメリカには単純労働のことをマック・ジョブと蔑む言葉もあります。商売女の尻の穴からコカインを吸引したり、証券取引フロアをオージー・パーティ会場にしたりとやりたい放題です。  もちろん四六時中パーティ・ピープルたちの酒池肉林の大乱交は終わることなく続き、狂乱の宴を繰り返す。飛行機内だろうがスチュワーデスにいたずら放題して拘束されたまま連れて行かれたり、ホテルの会場だろうが、どこででも商売女やストリッパーが押し掛けてくる。  それが三時間続くので体力的にパワフルな状態でないと途中でお腹一杯になる作品です。これを見た後では『ウォール街』などは子供だましにしか見えない。
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 大人気だった『ウォール街』の公開から30年近い時を経て、昭和元禄やバブル全盛と言われた我が国の景気と自信は砕け散り、あれから四半世紀が経とうとしている今でも当時の日経平均株価38000円台には遠く及ばず、アベノミクスの恩恵は生活者には届かない。  政府は株式や不動産などへの投資を促進させたいようだが、それならば、株式投資への所得税課税を緩和し、現在の儲けへの課税を一律20%から10%以下にするべきでしょう。  企業に対しても対外競争力をつけるためにどうしても法人税を10%程度下げたいのであれば、そのうちの5%を従業員への給付に当てるようにガイドラインを策定し、これを順守する企業のみに免税するなどの処置を取れば良いのではないか。  特に野党は粗探しばかりして何も政策がないのは国民にバレているのだから、こういった思いきった政策を掲げるべきではないか。  ちなみにGPIFの赤字を批判していた時期の後、十兆円以上も収益が出ていますが、野党もマスコミも口をつぐみ、知らない振りか、気がつかない振りをしている。相変わらず卑怯な奴らです。政権への監視の目は必要でしょうが、功績はしっかりと評価するのが公平でしょう。  そもそも株も債券も、不動産も商品価格も常に変動するのが当たり前であり、プラスが出るときは標準偏差σ1でもプラス15%くらいは出ますし、マイナスでも10%くらいは出ます。  売ってしまえば損は損のまま確定しますが、持ち続けていれば配当も入ってきますのでそういったインカムでしのぎながら、また証券価格が上がるのを待てば良い。  一人一人の人間はどんどん毎年年齢を重ねるが、お金は年を取らないのですから、将来世代のためには外貨資産と国内資産の割合は50%以上でも良いでしょう。
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 円高になると毀損するという考えもありますが、外貨建て資産は円破綻の保険だと思えば、それほどイライラすることではないし、円高時にはむしろ外貨建て資産が安く買えるわけですから、買い増せば良いだけです。  例えば為替の変動で証券評価価格が円建てで三割下がったとして、配当が年率3%入れば、十年分の配当で損失は穴埋めできますし、日本の景気だけでなく、世界の景気は上がっていくでしょうから、世界の株式や債券に分散していれば、いずれ上がってきますので十年もかかりません。  批判で多いのが株式クラスに50%というのは比率が多すぎるのではというものです。人間はどんどん年寄りになっていくが、年金資産は年を取らないのだから、株式クラスが50%というのはそんなに高いとは思わない。  日本債券、つまり国債の比率を下げて株式に向かえば、安定株主が生まれることになります。国家が買い上げてくれるわけですから、日本株式の本当の実力が分からず、指標が意味を失うというマイナス面はありますが、目立たない程度であればそれほど悪いとは思わない。  GPIFには世間の評判や政権の意向(アメリカのために使うなどは言語道断)に取り合わずに我が道を進み、ルール通りの安定運用を貫いて欲しい。そういった視点で見ていると野党連中やマスコミの現実主義を無視したお花畑的で無責任な政策や報道では人は動かなくなります。  じっさい新聞やテレビを見る人は減り、見向きもされないのがまだ解らないのだろうか。国民の多くは自民党を支持しているわけではなく、野党を否定しているのです。もっともそこそこの需要が無責任政党にもあり、上手く行けば議席が守れて先生面出来るのであればそれで十分だと思っているのだろうか。  映画は投資業界の悪徳を分かりやすく、面白おかしく描いていますが、投機家と投資家を混同してはならない。投機とは証券価格の上げ下げのみに賭けるギャンブラーたちのことであり、投資は経済成長に賭けるものです。  投機の醍醐味は市場の変動の大波を上手く乗り越えれば、短期間にレバレッジを活かして数倍から十倍にすることが可能です。通貨の為替価格が安くなるか高くなるかを予想するFXは勝者の裏に敗者がいるギャンブルであり投資ではありません。
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 もちろんスッテンテンの一文無しか、レバレッジによる借金地獄に陥る確率は90%以上です。では短期でない投資とは何でしょうか。それは長期的に株式や債券などを取得して保有することであり、ほんのわずかではありますが、株主として経済活動に資金提供を行うという意味を持ちます。  ETF投資信託で先進国株式インデックスを購入すれば、そのなかにはAmazonappleマイクロソフトネスレP&GAT&T、アルファベット(Googleですね)、GE、バークシャー・ハサウェイなど先進22ヶ国の1300社弱へファンドを通して間接的に株式を少しずつ所有することになります。  新興国インデックスの場合も23ヶ国の850社弱ですからSAMSUNG(大丈夫か?)、ホンハイなどに分散されています。ただ、これらインデックス・ファンドを使う場合、年率換算すると期待利回りはせいぜい5~8%くらいで単純計算して複利運用するとしても二倍にするまで18年以上かかります。  実際には株式投資複利運用などできません。分配金や配当を再投資するだけであって、複利で増える投資はゼロクーポン債などの債券投資です。  でも株価や経済状況の先行きや外交関係の成り行きなど分からないので分散投資されたインデックスファンドに投入するほうが無難でしょう。当然ですが、株式や経済を予想するエコノミストや評論家の言うことなどほぼテキトーにしゃべっているだけです。  投資家にとってあとになってこういうことがあったから上がったとか下がったとか言われても何の価値もない。まただから暴落すると言ったのだとしたり顔でいう輩も無価値で無意味です。リスクは自分で背負い、リターンはリスクに耐えた者が享受する褒美なのです。  債券は国や企業にお金を融通する金貸しになるということです。株式はオーナーとして企業を一部保有するものなのでオーナーの顔と金貸しとしての顔との比率を決めるのが資産配分、俗に言うポートフォリオ運用です。  違いとしては株式は企業や世界経済の成長が続けば無限に増える可能性がある証券投資であり、債券はとりあえず確実に取りはぐれのない安定運用と為替の読みで成功を目指す投資です。
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 債券投資で高い利回りを目指すとリスクが増えてきますのであまりにも高い利回りに潜む危険性は何かを見極める必要があります。  たとえば利回り8%で通貨がブラジルレアル建てで期間が5年というどこかの会社の社債商品があったとすると為替が買った時と償還時が同じならばそのまま8%の利益と為替手数料などの管理費用との精算で儲けが確定します。  しかし為替が40%下落すると8%の利回りはすべて消え失せ、為替などの手数料で負けます。単純に利回りが良いからと飛びつかない方が良い。また対象が一企業の場合、その会社の経営リスクも背負い込むことになります。  不動産投資では個人投資家向けでワンルーム・マンションなどの区分投資で年率7%稼げるとか毎月20万円のインカムを積み上げていこうなどと言って投資させるものが流行っていますが、これもかなり危険です。  ここでまずは考えるべきなのはその物件が儲かるのであれば何故その不動産販売会社は自分で銀行から借りて運用せずに見ず知らずの他人に営業電話を掛けて切り売りしなければならないのかです。  ここから思い付くのはこの販売会社や銀行は物件の老朽化や債権回収までの時間を短縮化して投資家に責任と負債を丸被せしているのではないかということです。  販売会社と建設会社は一棟をとりあえず作る予定を決め、よく解ってないが欲の皮が突っ張っているカモにもっともらしく取り繕ったパンフレットを印刷して配り、引っ掛かったカモに最低二割くらいは割高に売り付けて利益を確保した残りカスを個人投資家に切り売りしてきます。
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 株はいつ下がるか解りませんが、不動産は実物資産なので安心ですよ(バブルの頃、土地投資で痛い目にあった世代はすでに引退してボケたか亡くなったか、口をつぐんでいるかしている。  ババ抜きのババを引いた人たち)とか、利子が低い今こそが投資のチャンスですよ(金利がいつ上がるかを彼らが気に止めることはない。売ったあとは知ったことではないので)とか口八丁手八丁で売りつけてきますが、相手にしてはいけない。  著作が多い評論家で実際に不動産やワインなどに投資させようとする人々が少なからずいますが、出版会社も投資家に被害が出たら、グルとみなして安易な出版に責任を負わせるべきでしょう。  映画での投資詐欺会社を運営していくディカプリオの手腕は凄腕で、やり方としてはまずはブルーチップと呼ばれるマイクロソフトやディズニーなど誰でも知っている株を売って実績を作ってから後はひたすらにナスダックなどにはとても上場できないようなペニー株と言われるクズを手数料50パーセントの暴利で売りつけまくる。  客が儲けたら儲けたで決して現金化させずにプラスが出た資金をまた新たなクズを買い増しさせて再投資させていく。その間自分たちはリアル・マネーである手数料を荒稼ぎし続ける。彼らは株式を売りつけるが、それは実物ではなく幻想上の〝資産”に過ぎないとうそぶく。  主な出演者はレオナルド・ディカプリオ(ジョーダン・ベルフォート)、ジョナ・ヒル(デブッチョの共同経営者ドニー・アゾフ)、マーゴット・ロビープレイメイトみたいな二番目の妻ナオミ)、マシュー・マコノヒー(マーク・ハンナ)、ロブ・ライナー(父親役 マックス・ベルフォート)、ジョン・バーンサル(カリブっぽい売人ブラッド)、P・J・バーン(ニッキー ヅラコフ)、ケネス・チョイ (チェスター アジア系ヤクザ上がり)など個性的でクセのある俳優陣を集めていて、群像劇としても楽しめます。 総合評価 82点
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