良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『天気の子』(2019)国民的大ヒット作品の後に公開された新作。瑞々しく丁寧な仕事ぶりは良いですが、どこか既視感があるのも事実。

 『君の名は。』で大ブレークした新海誠監督の待望の新作『天気の子』が公開されてから1週間が過ぎ、なんだかんだいっても、のんびりした奈良の映画館ならば、そろそろ空いてくるかなあと予想しつつ劇場に来ています。  最近自動化されて、発券機の機械を自分で操作をしなければならなくなった座席指定を始めようとタッチパネルまで来ました。すると、まさかの完売状態に近く、少々驚きました。あんまり入らないのが普通なので、久しぶりに賑やかな館内です。  発券まで機械で行うというのはなんだか味気ない。昭和のころ、タバコ屋さんにはバアさんと自動販売機がセットでした。平成に入るとバアさんがいなくなり、自動販売機が二台、つまり外国たばこと日本たばこに分かれて、それぞれを誰かが管理するようになっていきました。それが増税のたびにタバコを止めるオッサンが増え、いつのかにかタバコの自動販売機は無くなり、コカ・コーラ伊藤園自動販売機に変わりました。 weather001.jpg  映画館も受付で大人向け映画に入るのにオドオドしながら、オバちゃんに「大人一枚!」と言って、決死の覚悟で入っていったのが懐かしい。そういうやり取りが無くなるのは寂しいのですが、これも時代の流れなのでしょう。『エマニエル夫人』や『ウォーター・パワー アブノーマル・スペシャル』とかはエロ映画の代表みたいで、ポスターを横目に見ながら、妖怪人間ベムのように「早く大人になりたい!」と心の中で叫んでいたのが思い出されます。  本日、関西は台風が通過するとのことで、観客も少ないのかなあと思いきや、客層は夏休み真っ只中なので、部活帰りの高校生の大群や大学生ばかりでした。あいつらは天気なんか関係ないのでしょう。ポップコーンとデカいコーラを膝にのせて、上映前の館内をパシャパシャとケータイで撮影し、インスタにでもアップしているようです。  僕ら中年世代は少数派でしたが、昔からアニメや特撮の劇場版が公開されると普通に出動しているので、ガキどもの白い眼の視線はへっちゃらです。『君の名は。』のメガヒットの後に発表されたこともあり、新海誠監督にはあまりにも過大なスポンサー、東宝、ガキどもからの期待とプレッシャーが掛かっていたでしょう。なんとか無事に夏休み前の公開まで漕ぎ着けたので、コケるにせよ、またまた大ヒットするにせよ、製作側には安堵感もあるでしょう。 weather002.jpg  内容を見た限りでは新海監督ら制作側のしっかりとした作品を世に送り出したいという意志がはっきりと観客にも伝わる出来栄えだと思います。特に全盛期のジブリのような丁寧な作画にホッとします。  良かった頃のジブリを思い出しますが、もちろん難点もあり、『君の名は。』でも使用した、伊弉諾伊邪那美以来の定番である黄泉がえりのアイデアの再現や前回の彗星の次に今度は異常気象の長雨を持ってきたこと、巫女としての存在、坂道での再会の再現はどうなのかなあとも感じました。ピュアな恋心や瑞々しさは描けていますので、若い層には受けるでしょう。  ただ前回、かなり効果的だったRADWIMPSを再度起用し、今回も一定の効果は上げているものの、二番煎じ感は否めない。ハマり過ぎているというか、なんだか「はい!ここが盛り上がりどころですよ!」と強要されているようで、あざと過ぎる。素直な十代の女の子たちの中にはグシュングシュンと泣いている娘もいましたが、心が薄汚れているオジサンがこういう姿を見るとなんだか場違いな思いを抱いてしまいます。 weather03.jpg  お話の展開は要所要所で分かりやすく起承転結の“点”が入るので、テレビアニメを4話続けて見ている感じになります。現代の若い子供たちの集中力は25分程度しか持たないとマーケティングで見越したであろう大人の判断がチラチラ見えるのがなんとも作為的に感じます。  厳しく見ていくと穴が多く感じますが、これは現在の御伽噺なのだと割り切ると、神話の主人公たちが現在の世に出てきたら、こんな感じのイマドキの風俗に染まった物語になるのでしょう。主人公たちの設定は最小限しか語られず、家出の理由も、なぜピストルに頼るのかも、別居の原因も、未成年者が部屋を借りられている理由も不明なままで終わっていきます。 weather04.jpg  ただ、そこは別に語る必要性もないから、作中で語られないだけであり、そもそも観客がすべてを知っている“神”の立ち位置を得ることに必然性も興味もないのでしょうから、切り取られた物語に接すればそれで良い。ただでさえ、音楽がサービス過剰気味なのですから、謎の部分がなければ、無味乾燥になります。観客各々がなぜ彼らが出会い、物語を構成するのかを想像すればいい。  画はとても綺麗ですし、丁寧な仕事ぶりには好感が持てます。令和のスタジオジブリになれるかは次回作次第かもしれません。ここで一発、子供向けの作品を送り出せば、そのラインに乗れるのではないか。今回の作品も当たりそうですし、本人たちが望めば、手に入る位置までは来ているのではないでしょうか。  カップラーメンは2分が美味い?もちろん知ってるよ! ただ、年齢を重ねるとだんだん、硬いのは胃に来るんだよ!もうじきわかるよ! 総合評価 65点 小説 天気の子 (角川文庫)
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