良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ハイティーン・ブギ』(1982)ジャニーズ全盛期といえば、僕ら世代ではたのきんトリオなんです!追悼、ジャニーさん。

 夏も終わりに差し掛かるであろうはずの今日この頃ではありますが、依然35℃を超える暑さは続いています。奈良・京都は盆地のため、湿度も高く、大阪よりも2℃くらい気温が高い。  そんなときは辛い物が一番、というわけではなく、寒かろうが、暑かろうが、変わりなく毎月数回は通っているインド料理レストランに顔を出しました。するといつもと違うことがありました。それは店内に立ち込めるお香の薫りでした。  インド料理とお香の組み合わせは異国情緒たっぷりでとても懐かしい感じがしました。インドには行ったことはありませんが、お香の薫りになんとも言えないノスタルジーを感じたのです。インド料理好きなので、とうとうお香やスパイスでホッとリラックスするほどになったのかと感じていました。  お店のマネージャーさんに、「お香を焚くようになったの?」と声を掛けたところ、「あ〜!これ?そんなええもんちゃうで!蚊取り線香やねんWWW」という答えが帰ってきました。話を聞くと、夏はドアを開けると蚊が入ってくるけど、殺虫剤を撒くわけにもいかないので、仕方なく、蚊取り線香で我慢しているとのことでした。 highteen01.jpg  先程の僕が感じていた感想を話すと、「そりゃ、昔嗅いだ香りやから、懐かしく感じたんちゃう?」と返ってきたので、二人で「昭和だもんね!」としばらく大笑いしていました。  豆のカレーとベジタブルカレー、タンドリー・チキン、そしてローティー(庶民はナンではなく、こちらを食べます)で食事を終えてから、奈良駅前のレコード屋さんに向かい、ビートルズの2枚組『ザ・ビートルズ(おなじみのホワイト・アルバムですね)』の赤盤で状態が良い物を予約しようと歩いていました。  本日は最強シングルの『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー/ペニーレイン』でも買おうかなあと考えながら店内に入ったところ、ちょうど掛かっていたのはイギリスのパーロフォン『愛こそはすべて/ベイビー・ユー・アー・ア・リッチマン』のモノラル・シングル盤でした。ビートルズのシングル盤はモノラルの方が力強さと勢いを感じます。45回転なので、音も良い。  「めちゃベースが効いてますねぇ!」と声をかけて、マトリックス1と2を交互に聴きながら、B面『ベイビー・ユー・アー・ア・リッチマン』のテイクが好みだったので、マトリックス1のシングル盤を購入してきました。ついでにキャピトル盤『ミート・ザ・ビートルズ』のエコーたっぷりで日本人ファンには評価が分かれそうなステレオ盤を手に入れました。  個人的にはアメリカ盤特有の粗っぽくて、ガッツのある感じとエコーが好きなので、評価が低いのは不思議です。家に帰り、レコードを夜七時くらいに聴いていたところ、突然ドンドンと爆発音が響いてきたので、窓を開けてみたら、ちょうど平城京辺りからの音で、すぐに理由が分かりました。 highteen002.jpg  その日の晩はちょうど花火大会だったようです。PLや淀川に慣れている方が見れば、ショボいと言われそうな規模ですが、奈良にしては頑張っている方で、自宅二階の窓から夜空に打ち上げられた、仕掛け花火がしっかりと見えるので毎年楽しみにしています。  時間としては十分にも満たない時間でしょうが、春の桜、夏の花火を毎年恒例で見ることが出来る環境なので、満足しています。ぼくは打ち上げ花火は横から見ます。オーラスの大きなフィナーレを告げるような大掛かりな花火も終わり、しばらくは満足感に浸っていました。  そんなこんなで夜に見たのはビデオ時代に録画(40年くらい前の物)していた、たのきん主演第四弾『ハイティーン・ブギ』(マッチ主演は三作目)でした。若い人は今のジャニーズしか知らないでしょうから、田原俊彦野村義男についてほとんど知らないのではないかと思いますが、僕ら世代にとってのジャニーズは彼らとシブがき隊(本木雅弘薬丸裕英、布川敏和)、そして少年隊でした。  シブがき隊はデビュー当時かその前くらいに"シブがきトリオ"と言われていて、明星などにもそう表記されていた記憶がありましたが、勘違いだったのだろうか。 highteen007.jpg  田原俊彦近藤真彦野村義男の三人は『三年B組 金八先生』の第一シリーズに出演していたのも懐かしい。当時からトシちゃんは人気で、マッチは長ランを着ながら登校するエピソードを覚えています。ヨッちゃんはこのころから人の良さがにじみ出ていて、好感が持てました。ついでにこの作品に出てくる三原順子も金八出身なので、4人とも桜中学3Bです。  卒業後にグレちゃったんでしょうか。彼らは歌番組でも引っ張りだこで、近藤真彦名義ならば、『スニーカーぶる〜す』『ヨコハマ・チーク』『情熱☆熱風☽せれなーで』『ミッドナイト・ステーション』『ギンギラギンにさりげなく』が思い出深い。  田原俊彦ならば、『哀愁でいと』『ハッとして!Good』『ブギ浮ぎI LOVE YOU』『原宿キッス』『ラブ・シュプール』『シャワーな気分』『ピエロ』『抱きしめてTONIGHT』はファンでなくても覚えているでしょう。多大な貢献をしていたのは事実なのですから、認める部分は認めるべきではないか。意外と二人で出したシングルというのはないようです。出せば、間違いなく売れたでしょう。  嵐のコンサートなどの演出でも、近藤真彦の名前や少年隊は出てきますが、ジャニーズに多大な貢献をしたはずのトシちゃんのことは全くスルーされていて、当時を知っているぼくはなんだか寂しい感じでした。  その他で覚えているジャニーズ系の歌ではTOKIO『宙船』、嵐『Love so sweet』『Happiness』、少年隊『君だけに』『デカメロン伝説』『仮面舞踏会』、男闘呼組『TIME ZONE』、KinKi Kids『フラワー』『ぜんぶ抱きしめて』、SMAP『青いイナズマ』『セロリ』『SHAKE』『ダイナマイト』『夜空ノムコウ』『らいおんハート』などは好みでした。 highteen004.jpg  田原俊彦についてはのちのトラブルが原因なのでしょうが、いつまでも根に持って、嫌がらせをするのはどこぞの国みたいなので、いい加減大人の対応をしてほしい。実際、あれだけ大ヒットしたたのきん主演映画がいつまでもお蔵入りしたまま、熱狂的に観に行っていたファンたちがDVDで楽しめない状況は良くないと思います。  本作の内容としてはありきたりではありますが、不良少年の挫折と更生を描いた作品で、マンガ原作『ハイティーン・ブギ』を舛田利雄監督で映画化したものでした。演出には正直、首をひねる謎の展開が多すぎて、かなりシュールな仕上がりになっています。  中盤まで、ごく普通の不良更生物語だったのが急にミュージカルになってしまう頃から雲行きがどんどん怪しくなり、トシちゃんやマッチが歌い出し、武田久美子が混ざっていくなど混迷を極めて行くなどして、製作側の狂気を感じます。ジャニーズサイドがあちこちに口出しをしてきたのでしょうか。イライラしながら、渋々従う舛田監督ら撮影陣の姿が思い浮かんでしまう。  演技は下手なのはご愛敬ですし、ファンはふだん小さなブラウン管テレビでしか見られなかった大好きなアイドルたちを大きな画面で見られれば、それでオッケーだったはずです。ファンでない人が演技や歌唱力がどうのこうの言うのは野暮でしかない。映画はお金を払って、観に行く人のために作られるのです。主役はマッチで、トシちゃんは脇役でしたが、むしろトシちゃんの方がカッコよい。ヨッちゃんはいつも通りに脇に徹しています。 highteen005.jpg  ヨッちゃんのバンドにマッチが参加する展開になりますが、曽我泰久が出演しているもののTHE GOOD-BYEではないのが残念です。収録されている曲は『MOMOKO』『カモン・ロッキンロード』、田原俊彦『重のバラード』、近藤真彦田原俊彦『あ・ら・しのLong run』でした。  ヨッちゃんは今では日本でも指折り数えるほどのギタリストとして名声を得ていますが、たのきんの頃は脇役でドラマに出ていたりしていたので、その方向に向かうのだとばかり思っていました。若い時代でしたが、それでもきらりと光る存在感を見せてくれていたので、俳優業もやって欲しかった。  あくまでも絶頂期のアイドルを見る映画なので、演技をどうこうの言う必要性はありませんが、もっとも印象的だったのは三原順子が演じた暴走族の女リーダーで、彼女がまき散らす嫉妬と執念のいやらしさが強烈でした。この映画で起きる災難や受難エピソードのほぼすべては彼女のせいで起こります。  まさに魔女のような禍々しさでした。トシちゃんはこの女のせいで、『青春グラフィティ スニーカーぶる〜す』の時と同じようにバイク事故でこの世を去ります。違った死に方を探せなかったのでしょうか。バイクから放り出されて、空中へ飛んでいくさまは合成ショット感が強く、なんだか『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』のラストの打ち上げ花火を見るような妙な感慨に浸りました。 highteen006.jpg  またこのシーンを挟むように唐突に始まるのが大ヒットした主題歌『ハイティーン・ブギ』のミュージカル・シークエンスで、小林桂樹二瓶正也刈谷俊介、加藤武らオジサンたち、そしてバイクレースに参加しているトシちゃんと観戦している三原順子以外の主要な出演者たち、つまり、主役のマッチとヨッちゃん、武田久美子らがニコニコして踊り狂いながら、歌っています。  エンディングは歌唱シーンの後に胴上げされるマッチとともにストップモーションがかかり、再度『MOMOKO』とスタッフロールが流れますが、そこへバイク事故で亡くなったトシちゃんの無念の表情のアップが心霊写真のように浮かび上がってきます。これが一番怖い。  ぼくは男の子アイドルには興味はありませんでしたが、知らず知らずに刷り込まれていたジャニーズ系歌謡曲は数多くあることに気づき、驚かされます。普遍的な楽しさがあるのでしょう。そういった意味では追悼ジャニーさんですね。  色々とゴタゴタが続いていますが、いずれ落ち着けば、小中高生の女の子たちをキャーキャー言わせる大スターが生まれてくることでしょう。ただ五年以内をめどに作れなければ、それまでの蓄積だけでは厳しくなってくるでしょう。 総合評価 48点 近藤真彦THE BEST - 近藤真彦