良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『記憶にございません!』(2019)三谷幸喜監督の新作を初日に観てきました。

 三谷幸喜監督の『記憶にございません!』をあいにくの雨の中ではありましたが、さっそく公開初日に観に行ってきました。なんだかんだと劇場まで観に行くことが多い監督さんですし、映画ファンの期待も大きいようで、ロビーには人だかりが出来ています。  一般的にはなんだか変わっていて、面白いオジサンというイメージしかないのでしょうが、作品も見て欲しいなあと思っています。最近はアート系欧州映画とレンタルビデオ時代にお店の棚を埋めるためだけにソフト化されたような未公開っぽいマニアックな作品群や昭和アイドル映画を交互に見ています。 kioku001.jpg  『フォーエバー・モーツアルト』、『中国女』、『ハイティーン・ブギ』、『アマゾネス対ドラゴン 世紀の激突』、『三大怪人 史上最大の決戦』、『ジェミニYとS』、『エイゼンシュテイン自伝』『ブルージーンズ・メモリー』『燃えよドラゴン』の順番で見ていったので、感情の起伏が激しすぎる状況になっています。系統立てで見るほうが違和感はないのでしょうが、感情の赴くままにあれこれ選ぶほうが楽しい。  そして、本日の『記憶にございません!』。僕ら世代が覚えている「記憶にございません」というフレーズは昭和50年代に世間を騒がせたロッキード事件の一連の裁判や証人喚問で飛び出した小佐野賢治のこの発言でしょう。実際には「記憶ございません」や「記憶ありません」だったようですが、長州の「キレちゃいないよ」が小力のギャグのためか、「キレてないですよ!」になったみたいなものでしょう。 kioku06.jpg  小佐野賢治と言われても、若い方は知っている訳もないでしょうが、政治家(主に田中角栄)と癒着して土地転がしを行ったり、ハワイでのホテル事業、タクシー会社経営などで一時は個人資産が10兆円(昭和の頃です)という莫大な財産を一代で築いた大物でした。  観る前に時間がありましたので、コメダ珈琲に入り、小倉トーストとカフェオレを頼み、のんびりとしていました。いつもは客でごった返す店内の様子を見て、敬遠していましたが、流石に一時期のブームの頃からすると落ち着いてきています。普段はスタバが多く、今回初めて入りましたが、アンコとバターの風味が気に入りました。 kioku004.jpg  作品の内容としては政治を扱うコメディーなので、多少は皮肉っぽいところがありますが、冷え切った夫婦や家族関係の再生や記憶喪失をキッカケに、それまでのどうしようもなく汚れて、最低レベルの生き方を他者にも押し付けてきた自身の人生をもリセットしようとする物語でもあります。  ちょこちょこ溢れ出てくる三谷幸喜独特の洒落っ気や笑いのセンスを受け入れられるかで感想は変わってくるでしょうが、ぼくは十分に楽しめましたし、館内を七割程度は埋めた観客席のあちこちから幾度も笑いが起きていたので、他の人たちも楽しんでいたに違いない。 kioku_02.jpg  良い味を出していたのは幼馴染み役で波平さんみたい(前述の小佐野賢治にも見える)だった梶原善、料理人役の斉藤由貴、愛人役の吉田羊、悪徳官房長官役の草刈正雄(彼にとっての不祥事は黒い交際ではなく、ゴルフでズルをすることである)、滝クリ風の有働由美子小池栄子ディーン・フジオカらでしょうか。  楽しかったのはアメリカ大統領(木村佳乃)を迎えての日米首脳会談時に英語が分からないけどどうしようということになり、何でもかんでもとりあえずは“Me Too”で誤魔化そうとする下りです。 kioku005.jpg YMO『増殖』に収録されていた、懐かしのスネークマンショーのミスター大平を思い出させてくれました。英語の意味がまったく分からないのに「イエス」「ノー」を繰り返し、外人に差別的に話されても、ニヤニヤ笑い続ける様は情けないものでしたが、流石に今ではちょっとは変わっていると信じたい。  国会議事堂の中心で好きなタイプの石田ゆり子に愛を叫ぶ中井貴一首相でしたが、世間の評判は急には変わらず、支持率は3%以下で幕を閉じます。楽しい映画には間違いないので、消費税が上がる前に観に行きましょう。 kioku0202.jpg 総合評価 68点 グッドモーニングショー
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