良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『くたばれ!ハリウッド』(2002)名作はみんなオレ様のおかげと言い切る痛快似非ドキュメンタリー。

 2002年製作で、ブレット・モーゲン ・ナネット・バースタイン両監督による、パラマウント映画の名物プロデューサーだった、ロバート・エヴァンスの暴露話を基に製作された、えせドキュメンタリー作品です。何故、似非かと言うと、相手に全く反論させていないのと、相手からも全く相手にされていないからです。 タイトルの原題は「小僧はまだ映画界に残ってるぜ!」という意味で、日本の諺でいうと、「憎まれっ子、世にはばかる」でしょうか。  いわゆる内幕物なんでしょうけど、笑えるほど「おれってすげえんだぞ!」という、中年がよくやりがちな自慢話と、「おれにもつれえことがあったんだよな!」という、場末の酒場でよく聞かされる同情話のオン・パレードでした。     前者の話は、若い男の映画関係者に、そして後者のそれは、夜のクラブやバーで、姉ちゃんでも口説きながら、何百回も語ったに違いない。普通の親父ならば、こんな話は完全に無視されるでしょう。しかし彼は生きる伝説の、ハリウッド豪腕プロデューサーだったのです。     よく近所のおじさんたちが、定年後に自分史を作っているノリなんでしょうけれども、出てくる友達や関係者だった人たちが、ジャック・ニコルソンフランシス・コッポラ、出演はしなかったがロマン・ポランスキー、ほんでもってでてくる女関係も、ミア・ファーローをはじめ、ハリウッド女優やモデルがわんさかという、まさに、男性映画ファンが夢想するようなハリウッドのバブリー人生を、自分の主観だけで描いた見事なまでに「どてらいやつ」な作品でした。  アカデミー賞を受賞した『ゴッド・ファーザー』も、ポランスキー監督の代表作『ローズマリーの赤ちゃん』も、『ある愛の詩』も、『チャイナタウン』も、評価の良い作品の手柄は、全て自分のおかげと言い切ってしまうとんでもないおやじであります。  が、監督連中、とくにコッポラは『コットンクラブ』 で大失敗して、彼を殺しかけたためか、そしてポランスキーは、なにか彼に弱みでも握られているのか、それともただ単に、このおっさんが嫌いだからか、まったくの沈黙でした。実際問題として、ポランスキーにはまったくインタビューすらなかったのではないでしょうか。『ローズマリーの赤ちゃん』は彼の作品であると言わんばかりの構成でした。    こんなふざけたおやじは、最近あまりお目にかかったことはありませんが、彼くらいの奴ならば、二回くらいは彼自身の口から自慢話を聞いてみたいかなあ。特に『ゴッド・ファーザー』、『ローズマリーの赤ちゃん』がらみをね。  彼がどうやってミア・ファーローを励ましたかとか、『ゴッド・ファーザー』において、コッポラに監督を、そしてマーロン・ブランドを主演として製作を続けさせるために、なんとかして彼らを首にしようとするパラマウントの重役達を、いかにして彼が自信を持って説得し、映画史に残る作品を世に送り出したかなどを、おそらく一晩中でも語り続けてくれるでしょう。 総合評価 58点 くたばれ!ハリウッド
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