良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『インストール』(2004)上戸彩がHな台詞を吐き、神木隆之介クンの演技が光るのみの作品。

 2004年に公開された、綿矢りさによる原作小説が映画化されたものであり、監督は片岡K(っていったい誰なんだ?)、主演に人気アイドル、上戸彩を迎えたのが、この作品でした。  内容的には登校拒否の引きこもり女子高生が、暇をもてあまし、近所の小学生と仲良くなり、二人でネット風俗のバイトを始めるという、ありそうでなさそうなどっちでもいいようなストーリーです。  何をして良いかもよく考えず、現実から逃避して、とりあえずネットにはまっていたら、時間だけがどんどん過ぎていき、気がついたら、6ヶ月間経っていたというのはありそうな話でした。  原作を読んでいないので、なんとも言えないのですが、この程度の駄作だったんでしょうか。また演技としては神木隆之介クンは非凡な才能を見せてくれています。上戸彩についてはトップ・アイドルにHな台詞を吐かせたくらいで、彼女のファンには楽しめるかもしれませんが、そうでない人には無意味な台詞が続きます。  ここで扱われるネット風俗、そしてネット環境自体もかなり古臭く感じられるのはこういったネットと女子高生という最新のテーマを映画で扱う難しさを感じてしまいました。上戸彩が女優として残り続けるか、神木隆之介クンが大出世しない限り、おそらくこの映画は忘れ去られるでしょう。  映画として目新しい部分はなく、見せ方にセンスを感じるのは主役二人を対照的な人物として背景の色(白い襖の前で演技する上戸と、押入れの開いた襖の黒色の前で演技する神木くん)で分ける構図と、原色を多く取り入れている、椅子、テーブル、照明などポップな色の家具くらいです。  ラストシーンで二人が池の前で別れ、別々の道に歩いていくが、池が円形なので、すぐに一緒の道に進んでいくというのが暗示されているのも興味深い。  80年代に10代だった自分達の時代に、登校拒否をしていた友達たちのしていたことは、せいぜいファミコン、読書、TV三昧位しかありませんでしたが、いまでは大人でも休日になると、終日デスクの前に座っていられるほど充実したネット環境があります。  学校にしろ、家庭にしろその価値を疑いだしてしまうと、どうしても空虚な感覚のみが頭を覆いつくしてしまい、このような引きこもり状態になってしまうのでしょうか。ネットにしろ、ゲームにしろ現実ではない仮想コミュニケーション的な部分が多くあり、これだけにかかわっていると現実の人生に影響を及ぼす人も出てきてしまいます。  ネットでも風俗チャットならば他人格を装い、バイトでも出来るでしょうし、実際スパムメールのほとんどは出会い系が多い。他人格を装える事を悪用して、普段言えないような勝手な事を掲示板等に撒き散らす人も多く見掛けます。  ゲームにはまっている人も深刻で、高校時代、昔の知人で登校拒否になってから、やっているのはファミコンだけという人もいました。様子を見に行っても、ファミコンの話しかしないので、徐々に足が遠のき、記憶からも消えていきました。  バーチャルな物は所詮、バーチャルでしかない。大学生の頃、ファミコン・ゲームにはまりまして、たしか『信長の野望』やら『三国志』などのRPGをひたすらやり続けていました時期がありました。  しかし、こういった生活を半年くらい続けていて、夕方から朝方にかけてやっていたある日に、ふと「これが一体何になるんだろう?」という疑問が湧いてきた瞬間にゲームというツールのすべてが虚しくなり、周りを見るとスナック菓子、カップ麺、缶コーヒーが部屋中に散乱していて、「これではまずい」と思い、朝から掃除を始めて、昼過ぎには中古屋にゲーム関係のものを処分しに行きました。以来、一度もゲームはやっていません。  引きこもりの人も多いようですが、なにか急にきっかけがあれば、元の世界に戻れる人がほとんどなのではないでしょうか。アナキン・スカイウォーカーがシスでもジェダイに戻るように、彼らも小さなきっかけで戻ってこられるのではないかともいます。  ゲームより現実世界のほうが、より難しいゲームなのですから、ゲーム好きにはぜひとも現実ゲームに戻ってきて欲しいものです。道を右に行くか、左に行くかで変わってくる人生もあるかもしれません。  作品としては全ての部分で未消化というか、消化不良な感じを受けます。描き方によってはもっとエグミのある濃い作品に仕上げられたかもしれません。 総合評価 45点インストール スタンダード・エディション
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