良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『惑星大怪獣 ネガドン』(2005)世界初のフルCG怪獣映画!人物と怪獣に不満が残るが...

 CG全盛といわれて久しい最近の特撮事情ですが、その中でも全ての映像がCGで構成されている唯一の、つまり世界初の怪獣映画こそがこの『惑星大怪獣 ネガドン』です。上映時間が25分という短めの作品ではありますが、ここで描かれる風景、人物、機械類、静物、動物の全てがコンピューターによってプログラミングされたCG映像だというのには驚かされます。一昔前のCGとはレベルが格段に進化しています。

 人物の細かな表情、とくに目の動きや口元の動きにはまだまだ不自然さがありますが、機械を含めた非生命体を描いた映像は現実と見紛うほどの精緻な出来栄えでした。圧倒的な情報量を画面の中の一つ一つの構成要素に見ることが出来る。

 金属の表現は質感が素晴らしく、水の表現もここまで美しく描けているのは気味が悪いくらいです。木製の家具類もしかりで、実写映画でも上手く使えば、マット合成用シーンのみで、ほとんどの撮影現場が必要なくなるほどの脅威を感じます。

 誰でもが知っている風景に関しては判断できますが、行ったことのない室内風景を見せられて、普通に実写の人物の芝居とCGが融合すれば、十分に使えるところまでそう時間は掛からないのではないかと思えてきます。

 CGそのものも優れていましたが、それ以上に良かったのは50年代風の明るさと暗さを作品に取り込み、当時の世界を再現しているような粟津順監督自らが制作したフィルターの開発とその利用でした。雰囲気が良く出ているので、東宝特撮映画に慣れ親しんだ者にでも拒絶されることは無いのではなかろうか。

 作品としては落ち着いたカット割りに好感が持てる。またカメラ(つまり監督もしくはカメラマンの目)という実写映画的な視点ではなく、あくまでも登場する事物や人物が視界の中を動いていくサイレント映画的な撮り方(描き方?)をしているのも新鮮に映る。

 それまでの日本特撮映画へのオマージュに溢れる作品でもあり、『機動戦士ガンダム』『銀河鉄道999』のアニメ物ばかりではなく、モゲラや轟天号を思い出させるような東宝特撮映画的戦略兵器への愛情を嗅ぎ取ることも難しくはない。だいたい円谷的な怪獣ネガトンのデザインを見て思い出すのはヘドラであり、マンモスフラワーである。

 画面の作り方もローアングルを選択して、人間側の兵器であるMI6式二号試作機(ガンダムに出てくるモビルスーツ・ザクに似ている!)を前面から捉えた後に、背後からの俯瞰で、この兵器の大きさを見せ付けるという芸の細かさを見せている。

 ただ残念なことに、肝心の怪獣ネガドンのデザインがカッコ良くないので盛り上がりに欠ける。主人公が中年の科学者というのも感情移入上マイナスに働く。これらに再考の余地を残すが、単純明快なストーリー展開とMI6式のデザインがガンダムの懐かしさを呼び起こしてくれるので、見ていてニコニコしてしまう。

 ただ怪獣映画マニアが監督になった人なのであれば、なによりも自衛隊の活躍をもっとしっかりと描いて欲しかった。尺が短いので今回は仕方ないが、次回は是非見てみたい。MⅠ6式という名前の付け方からして、この監督は間違いなくゴジラガンダム、そして自衛隊的攻防が大好きでしょうがない人なのではないだろうか。

 粟津順という名前を覚えておこう。

総合評価 68点

惑星大怪獣ネガドン