『映画館と自宅の違いは何か?』どちらも鑑賞スタイルの王道ではありますが…
映画とは本来は暗い映画館の座席に深く腰掛けて、劇場ならではの「隠れ家」感と普段とは異質な空間で生まれる開放感、そして相反する閉塞感の中、見ず知らずの他人と席を隣同士になりながら、多少の遠慮と緊張に包まれながら、じっくりと観るものであろう。
そこには人間としての社会性とコミュニケーションが確かに存在する。自宅から、または職場や学校から映画館へと続く道のりは映画ファンにとってはむしろ映画を観ている時よりも至福の時間かもしれない。館内の照明がすべて消され、スクリーンにフィルムが映し出される瞬間と、この映画館への道のりこそが映画鑑賞前の最大のクライマックスかもしれません。
映画館の座席に腰掛けると様々な人たちがいるのに気付くでしょう。彼等はその日は一人で観に行ったのであろうか、二人で観に行ったのであろうか、家族や団体で観に行ったのであろうか?一人で観に行った人は一緒に行く相手がいなかったから、一人だったのか。それともじっくりマイペースで堪能したかったのであろうか。
カップル達は初デートに映画を選んだのだろうか、作品によっては大失敗することもあるのが映画の面白さでもある。直近の例では『パフューム』などは大失敗の例になるのではないだろうか。宣伝に騙されて観てしまった人にはお気の毒としか言いようがない。作品自体はジャン・ジャック・アノー監督作品を彷彿させるような出来栄えで、大人の映画マニアが観たならば十分に楽しめるものである。
しかしデートには向かない。彼氏の選択肢の拙さがその後の彼等の関係にひびが入らなければ良いなあと思いながら、彼等を含めた観客の反応と作品を交互に観ていました。老人割引で観に来ている人も同様で、彼等は作品の内容を理解せずに、ただ安くで入れるから来ているだけである。
また彼等のマナーの悪さは深刻で、高校生などの若い人たちよりも、むしろマナーの点では彼等が最悪である。
老人に限って、「今の若い者はなってない!」などと陰口を叩くが、実際に注意深く見ていると、圧倒的にマナーが悪いのは50代以上の「大人?」と老人であることが多い。もちろん電車内でへたり込んでいる高校生を見ると、「今の若い者はなってない!」と言いたくなることもある。しかしこと映画館でのマナーにおいては「いい大人?」のほうのマナーの悪さが目につく。
老若男女、いまだに上映中に携帯を鳴らす者がいる。シリアスな作品で、ポップコーンを貪り喰らう者がいる。メールを確認する者がいる。大きな音を平気で立てる者がいる。これらは他人への思いやり、つまり社会性が欠如してきていることを端的に物語る。
非社会性は年齢に関係なく、蔓延りだしている。これらは映画ファンだけではない。非社会的な彼等は劇場で観る資格のない者たちである。社会性のない者は他人を不愉快にしていても、全く省みることもない。五感を研ぎ澄ませて観るべき映画を観に来ているとは到底思えない者が「お客様面」をして偉そうにしている様子はひどく滑稽である。
見ているだけで「この人は映画ファンなんだろうか?」と思える人々が闊歩している館内は年々豪華になる劇場内の内装とは真逆に居心地の悪い空間になりつつある。無条件に割引したり、前売り券をばら撒いたりするのはちゃんと正規の料金を支払って、楽しみに観に来ている本来の「映画ファン」の楽しみを大いに奪っている現実に映画館や配給会社は気付くべきではなかろうか。
劇場に行く度に、なにかしら嫌な思いをすることが非常に多くなっている実態はさらに新作映画への足を遠のかせる原因となっている。各地の名画座が無くなって久しいが、大阪にはまだシネヌーヴォが存在しているので、そこへ行った方が大いに楽しめる。
映画館を一般人から、映画ファンの手に取り戻したいと願う、今日この頃である。もちろん映画ファンの力が至らないばかりに、最悪なマナーと酷い映画が大怪獣のように劇場環境を破壊してしまったのも事実であろう。
年々劇場へ足を運ぶ熱意が薄れつつあるが、それでも劇場までの道のりと館内が暗転していき、スクリーンにフィルムが映写される瞬間を楽しむのは至上の喜びであることは変わらない。そして、その作品が素晴らしければ、帰り道はさらに良い気分で余韻を楽しめる。たとえその作品が駄作でも、劇場に行く喜びに変わりはない。ちょっと気が重いときもありますが。
映写へのこだわりという点では自宅でのプロジェクター・タイプのホームシアターに切り替えるという選択肢もあるのでしょうが、あれは熱が放散されそうだから、夏は暑いだろうなあとか思うと、なかなか踏ん切りがつかない。せっかく買っても、設置環境が拙かったら、ごくわずかでも差し込んでくる光に悩まされるかもしれない。
一方で、愉快、不愉快含め社会的なコミュニケーションに晒される劇場での映画体験とは違い、自宅でのDVD、WOWOWやNHKなどのBS、スカパー、地上波での鑑賞スタイルでは他人とのコミュニケーションがほぼ遮断される。
関わってくるのは家族であり、友人であり、基本的に「身内」のみである。見ず知らずの人との隣席を嫌う人やなかなか忙しくて、劇場まで足を運ぶのが難しいという人には現在の映画を取り巻く環境は夢のような状況でしょう。
ツタヤをはじめとするレンタル環境は素晴らしく、陽の目を観ない映画や忘れ去られて久しい映画を大量に発見できます。WOWOWやスカパーの一ヶ月に放送される映画の数は数百本以上であり、むしろどれを見るのか選択するだけでも大変になってきています。
情報の取捨選択を迫られるのは初心者にとってはかなり難しくなってきているのではないでしょうか。そこでおススメなのはまんべんなくさまざまなスタイル、国籍、時代の作品を一ヶ月に数百本以上満喫できるWOWOWです。そのままWOWOWと契約しても良いでしょうし、スカパーにもWOWOWチャンネルがありまして、同一のラインナップでCSでも鑑賞することが可能になっています。
個人的にもスポーツ中継も充実していて、サッカー・スペインリーグやテニスの生放送があり、音楽ライヴが多数あったり、演劇中継、『CSⅠ』などの海外ドラマなどラインナップがしっかりしているWOWOWを視聴していることが多いのが現状です。
既に加入されている方々はこのチャンネルの有難みをご理解いただけるとは思います。未加入の方はぜひ映画の洪水に浸って欲しい。映画だけではなく、さまざまな芸術分野やスポーツへの見聞を拡げてくれるこのBSは優れものであろう。
好みがはっきりとしている方にはスカパーはまさに第七芸術を見るには至高の「第七天国」といえる。ハリウッドのクラシックから最新作(スター・チャンネル3チャンネル)、サスペンスの王様ヒッチコックの作品群(ザ・シネマ)、ヨーロッパ映画のクラシックや60年代の夢のようなフェリーニ、ゴダール、キューブリック監督作品(シネフィル・イマジカ)などが大量にオンエアされています。
邦画が好きな方には衛星劇場(松竹系)、チャンネル・ネコ(日活系)、日本映画専門チャンネル(東宝・大映系)、時代劇専門チャンネルなどがあり、宝の山に飛び込んだような気持ちになります。
個人的に多く視聴するのはシネフィル・イマジカ、日本映画専門チャンネル、そして前述のWOWOWとなります。たまにNHK-BSでも掘り出し物が放送されるので、そちらのほうもチェックしております。多忙の中で見ていくのはかなり難しくなってはいますが、出来るだけ多くのフィルムを鑑賞していきたいものです。
自宅型のメリットを最大限に活かせるのは自分の空いた時間に自由に見れるということでしょう。ビデオ、DVD、有料放送というソフト面、そしてハード・ディスク・レコーダーなどのハード面での進化は自宅型を大いに後押ししてくれています。
ビデオではせいぜい6時間程度しか録画できなかったのがHDDなら50時間以上も録り貯めできるのは当初は考えられないことでした。海外旅行に行く度に周りの知人に「録画しておいてね!」と頼まなくて良いのですから。
家で見るほうが快適だったならば、わざわざ劇場まで足を運ぶ必要もありませんし、不愉快な思いを味わうこともありません。こうしてみていくとリラックスしながら集中できる自宅型のほうにもかなりのメリットがあるのが分かります。
ただし自宅型の方には絶対に守っていただきたいルールがひとつあります。それは前にも言いましたが、「一時停止は絶対にしないこと!一時停止は作品の『死』を意味するからです。」という一点のみです。それさえ守っていただければ、映画が伝えたいエモーションは理解できると思います。
また特撮映画はできれば劇場で観てくださいということです。大画面であればあるほど、その実力が大いに発揮できるジャンルが特撮なのです。DVDを観ていると迫力をあまり感じなくなってしまうのは仕方がありませんが、特撮を見るときはDVDで見たときの1・2倍以上の幸福感を劇場の観客は味わっていたのだとご理解いただきたい。
まあ、どっちにしろ映画は楽しいですね。