良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『華氏911』(2004)当時も今も変わらないこと。それはブッシュはアホだということか!

 総合評価 62点  今回は公開当時に書いてあったメモから抜粋した記事になります。作品はなぜか今頃になってマイケル・ムーアの『華氏911』です。マイケル・ムーアの作品にはこの作品よりも、かなり前々から注目しておりました。  『あほで間抜けなアメリカ人』(こんなこと堂々とタイトルにつけてしまうなんてニッポンも変わりましたもんですね。)や『ボウリング・フォー・コロンバイン』なども興味深く、ずーーーッと前に見させていただきました。  そしてとうとう出てきたこの作品。共和党系の保守的な人々はただ怒り、ナイーブな日本人はこれが本当のアメリカなのかと驚いてしまったりで、けっこう話題になっておりました。僕は前者の人には「あんたらってさあー。ちっせぇーよ。」と思い、後者の人には「お前ら簡単に全部信じてんじゃないよ!」と思っていました。  これはあくまでも、あの「めがねのドラえもん」が最初から用意している結論に誘導していっているにすぎないのに、何でみんなそんなにスキャンダラスな方向、もしくは真実の姿であると信じ込もうとして、思考停止に陥ってしまうのかがとても不思議でした。  インタビューに答えている人は全員映画会社の宣伝部なのだろうかと勘繰っていたほどでした。ひとそれぞれ意見があり、それぞれの結論に結びついていくだけなのです。ムーアはあれでまた名を売ることに成功しましたし、民主党も利用できるものは何でも利用したに過ぎません。  言うなればムーアと民主党、お互いの思惑が一致したということでしょうか。ただ彼の結論は何があっても決して変わるものではないということは改めて証明されたと思います。いかがわしい権力への反感。ただ本当に恐ろしいのはクリーンイメージの宣伝が巧みなナチスのような政党でしょうか。   結論はやる前から決まっていて、映像は全てその結論を補足するだけのものです。そして僕がこの作品を評価するのは彼の一貫した態度表明です。彼は「ブッシュに片思い?」「ほんとにきらい?」これは劇場で公開されたものですが、僕は基本的に映像美にこだわるほうなので正直に言うとその面では全く評価はしません。  しかし彼の一人間としての考え方とその一貫性には「泥棒にも三分の理あり」で共感できるものがあると思います。もちろん、僕個人としては彼が全て正しいとは全く思っていません。大事なことはまずは自分の意見を持ちなさいということ、そして感情的に反論したり、意味も無く受け入れてしまう前に、他人の意見にも耳を傾けなさいと言うことなのではないでしょうか。  その二つをあの騒動のときに感じましたねえ。政府の垂れ流した都合の良い情報にマスコミが乗っかって騒ぎだすと、国民もすぐどちらか一方に流されていってしまってはまた恐い時代になっちゃいますよ。  9・11テロが起こった時にはあれだけ「イラク憎し!」と言っていた人々が今では掌を返すように「あの戦争は失敗だ!」と悪びれもせず言い放つ。あの戦争だって、さっさと終わっていたならば、アメリカ人は何食わない顔でイラクを闊歩していたであろう。  実際に僕はあのテロがあった日にはエジプトのカイロにいました。空港からホテルに着いてすぐにつけたCNNではライヴで中継されていました。周りを囲んでいたのはヨーロッパの人たちと見られる白人達とアメリカ人たちでした。  ニューヨーク・ヤンキースのキャップを被ったニューヨーカーの一団はサーティーワンのアイスクリームをバクバク食べながら、ニヤニヤしてあの光景を他人事のように見ていました。あれこそが現実のアメリカ人の姿でしょう。  外国人である僕ですら、あの悲惨な光景には目を疑いましたが、自国民であるアメリカ人がTVの向こうで何百人と死んでいってる中でも、平然とアイスを食べ続けるアメリカ人もいたのです。アホで間抜けなアメリカ人を間近で見たときにはさすがに驚きました。  さらにアホだったのが大統領でした。イラクの石油が心配なので、無理やりテロの事実をでっち上げて、国連を無視して派兵して、「トラブってるからお前らも手伝え!」と平気でわめき散らすアホな大統領とその仲間達のために、死ななくていい人が何人死んだんだろうかに思いを巡らせると憂鬱になります。  それはさておき、今回何故この作品を取り上げたかというと、亀田騒動を見ていて、この作品の公開当時を思い出したからでした。  マスコミが持ち上げるだけ持ち上げといて、利用するだけ利用しておきながら、旗色が悪くなると、いきなり掌を返したようにバッシングに回った無節操な亀田騒動とは違う騒ぎ方ではありますが、マスコミのヒステリックな姿勢という点では同じ臭いを嗅いだような気がしました。  絶頂期にあったときでも、関西人はみな亀田を擁護していたわけではありません。マスコミが作った虚像だけが一人歩きしていて、アスリートとしての実力を見て見ぬ振りをしていたのは誰あろうマスコミだったではありませんか。あれだけ歴代チャンプである輪島功一ガッツ石松が彼の実力に疑問符をつけていたのに、黙殺していました。  それがいざ彼の弟が負けるや否やすぐに手の平を返すような対応を平然と厚顔無恥にやってのける。化けの皮が剥げたのは亀田の実力ではなく、マスコミの報道姿勢と見識のなさである。最大の犠牲者はこのような幼稚な放送を我慢して見続けなければいけなかったボクシング・ファンであろう。  僕等の世代のボクシング・ファンは具志堅用高が連続防衛記録を延ばし続けていた時代を見ていたのです。その後も浜田剛、井岡弘樹六車卓也薬師寺保栄辰吉丈一郎などの日本勢のチャンプが目に浮かびます。  日本選手ばかりではなく、‘石の拳’ロベルト・デュラン、六階級?も制覇したトミー・‘ヒットマン’・ハーンズ、彼と激戦を繰り広げたミドル級の英雄‘マーヴェラス’・マーヴィン・ハグラー、伝説のチャンピオンであるマイク・タイソン、彼に耳を噛み千切られるという暴挙を受けたイベンダー・ホリフィールド、最近ではオスカー・デラホーヤなどを見てきたのです。  そんな僕等があの試合を見ていると、亀田の情けなさはもちろん、アナウンサーや放送局そのものへの情けなさが込み上げておりました。映画そのものには全く関係ないのですが、なぜか気になったので書いてみました。  ボクシング、相撲、プライドと格闘技系の人気スポーツの権威が一気に失墜してしまった悲しい一年でした。それぞれ表面上の原因は違うのでしょうが、偶然ではないような気もします。閉鎖的社会の弊害、マスコミのミスリード暴力団との癒着など現代日本が抱える病理がたまたまこれらで噴出しただけではないでしょうか。  かなり話が逸れてしまいましたが、作品自体については、「映画なんだから」「パロディなんだから」目くじら立てずに、とにかく楽しもうよと思った次第でした。気の向くままに書き散らしていったために、ぜんぜんまとまっていないので読みづらかったと思います。ご容赦ください。  華氏 911 コレクターズ・エディション
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