良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『映画はいつもワクワクさせてくれた…(2)』レンタルビデオがやって来た!ヤアヤアヤア!

 いまではどんな田舎の町でも必ずといってよいほど、どこにでもあるレンタルビデオ屋さんだが、レンタル屋が出来るまでの映画ファンを取り巻く状況はといえば、前回に記述したとおり、テレビの地上波放送の吹き替えを見るか、NHKでたまに放映される欧州映画の字幕放送を見るくらいであった。  まあ、今と違い、名画座が多く存在し、リバイバル上映も頻繁に行われていたために全く観れないということはありませんでしたが、不自由であったことは明らかで、好きなときに何度も観るというのは不可能でした。その代わり、シネコンシステムとは違い、上映された映画を朝から何度も飽きるまで観続けるという行為が許されていたので、観るごとに鑑賞ポイントを変えて、ある回はカメラ・テクニック、またある時は俳優の演技、ファッションや調度類、ストーリー中心に観るなどというような集中した観方が出来ました。  鑑賞眼を鍛えるにはこの方法がもっとも良いと思われましたが、ビジネスの前ではもろくもこのシステムは崩壊しました。大きな都市のシネコンならともかく、地方ではガラガラになったままで上映を始めるのが当たり前になっているのですから、土日以外は昔通りのやり方に戻し、映画ファンを育てるのもまた必要なのではないでしょうか。  それはともかく、映画鑑賞の仕方において、レンタルビデオの果たした役割は絶大であることを否定できる者は誰もいないでしょう。お金と暇を節約でき、良質のソフトを自宅で楽しめるというのは映画ファンの夢でもありました。それがついに叶ったのがレンタルビデオの隆盛でした。
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 レンタルビデオが出来だしたのは1984年くらいでしょうか。まだ中学生だった僕は友達と一緒にバスを何本か乗り継いで、ひとつ向こうの都市まで二時間くらいかけて、県内唯一だったレンタルビデオ屋にたどり着きました。店内に入り、店の中をゆっくり見回したとき、そこに置いてある宝の山に目を奪われました。  当時、販売ビデオの値段は異常に高く、2万円から3万円近くする映画ビデオが大半で、とても中高生に買えるような代物ではありませんでした。映画コーナーへ行って、さまざまな名画のタイトルが並んでいたのを目にしたときの驚きは今のファンには味わえないものでしょう。  まだ『七人の侍』はビデオ化されていませんでした。その理由は東宝がビデオ化せずとも、リバイバル上映時に十分に採算が取れるだけの集客を見込んでいたからでした。映画会社もまだ、新たなビジネスの可能性について懐疑的だった証でもあります。
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 一通り店内を見回した後、何本か借りることになったのですが、レンタル料金の高さに驚きました。レンタル代が一本で2000円から3000円、つまり定価の一割というのが相場だったのです。何本か借りるどころではなく、二人で一本借りれば、それでお金がなくなるという状態だったのです。そのとき借りたのはたしか渡辺典子主演の角川映画のビデオだったと思います。  しかしそれから何ヶ月かすると、まるで筍のように次から次へとレンタルビデオ屋があちこちに現れました。そのうちの半分が海賊版をレンタルしている悪徳業者でした。元手がゼロに近いダビングテープを使って、貸し出すという今では考えられない商売をしていたのです。  現在、中国での海賊版市場の隆盛が非常に大きい問題として世界をにぎわしてはおりますが、わが国だって、ほんの二十年前までは中国と変わらない状況だったわけですので、あまり目釘らを立ててもしょうがないし、おそらく彼らは何故怒られているのかさえ理解できていないのではないでしょうか。もちろん著作権は重要ですし、わが国の主力の良質メディアであるアニメなどを侵害されると知らないではすまないだろうとも思いますし、これがクリアされない限り、所詮三流国に過ぎないとも思います。  まあ、そうはいっても当時はあまりそれが違法行為であるという認識すらなく、みんな普通にそういうところでも借りていました。しかしそういうボロい商売はすぐに淘汰されるときが来ました。ツタヤがついにやってきたのです。二泊三日で500円。海賊版屋よりも安く、正規商品が出回るようになったのです。画質が悪く、縦揺れ、横揺れ、ブロックノイズが当たり前の海賊版レンタルはすぐになくなりました。  いまとなっては高い!と思ってしまいますが、1000円以上が当たり前の中での500円は価格破壊であり、正規版を大量に在庫しているツタヤがそのへんのセコいビデオ屋に負けるわけもなく、どんどん小さな町のビデオ屋(正規版をレンタルしていたお店も!)はなくなっていきました。  だいたいこれが阪神優勝の1985年から、バブル絶頂期の1988年くらいにかけて起こっていたことです。とくにバブル絶頂期には金が余っていたせいもあるでしょうが、あちこちに無名ビデオ店がありました。これはツタヤに負けたというよりも、各々の本業が左前になってしまい、運転資金が続かなくなったというのが真相でしょう。
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 またこのバブル期にはレンタルビデオのソフトもまたバブル状態であり、AVやホラーがお店の半分近くもあるようなおかしな店もありました。『うばわれた心臓』『ギニー・ピック』などもこの時代の産物でした。お金になれば何でもやってしまえという風潮の種が蒔かれたのはこの時代でしょう。昭和元禄と呼ばれたバブルははじけましたが、悪い考えだけが残りました。  清濁色々ありましたが、間違いなくこの頃に観た鑑賞数は人生中でも一二を争うのは明らかです。朝から借りてきた映画ビデオを一本見て、その足で映画館に行って二本併映の映画を観て、家に帰ってきてから残っているレンタル映画を二本観るという生活を送っていました。鑑賞数でいうと、1日2本ペースで見ていくと1ケ月で60本、掛ける12で年間700本、それの4年なので、だいたい3000本近くは見たことになります。  『風と共に去りぬ』『市民ケーン』『ローマの休日』などクラシックものでレンタル屋さんにある名だたる映画は大概見ましたし、その当時、つまり80年代後半から90年代前半の新作映画もちょこちょこ見てましたので、膨大な数にのぼるのでしょうが、正確な数は掴めていません。もっと見たかったのですが、友達が来ている時や彼女がいるときは見れないのでこのくらいの数で収まるでしょう。
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 レンタルで一番嬉しかったのはなんといっても黒澤明監督の『七人の侍』の二本組を借りたときでしょうか。お昼に借りてきて、すぐに見て、深夜まで何度も見返しました。何度見ても面白いと思ったのはこれが二度目で、最初にそういう感覚があったのは前回も紹介した『ゴッド・ファーザー』でした。小津監督の良さはまだ理解できませんでした。  アベル・ガンスの『ナポレオン』も非常に興味深く見たのを覚えています。トリプル・エクランという言葉は知りませんでしたが、なんだか独創的な画面つくりだなあ、という印象がありました。ヨーロッパ映画でいうと、フェリーニ監督の『8 1/2』を見たときの衝撃は今でも忘れられません。「なんだこりゃ?」というのと「すごいなあ!」というごちゃ混ぜの感覚でした。『道』を見たときには「こんな普通のも作れるんだ!」と思い、『魂のジュリエッタ』を見たときには「こいつはやっぱりへんだ!」とも思いました。
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 ぼくはこういう時代の中で、高校・大学時代を過ごしました。映画ファンとしてはバイトで貯めたお金で、当時の彼女と映画を観に行ったり、映画館でいちゃいちゃしていました。よって、今でもいちゃいちゃするカップルに対してはあまり怒れません。だって自分にも経験があることですので。  映画の選択っていうのは意外と難しく、余裕があるのであれば、デートで観る前に一度1人で観ておく方がさまざまなトラブルは避けられますが、なかなかそんな余裕はありませんでした。Hなシーンが多いやつや芸術的過ぎるやつはデートには向きません。アルトマン監督の『ゴッホ』を観に行ったときはとなりでOLだった彼女が爆睡してしまい、それにつられて僕も寝てしまいました。  大学のゴジラ・ファン同士だった友達と『ゴジラキングギドラ』を観に行ったときには周り10メートル四方がすべて幼稚園児という屈辱的なポジショニングをしてしまい、子どもに「なんでここにいるの?」と全部ひらがなで片付けられる状況に追い込まれました。初日に行ったらゴジラの消しゴムをもらえるという日だったのですが、子どもたちに見つかってしまい、「くれ!くれ!」とせがまれ、本当はあげたくなかったのですが、やせ我慢してあげることにしました。そのかわりに子どもがシールを取った後のビックリマン・チョコをくれました。
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 松田優作の『ブラック・レイン』を公開初日に観に行ったのも今となっては素晴らしい思い出かもしれません。この日はたしかロバート・デ・ニーロ主演の『ミッドナイト・ラン』とのはしごだったような気もするのですが、定かではありません。あと10年生きていれば、どれだけの作品に出ていたのだろうと思うと残念です。彼の子どもたちがいま映画に出演するのを観ると、なんだか保護者のような気分で観ている自分がいて、みょうに居心地が悪いときもあります。二世タレントを見るときはその親のファンだったりすると、こんな気分になるのでしょうか。  まあ、こんな感じでだらだらと見まくっていました。機会があれば、次回は社会人になってからの状況をダラダラ書いていこうと思います。
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 最後につい先日、亡くなった忌野清志郎さんへのお悔やみを申し上げます。ぼくは中学生以来のRCサクセションのファンで、ライヴにも頻繁に観に行っていました。去年の復活ライヴでの彼の映像を見たときに、なぜか気になり、いま集めないでいつ集めるんだという思いに駆られ、かつて持っていて、いまは失ってしまっていた、CD化されていないアナログ・レコードのEP盤やLPをすべて集めなおしていました。  東芝時代での『カヴァーズ』発売中止騒ぎに代表されるように、多数のレコード会社への移籍を繰り返し、ホリプロなどとも事務所問題その他で揉めたために、いまだにCD化されていない音源が数多くあり、長年のファンをもやもやさせていたRC及びキヨシロウでしたが、本人の意向をついに聞くことなく、他界してしまいました。  キヨシロウの歴史は日本のロックの歴史でもありますので、ビジネス上のゴタゴタが多々あるであろうことは重々承知してはおりますが、高い視点に立って、すべての音源がCD化されていくことを心より願います。なかでもCD化されていないことで有名な『窓の外は雪』や『サマーロマンス』はぜひともCD化を望みます。ぼくは幸いにも1985年と1986年のライヴでじかに聴いておりますし、アナログレコードも所有しております。  しかし気軽に多くのリスナーやファンに聴いてもらうにはCD化されることが一番の早道です。かつてRCのサード・アルバム『シングルマン』は発売後すぐに廃盤となりながらも、ファンの草の根運動により、自主制作を経て、ふたたび発売されるという嬉しい出来事もありました。その熱い思いを再度結集し、ビジネスの壁をぶち破って欲しい。
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