良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『タイタンの戦い』(2010)特撮は劇場に限りますが…。DVDだと伝わらない。劇場でも伝わらない?

 つい先日、隣町まで見に行った『アリス・イン・ワンダーランド』に続き、むしょうに映画が観たくなり、夜7時からの回のチケットを早めに購入し、先に食事を済ませることにして、レストランに向かいました。  サラダ・バイキングのあるハンバーグ専門店でした。味はまあまあだったのは残念でしたが、映画までの繋ぎなので仕方ない。サラダって、付け合わせとして出されるよりも、自分で色々選べるほうが楽しいし、美味しく感じます。普段あまり食べないカイワレ大根、ベビー・コーン、ルッコラなどをあえて取り、定番のポテサラやマカロニなどもついでに取っておく。  ポテサラは案外奥が深く、お店によって、味も違えば、入っているものもかなり違う。きゅうりが入っているところ、トマトが入っているところ、ゆで卵が入っているところ、キャベツが入っているところ、黒胡椒が入っているところとさまざまなバリエーションがあります。
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 粉チーズをふりかけても美味しいし、胡麻ドレッシングも結構いけます。ただ最近はシーザーサラダのほうが好きで、あまりポテサラを食べなくなりましたが、たまに食べたくなるときもあります。  『タイタンの戦い』といって思い出すのはダイナメーションで有名なレイ・ハリーハウゼンが制作に関わった、事実上の引退作品でした。はっきり言って、ハリーハウゼン版にしても、全盛期の『アルゴ探検隊の大冒険』『シンドバッド 7回目の航海』などで観たときの魅力には到底及ばず、どちらかというと影の薄い存在でしたので、これがリメイクされると聞いた時も、正直、一番特撮ファンの思い入れの少ないヤツを選んだのかなあと邪知しました。  下手にアルゴやシンドバッドに手を出すと、特撮ファンの憎悪を買うのは必定で、みんな執念深いので、それに関わったスタッフの名を他の映画のエンド・ロールで見るだけでもムカムカしてしまうかもしれません。僕もあのある意味、奇跡の実写版『デビルマン』に関わった人たちが他の映画のスタッフ・リストにあると、「この映画は大丈夫なんだろうか?」と不安になります。
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 それはともかく、ハリーハウゼンが作り出すクリーチャーたちの温かみのある動きをこよなく愛する者は数多い。カクカク動くフリッカーを揶揄する者もいますが、人間の手が掛かっているようには見えない、完成度がそこそこの無機質で平面的なCGよりも、よほど見ていて楽しい。  彼の仕事を見て、特撮の世界に足を踏み入れた者は多いでしょうし、今回のリメイクを請け負ったルイ・ルテリエ監督もハリーハウゼン信者のようです。ただそのまんま、ハリーハウゼン作品をコピーするのではなく、エッセンスを取り入れつつ、現代風には仕上げている。  今回の作品にもプーボー(機械仕掛けの梟)やペガサスが出てきたりしていて、オマージュの要素もふんだんに入れて、オールド・ファンを楽しませようとしているのは理解できます。ただそんなシーンが必要がどうかは別問題で、物語に深みが無ければ、単なるダイジェストのクリーチャー・ショーでしかなくなってしまう。
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 深みを生じさせるには主人公だけではなく、その周りの人々にも魅力あるサイド・ストーリーを盛り込まねばなりません。せめてヒロインや脇役の人に見せ場を作るべきだったと思いますが、2時間弱で壮大なギリシャ神話をベースにした物語を語るには無理がありました。  今月観た映画は『アバター』『第9地区』『アリス・イン・ワンダーランド』、そして、この『タイタンの戦い』ですが、僕を唸らせたのは『第9地区』でした。『タイタンの戦い』につきましては特撮ファン的な立場で言うと、そこそこ楽しませてくれました。大画面のスクリーンに映える映画は特撮であることを改めて認識しました。  ただし映画の作りを一つ一つ丹念に見ていくと残念な部分が非常に多い。まずは登場人物の人物描写が浅く、しかも人間が描けていない。そもそも印象に残るキャラクターが少なすぎる。ゼウス(リーアム・ニーソン)、ハデス(レイフ・ファインズ)、イオ(ジェマ・アータートン)が思い浮かぶ程度で、アンドロメダアレクサ・ダヴァロス)、ポセイドン(誰だったんだろう?)の影の薄さは尋常ではない。
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 またタイタンの戦いを謳ってはいるが、メインはアルゴスの都でのクラーケンとの戦いでした。ただ情けないことにもっとも盛り上がるのは妖女メドゥーサ(ナタリア・ヴォディアノヴァ)との戦いでも、海の大怪物クラーケンとの戦いでもなく、砂漠での大蠍との戦いなのです。  スピード感があり、巨大な蠍たちが出てくるシーンは特撮映画らしい楽しさでした。序盤でのペルセウスとの戦い以降は、砂漠の魔術師ジンの乗り物でしかない大蠍はまるで、『スターウォーズ』に登場する砂漠の民であるサンド・ピープルが巨大なロントに乗り込んでいたシーンを思い出させました。  メドゥーサの造形は絶望的で、せっかくロシアのモデルさん(ナタリア・ヴォディアノヴァ)を使っているのに美しさはなく、蛇と化した下半身の質感も作り物にしかみえず、ゴーゴンやメドゥーサが好きなぼくは大変ガッカリしてしまいました。
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 さらに陰鬱な気持ちにさせてくれたのがクラーケンで、ヤツはただやられるためだけに復活してきたようでした。登場時間にしたら、5分くらいだったのではないだろうか。全身を現した、次の瞬間にはもう石に化していました。  その様子はリングへ向かうアンドレ・ザ・ジャイアントがリング・インする手前で、スタン・ハンセンのウエスタン・ラリアットを食らい、そのままのびてしまったような呆気なさでした。  主人公を助ける戦士たちも影が薄く、最後まで誰が誰だかさっぱり分からないまま、全員がメドゥーサやカリゴスに殺されてしまいました。ゼウスはもっとも最悪で、すべての原因は彼で、たくさんの死者を出したのに、勝者のような顔でペルセウスに接する。
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 ギリシャ神話を題材に採った英雄譚だと思っていたのが、とんだ茶番に終わります。まさに自演乙としか言えませんでした。唯一の救いはテネリフェエチオピアで撮影されているために、その地の自然の美しさを知れたことでしょうか。内容そのものとは関わりはありません。
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 最後になりましたが、主人公を務めたのはサム・ワーシントンでした。彼は超話題先行作品『アバター』でも主役でしたが、この映画にも主役として出ています。最初、誰だか気づかなかったのですが、「なんか見た顔だなあ…」とボンヤリ思っていました。パンフを買って、ようやく彼だと分かった状態でした。こういう映画だけではなく、普通の人間として出てくる彼も見たい。早く人間になって欲しいですね。  この映画はもともと3Dとして製作されたものではないと聞いていましたので、今回は通常版を観に行きました。3D版を観に行った人に聞くと、なんだか白ける出来栄えだったとのことですので、これから観に行かれる方には通常版をお薦めします。  最後に一言。  ゼウスよ!自演乙! 総合評価 60点
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