良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ラスト・ハウス・オン・ザ・デッド・エンド・ストリート』(1977)史上最悪のクズ映画。酷い…。

 一般的(?)に駄目映画と言って、映画ファンの多くが思い出すのは洋画ならば『プラン9・フロム・アウター・スペース』、邦画ならば『デビルマン』でしょうか。上記の作品たちはたしかに最低の名前に相応しい出来栄えを誇っていますが、映画を作ろうという意思は感じます。  さて、このクズ映画は正味90分弱のカタマリなのですが、過激描写に満ちているにもかかわらず、眠くて眠くてどうしようもない代物でした。まあ、1977年度のショッキング・ホラーというか、擬似スナッフ・フィルムであり、しかも自主制作なので、特撮技術が稚拙なのは仕方がないとしても、作り手にどうやって、観客を怖がらせてやろうかというアイデアやホラーへのこだわりが全くないように見える。  この作品の名は『ラスト・ハウス・オン・ザ・デッド・エンド・ストリート』。六十年代のサイケデリック・バンドのアルバムのような、なんとも勿体ぶった、長ったらしいタイトルである。  こういうタイトルのついた映画は往々にして、作り手の過剰にして嫌みなアイデアが空回りしたり、自分よがりになっているものが多いが、この映画もそういう部類に入ってくるのだろうか。アメリカではマニアックなファンを獲得している伝説的な見せ物小屋的なホラーではある。
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 しかし、いくらこれがもともと自主制作の非商業的映画であったことを差し引いても、これほどの悪趣味にはなかなかお目にかかることはありません。何が酷いかというよりはすべてが酷い。ただただ監督の貧相かつ下劣極まりない心の中を具現化し、本能の赴くままにカメラを回したに過ぎない。  なにしろ出てくる人間すべてが最低で、娯楽映画ではほぼ確実にいる共感出来るキャラクターがこの映画には皆無です。フィルムそのものがカビ臭そうで、陰鬱な気分を醸成していく。  作りは1974年に公開され、大きな反響を呼んだ『スナッフ』と似ていて、前半から中盤までは無味乾燥なクズであり、後半に狂乱といえば聞こえはいいが、薬物中毒でハイな状態のニイチャンが撮った、猛烈な臭気を放つフィルムの固まりが延々と続くのみである。  オリジナルを制作し始めたのが1972年で、1973年に自主制作映画として完成しました。その後、フィルムは買い取られ、不自然なナレーションや法廷シーンなどを追加されて、1977年に公開されました。悪趣味映画の金字塔というか、グロテスクの極北に位置するフィルムで、人間の最悪な部分を映像化するリミットを超えています。  気味が悪いのは、ほぼ同時期に『ラスト・ハウス・オン・ザ・デッド・エンド・ストリート』と『スナッフ』という同じような人体を切り刻むフィルムが完成してしまったことです。これは人間の中に、こういった願望もあるのだということをフィルムを使って、いわば正当化してしまったことにある。それまでであれば、表に出て来れなかったであろう醜悪な描写が大手を振って、歩きだしてしまいました。
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 これを見た後であれば、わが国のホラー映画史上で伝説と化してしまった『ギニーピッグ2 血肉の華』ですら、よく見ていくと、製作者がショッキングなホラーを努力して作ろうとしていたのが理解できます。この『ギニーピッグ2血肉の華』にも切断と鮮血が描かれ、死体にウジが湧くシーンもあるのですが、不思議と臭気がない。  つまり演出が効いている。しかしながら、『ラスト・ハウス・オン・ザ・デッド・エンド・ストリート』には汗やカビや体臭、口臭、ヤニ臭さ、ゴミなどの通常の感覚を持つ人であれば、顔を背けたくなるような臭気が漂う。映画からは本来ならば、臭いは出てきませんが、これは臭う感覚があります。  現在、これとセットで『悪魔の凶暴パニック』『悪魔の調教師』が入ったボックスが発売されています。ウチの近所のTSUTAYAに最近カルト映画コーナーが出来て、これら3作品ともに誇らしげに、だけど一番下の端っこに陳列されていました。  さらに『怪奇!吸血人間スネーク』『ピンク・フラミンゴ』まである。ここまで揃えたのは誰の趣味なのかは不明ではありますが、色々なクズ映画を見れば、ハリウッド映画がいかに見やすく作られているかを容易に理解できます。  ただし歴史的なクズ映画にはクズなりにずば抜けている点があり、それを見たくて、またクズを探し続けているのも確かです。たまにのぞくとレンタル屋さんにも凄いのが置いてありますね。 総合評価 6点