良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』(1974)ハヌマーン映画のまさかの第二弾はライダーとの共演!

 今週ヤフオクで何気なく見つけた、この映画のタイトルは『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』、つまり『ウルトラ6兄弟と怪獣軍団(原題は『ハヌマーンと7人のウルトラマン』)』の続編でした。  権利関係の怨念もあり、おそらく円谷プロからは永久にウルトラマンとしては認められないであろうハヌマーンを前面に押し出した日タイ合作の不幸なウルトラマン映画のあとに、懲りないチャイヨーが仕掛けてきたのがこの映画だったのです。
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 しかも東映の許可をまったく取らずに仮面ライダー映画を撮ってしまったチャイヨーの権利使用についての感覚の無茶苦茶さにまずは驚かされる。後に東映に賠償金を支払うことで片を付けたようですが、どうしても後味の悪さは付きまとう。  まがりなりにもウルトラマンのときには日本側のスタッフが招かれて、演出や特撮に職人としての腕を奮いましたが、先ほど申しました通り、今回は隠れてコソコソ作ったため、無断盗用及び流用した、初代仮面ライダーからXライダーのシーンを7割方使用し、あろうことか“おやっさん”立花藤兵衛にタイ語でアフレコを付けてしまっていました。
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 主題歌にはXライダーのオープニング・テーマをタイ語に訳し、下手な歌手に歌わせています。彼は一番盛り上がる「かめ~んライダー!えっくす!えっくす!えっくすう~!」の最後のえっくすのときに音程が狂ってしまい、カッコいいこの歌を台無しにしてしまっている。  主にXライダーの怪人たちを使っているのに、主役はなぜかV3なのも微妙でした。この当時にXライダーはまだタイで放送されていなかったため、仕方なくV3を主役に持ってきたらしいのですが、真偽は分かりません。というかどうでもいい。  オープニングで掛かり、その後も何度もこの歌とともにアクション・シーンに入るのですが、調子外れなこの歌を聴く度に、体が脱力していきます。
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 このオープニングは許可を取らないで撮影しているのがすぐに分かります。5人ライダーたちは横並びでバイクを走らせるため、道路の追い越し車線にまではみ出してしまい、一番端っこにいるライダーマンは後続の車に煽られるし、どんどん抜かれていきます。  かつて、ライダーたちのバイクを追い抜いていく一般車両があったでしょうか。チンタラ走り、しまいにはバラバラのタイミングでカメラに向かって手を振る彼らを見れば、熱烈なライダー・ファンならば、涙を流して抗議するかもしれません。  盗用シーンはもともと日本のスタッフが撮影したものなのでしっかりとはしていますが、繋ぎがメチャクチャで意味不明になっています。V3に出て来たデストロンの幹部が唐突に1シーンだけ登場したり、Xライダーに出て来た怪人たちとの戦闘シーンも適当に繋がれていて、見れば見るほどワケが分からない。
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 タイで撮られた新撮のドラマ・パート及び特撮パートの出来映えが泣きそうなくらいレベルが低く、繋がりが理解できず、さらに失笑を招く。特に酷いのがご覧の通りのライダーマンで、顔がほとんど見えてしまっていて、仮面ノリダーとの差がほとんどないのが実情でした。  作品の仕上がりのレベルがあまりにも低いためか、仮面ライダーの母国である日本では一度も放送されていませんし、ビデオ化はもちろん、DVD化もされたことはありません。そのため今回入手したこのソフトの使用言語はタイ語のみであり、字幕はついていません。
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 まあ、たとえ言葉を理解できなくても、見ればおおよその見当はつきますので、特に問題はありません。フォーマットが変わっていて、ビデオでもDVDでもないVCDというアジア圏で多く使われるものでした。  普通のDVDプレイヤーかPCで再生できるとのコメントが出品者の説明欄にありましたのであまり良く考えずに落札しましたが、じつはこのフォーマットは曲者で、家にあるHDDデッキのうち、作動したのは地デジには非対応の5年位前に買った、一番古いデッキのみでした。
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 Xライダーに登場した大幹部と言えば、誰もがすぐにキング・ダークを思い出しますが、彼の特徴は黒光りするメタリックな質感と巨大なボディでした。最初にキング・ダークをカメラが捉えたとき、ぼくらが見たのはいつものキング・ダークでした。  しかし次の瞬間に出てきたのは安っぽく銀色に塗られた、人間と同じ大きさのバランスの悪いミノタウルスのようなくすんだ感じの銀色牛の着ぐるみでした。これを同一人物と言われても誰も納得できないでしょう。椅子に座っているところに手下といる様子はまるで介護されているおじいちゃんのようで、強さのかけらも感じません。
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 しかもこのキング・ダークは前作でハヌマーンによって握り潰して殺された悪党のひとりを幹部として使うために地獄から蘇らせました。この地獄シーンがとんでもない代物で、太い杭に登らされた若い全裸の女たちを槍で突きまくるという、まるで石井監督か牧口監督が撮りそうな安っぽい地獄を描いているのです。  まさか仮面ライダーで全裸の女たちに拷問するシーンが入るとは思いもしませんでした。こうして地獄から連れ戻された幹部でしたが、彼はなんにも怪人らしいコスチュームを与えられず、普通に紫の衣装を着て、ライダーたちと互角に渡り合う。彼は逆に凄いのかもしれません。
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 前作に登場した博士もキング・ダークたちに無理やりさらわれ、怪人作りに協力させられる。この偽物キング・ダークはロボットなのに若い女の生き血を啜り、地獄巡りが出来て、巨大化したり、小さくなったりします。何気にライダーよりも個としての能力を持っています。  このときに登場してくる怪人たちのクオリティがあまりにもお粗末で、ひっくり返りそうになります。半裸のムエタイの戦士のアタマに鳥やら豚やらのマスクを被せただけなのです。あまりにも酷い。いまどきの中学生の文化祭ならば、もっとましなのを作れそうです。
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 ずっと書いてきましたが、「あれっ?ハヌマーンは? 」と思った方がいるかどうかは知りませんが、彼は映画の最後の方で急に現れ、キング・ダークの攻撃によって皆殺しにされたライダーたちを蘇らせたあとにキング・ダークと戦い、なんとなく勝ってしまう。
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 ライダーたちはなんとなくハヌマーンに感謝し、なんとなくエンディングを迎えます。なんだったのだろう?100分近い大作だったはずなのだが、ずっと眠たく、ずっと集中し切れませんでした。良い所を探そうと苦労しましたが、タイの田園風景って、のどかでいいなあというくらいでした。  前作でハヌマーンにやっつけられた悪党は再びハヌマーンの手にかかり、つまり握りつぶされて、地獄に戻っていく。そこでは妙にのんびりした閻魔大王が待っていて、彼に地獄の沙汰を下します。それは打ち首で、彼の首が地獄の釜の近くに転がり、それを鬼たちが壁に飾ってエンディングを迎える。なんだか石井&牧口ワールドのような終わり方で、後味の悪さが残る。  石ノ森プロはどういう顔でこれを見たのだろうか?ぜひとも聞いてみたい。こんな酷いものがタイで普通に見られるのに、どうして仮面ノリダーはいつまで経っても見れないのだろう?
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総合評価 26点