良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『踊る大捜査線THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ』(2010)第三弾!もういいでしょう…。

 異常なまでの大ヒットを記録した前作『踊る大捜査線2レインボー・ブリッジを封鎖せよ』から七年が過ぎ、その間に主要な登場人物だった、いかりや長介が亡くなり、二本のスピンオフが製作されました。  ファン待望の第三弾ではありましたが、七年間の空白は長すぎた感もあります。事務所問題のいざこざのためか、水野美紀は早々に出演を見送られるという事態も発生しました。  彼女の穴を埋めるべく、スピンオフのドラマの主演だった内田有紀を起用し、活躍させようとしましたが、深津絵里とどこかポジションが被り、結果、ふたりとも活きていない。
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 よくよく見ていくと、随分な数の役者さんの入れ替えが行われていて、なんだか違うドラマになりつつあるのかなとも思います。ただ、もう“踊る”の本編は劇場では観ることもないのかなあと諦めていましたので、三作目に期待するファンにとっては嬉しい公開になりました。  テレビドラマが放送されていたときから見ていましたので、もう十数年以上前からの鑑賞になります。「都知事の青島と同じ!」も今となっては随分と懐かしいフレーズになりました。
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 映画の質としては第一作目の出来映えが一番良く、ニ作目に関してはド派手で楽しい作品ではありますが、リンクを狙いすぎてあざとくなってしまい、内容的には深みに欠けるきらいがありました。  まあ、なんだかんだ言っても、二本とも二回ずつ劇場まで見に行きましたし、知り合いは五回も観ています。そして今回の三作目となり、彼女は今週月曜日に見に行きました。
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 ぼくは2日遅れの昨日、ようやく時間が取れたので、この作品を観ることが出来ました。フジテレビ系列の宣伝が凄まじかったので、劇場の収容人員一杯だとめんどくさいなあと思っていましたが、平日ということも幸いし、半分程度の入りで、そんなに多くはありませんでした。まずは一安心しました。  今月は新作の公開が多く、『トイストーリー3』『借りぐらしのアリエッティ』『インセプション』なども公開されますので、スケジュール調整が面倒くさい。
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 で、肝心の新作はどうだったのだろうかというと残念ながら、すでに“踊る”の賞味期限はもうとっくに過ぎていたことに気付かされました。昔からの支持層にはどう映ったのであろうか。ぼくも一応すべての作品を見ましたが、何だか消化不良でした。“踊る”ファン以外の人にはおそらく何のアピールも出来ないでしょう。一般的な映画ファンにとっては退屈な邦画の一本という位置付けにしかならない。  演出も古臭く感じましたし、役者にどうも覇気がない。それだけ全員が七年という年齢を重ねたということなのでしょう。古今東西、刑事ドラマの特徴といえば、刑事がまずは走り回るという身体能力を誇示するシーンを思い浮かべます。またそういった従来からの湾岸署員の老いを補うために配属されたはずの小栗旬を始めとする新メンバーたちもどこか醒めていて、彼らの持つポテンシャルの半分も出ていないように見える。  小栗はもともと和久さんの甥っ子役になるはずだったのが、織田裕二の“助言”により、官僚側に回ったという噂もあったので、それが真実ならば気が乗らなかったのは仕方ない。プロなら与えられたものをちゃんとやれという意見もあるでしょうが、主演俳優の一言ですべてがひっくり返る現場など無意味に感じてもしかたない。
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 話は戻りますが、この手の刑事ドラマの肝はスピーディーに疾走する感覚だと思います。しかし今回はそういった感覚を味わえるシーンはほとんどありませんでした。ほとんどの主要な登場人物たちが新湾岸署に閉じ込められるという設定のためでもありますが、裏を返せば、この脚本にオーケーを出した段階でこうなることは分かっていたはずです。  あちこちでドタバタがあっての“踊る”だったわけですから、妙に辛気くさい青島やほとんど座ったまんまの室井を見ても、何も楽しくない。さらに致命的なのはこの二人の絡みがほとんどないことです。電話で会話するシーンとエピローグでほんの二言三言の会話をするだけでした。  簡単に侵入されたセキュリティのお粗末さ、防御システムを解除できない無能な官僚たち、なんとか開けようとして工具で奮闘する作業員の横で無意味に木の杭でガンガン扉を叩くという行為とそれを神聖化しようとする演出にはゾッとしました。この辺からはファンでも醒めた目にならざるを得ない。
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 ヤツらを解放しろというのであれば、世間を騒がしたような、もっと大物の犯罪者を解放すれば良いものをなぜに矮小な犯罪者ばかりを釈放せねばならなかったのか。これは完全に脚本の失敗です。しかも彼ら犯罪者のほとんどは精神状態がおかしくなったという理由(伊集院光)や宗教に目覚めたという理由(稲垣吾郎)で解放を拒み、結局出てくるのは小泉今日子岡村隆史のみ。  仲間、仲間と連呼する割りには一体感が欠如しているように見えました。スリー・アミーゴスの会話も笑えましたが、今回は笑いながらもどこか冷めた目で見ていました。  一作目で黒澤明監督の『天国と地獄』、ニ作目で松本清張の『砂の器』をモチーフに使い、今回は再び黒澤明監督の『生きる』を随所に使っていました。ただコメディとしてもどうも中途半端で、シリアスにしては物足りない。どこか焦点が暈けたまま撮影が進み、なんとなく公開を迎えてしまった感じでした。  『生きる』をモチーフに使っているのに、映画が生きていない。影が写っているのは青島の胸ではなく、映画そのものだったのではないだろうか。
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 映像感覚にも切れがなく、ストーリー展開も疑問符が付く。俳優陣もどこかノリが悪い。音楽も無理やりドラマチックにしようと苦労しているのがかえって痛々しい。もう多分このシリーズは役目を終えている。これ以上は製作する必要性は感じません。  テレビドラマの放送からよく見ていましたし、劇場版もすべて見に行きましたので残念ですが、これも仕方がないのでしょうし、受け入れます。関わったスタッフ全てに七年の時が流れ、状況や立場が変わってしまったということなのでしょう。  笑えたのは引越しの標語の「速い梱包」「鋭い分別」「広い新署」くらいかなあ。 総合評価 45点
踊る大捜査線 THE MOVIE [Blu-ray]
ポニーキャニオン
2010-07-21

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