良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『燃えよデブゴン』(1978)ここまで動けるとは!最初に見たときは衝撃的でした!?

 ここ数年、というか10年以上、ほとんど見かけることもなくなっていたかつてのスターであるサモ・ハン・キン・ポーを特保飲料のウーロン茶のCMで見たときはかなり懐かしく思い、また白髪に白いものが混じっている様子を寂しくも思いました。  日本では活躍している感じはありませんでしたが、香港ではどうだったのでしょうか。ヒットした作品であれば、日本でも公開されるでしょうから、あちらでも表舞台からは姿を消していたのでしょうか。ジャッキー・チェンがハリウッドに進出していたのとは好対照でどうしても比べてしまうのは気の毒かもしれません。  『燃えよデブゴン』というタイトルのインパクトが強すぎたためか、以降の彼の作品はすべて“燃えよデブゴン”シリーズにされてしまい、関係ないものもすべてこのシリーズのように扱われてしまっているのは不幸としか言いようがない。言ってみれば、ジャッキー主演の作品すべてに“~モンキー”と付くようなものです。
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 これでは知らない人から見れば、サモ・ハンはデブゴンしか出来ない俳優なんだといった偏見が付いてしまう。同じようにマイケル・ホイも“Mr.Boo”しか思い出せない。おそらくわが国の配給会社の怠慢でしょう。香港映画のビッグ・ネームといって、我々世代が思い出すのはブルース・リージャッキー・チェン、マイケル・ホイ、そしてサモ・ハン・キン・ポーでしょう。  ただ残念なことにブルース・リージャッキー・チェンの映画はほぼすべてがツタヤなどのレンタル屋さんで普通に借りられるのに対し、マイケル・ホイは“Mr.Boo”シリーズのみで、サモ・ハンにいたってはジャッキーとの共演の『五福星』『プロジェクトA』『スパルタンX』くらいしかない。  そうなのです。この作品やそのほかのデブゴン・シリーズ(?)も並んでいることは皆無なのです。大昔のVHSが残っている可能性はありますが、DVDではお見かけしたことは一度もありません。販売用のDVDもすでに廃盤になっているようで、視聴自体がとても難しくなっているようです。
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 大昔の土曜洋画劇場で、この映画を見たイメージではサモ・ハンがかなり太っていた感じだったのですが、初めて見てからほぼ30年近く経ってから、購入したビデオをあらためて見直したら、意外にスマートだったことに驚きました。印象という感覚は定かではなく、それだけで物事を語るのは危険であると思い知らされます。  彼がこんなに動けているのにも驚きました。クンフー・アクションは素早く、見せ方も良く、流れるようにクンフーを使うサモ・ハンはカッコ良かったのが意外でした。もっとドンくさく、もっとコミカルだった記憶がありましたが、これも曖昧だったということでしょう。ブルース・リーに比べれば、もちろんサモ・ハンは太っていますし、ジャッキー・チェンよりもコミカルです。  彼が不幸だったのは良い作品に出会えなかったことでしょう。かつてはジャッキー・チェンやユン・ピョウとの共演した映画が人気を博していましたが、それらは残念ながらサモ・ハンの映画ではなく、所詮はジャッキーの映画でした。彼の代表作といえるものの中で、誰もが知っているのはこの『燃えよデブゴン』しかない。
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 肝心の内容ですが、見所はクンフー・アクション・シーンくらいで、他には特に見るべきものはない。ストーリー展開は単純明快で、ギャグのセンスも古臭く、洗練とは程遠い泥臭い笑いです。ブルース・リー映画のパロディをふんだんに取り入れていて、しかもリーへの敬意は伝わってきますので、リーのファンが見ても、嫌な気持ちにはならないでしょう。  ヒットした作品ではあるが、与えたインパクトが強すぎると芸の幅を狭めてしまう。90年代以降は彼の名前を聞くことは皆無であった。そんな彼を久しぶりに見たのが烏龍茶のCMでした。頭に白いものが目立ち、淡々と仕事をこなしている彼からはコメディ・スターのオーラはすでになく、しばらくは誰なのかが分かりませんでした。  そういうこともあり、今回はこの作品を取り上げてみました。なぜこの作品の視聴が不自由になってしまったのかは定かではありませんが、ニーズがなかったのかもしれません。版権や差別描写などが原因でお蔵入りする作品はセンセーショナルに取り上げられますが、実は案外それほど多くはがないのかもしれません。DVD化されない理由のうち、もっとも合理的な解釈といえるのは販売しても資金回収が出来ないというのが正解なのでしょう。
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 ソフト化されないとどうしても事情通を自称するファンはさまざまな理由を想像し、幻の作品に祭り上げようとしますが、真の理由は恐らく金にならないからというあまりのもシンプルな理由なのでしょう。下手にDVD化して、訴訟でも起こされたときのリスクと儲けを考えて、マイナスかプラスマイナス・ゼロならば、最初から手を出さない。シンプルすぎますが、正解でしょう。 総合評価 58点