良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『トイストーリー3』(2010)シリーズ完結編にして、最高傑作。ピクサー作品中でも最高かも…。

 今日、仕事の合間を縫って、劇場に走り、観て来ました。話題の映画でもありますので、混んでいるのかなあと予想しましたが、今週ずっと降り続く雨の影響からか、かなり少なく、のんびりとした環境で見ることになりました。  『トイストーリー』が生まれてから、今年で15年になります。当初はCGアニメへの懐疑と偏見から、必ずしも好きとは言えませんでしたが、この作品に限って言えば、第一作目から第二作目、そして今回の第三作目に至るまで、すべて予想以上の出来栄えを誇り、個人的には大いに満足できる仕上がりでした。  途中に挟み込む映画の小ネタが楽しく、今回も『ミッション・インポッシブル』『スターウォーズ ジェダイの復讐』などを連想させるネタが多く、クスクスと笑いました。若い人は何故ぼくが笑っているのか不思議そうにしていましたが、彼らも数十年も映画ファンを続ければ、同じような感覚を味わえる日が来るのを楽しめることでしょう。
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 ストーリー展開は前2作と同じように結構シビアな展開を見せつつも、最後は誰もが納得できるような大団円に持っていきます。ディズニーらしいなあとも思わせますが、途中は本当にリストラや家族崩壊、時間の経過という避けられない悲しみなどが盛り込まれていて、寂しくなるシーンも多々ありますが、最後はホロりとさせてくれるとても温かい映画になっています。  オモチャと人間の別れという今までのテーマだけではなく、人間同士の中でも家族の別離がしっかりと描かれていて、重層的な作りになっていて、単なる子供向けアニメの範疇にはない。ディズニーとピクサーのこの映画に懸ける思いが伝わってくるようでした。  マイナス点としてはこれは最初から3Dを意識して作られたとのことだったのですが、観ていた時の印象としてはあまり3Dという効果は必要ないのではないかというものでした。あまりくどくないというか、普通にフィルム上映の従来型の映画として観ても十分であり、わざわざ高価な3D上映にこだわる必要性はなさそうです。
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 迷われるのであれば、3Dがたとえば混雑していて、2D上映が空席があるとすれば、2Dで十分であるということです。『アバター』のときのように、それでなければ価値が半減するという類の作品での使用ではありません。  眼鏡が煩わしいという映画ファンならば、なおのこと、3Dに拘るよりはおなじみのキャラクターたちの最後の桧舞台を楽しんだ方がより楽しく過ごせます。最初の5分間くらいに、ディズニー製作の短編映画が流れるのもミソで、『デイ&ナイト』というタイトルが付けられていて、映画創成期のシリアルのようで、楽しく観ました。  幼いアンディの想像の世界に出てくる、ブタの宇宙船がとくに可愛らしく、ほのぼのとした気分にさせてくれました。 とてもよく出来た映画で、多くの見せ場があります。
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 そのなかでも、一番印象的なシーンとしては後半さまざまな困難を乗り越え、ようやく保育園を抜け出したにもかかわらず、ゴミ処理場の焼却炉の業火へまさに落ち込んで行こうとする刹那を挙げます。  ウッディ、ジェシー、バズ、レックス、ブルズ・アイ、ポテト・ヘッド夫妻らの苦楽をともに乗り越えてきたはずのお馴染みの仲間たちがついに死を悟り、皆が手を繋ぎながら、粛々と運命を受け入れようとする姿にジーンときてしまいました。  最後まで諦めないというのはアメリカ人的なメンタリティだったと思っていましたが、ついにこの国にも諦観という成熟した概念が生まれたということなのでしょうか。もちろん絶体絶命の危機は第2弾から登場している3つ目のピザ・チェーンのおまけのエイリアンたちの最も得意とするクレーン操作によって切り抜けることになりますが、このシーンとその前にある悪質なテディベアの裏切りのくだりがあるとないでは映画の印象の強さと深みがまるで変わってきます。
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  そして、そこまでしてアンディのもとへ帰ってきたオモチャたちに待ち受ける運命には多くの観客と自分もかつて経験してきたさまざまな別れを思い出しました。大人に成長したアンディの家の屋根裏で、埃にまみれて余生を過ごすよりも、オモチャを大切にしてくれる新しい少女ボニーのもとで新しい人生を送るほうがはるかにオモチャにとっては有意義である。  モノを大切にしようということ、そして別れと出会いを受け入れるということはこの作品群の大きなテーマのひとつであったが、ここでも完結編だからといって、センチメンタルに甘めに演出することなく、ビター・スイートに仕上げていました。冒頭で成長したアンディによって仕分けされる運命となったオモチャたちの悲しみの顔は絶望的でした。  オモチャだけに限らず、大学に行くとき、社会人になるときにぼくらは多くの別れを経験しますが、友人を選別する時期でもあります。ずっと付き合いたいと思う友人もいれば、そうでない者もいる。住む場所が遠くに離れるために自然に疎遠になる者、それまで付き合ったこともなかったが、大学や会社が一緒になる者とそれぞれです。
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 それはさておいて、オモチャ仲間を裏切って、自分だけが助かろうとしたテディベアに待ち受ける運命は苛烈な磔でしたが、これは裏切りの代償であり、誰でもない自らが求めた結果に過ぎない。物語を通して、このテディベアは悪役として描かれるが、多くの捨てられたオモチャたちのアイコンが彼の存在なのではないだろうか。  幸せなオモチャ・ライフを送ったモノと不幸なそれを送らざるを得なかったモノとの差がひとつひとつの行動に現れるのであるが、このテディベアはまるでアナキン・スカイウォーカーを彷彿とさせる。倒され方もパルパティン皇帝に似ているのがご愛嬌でした。
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 大事にしてあげないとアナタのオモチャも不幸で可哀相な余生を送ることになりますよという教訓にも聞こえます。モノに例えてはいますが、人間関係そのものを描いています。彼を助けて、裏切られたウッディたちは復讐するために彼を探すことすらなく、無関心というもっとも友情からかけ離れた態度を示し、テディベアの存在を気にも留めずにアンディの家を目指す。  人には親切にすべきである。しかし通じない相手には悪口など言わずに放っておいて、自分の人生を前向きに進んで行く。大人の対応であり、他人に裏切られたと思うときの正しい行動をしている。  子供向けアニメ作品だと高をくくっていると足元をすくわれる作品です。大人こそ観るべき映画がこのトイストーリー・シリーズではないでしょうか。食わず嫌いの方に観てほしい。ジャンル映画をバカにしていると視野が狭くなってしまうので、映画ファンを自認するなら、その目で確かめるべきでしょう。  総合評価 90点
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