良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『素敵な人生のはじめ方』(2006)なぜか未公開だった、モーガン・フリーマン製作&主演の佳作。

 最近の映画にありがちな派手さやドラマチックなストーリーとは無縁だが、枯れて落ち着いた大人の雰囲気を持っている希少なハリウッド映画スターであるモーガン・フリーマンが製作と主演を務めたのがこの『素敵な人生のはじめ方』でした。  先日、彼は離婚したばかりなので、実像と映像世界には隔たりがあるのは当然ですが、彼が演じると真実味が出てくるのは人間味が溢れているからでしょうか。
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 さて、わが国では残念ながら劇場未公開だったために、一般にはほとんど知られてはいない作品でしょうが、なんとなく見始めていったとしても、最後までゆったりと見ることの出来る佳作でした。  派手さはまったくありませんし、出てくる人々のうちで、いわゆるカッコいい人は皆無で、どこにでもいそうなルックスの人々ばかりを配役しています。
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 主役は黒人俳優であるモーガン・フリーマン、ヒロインのスカーレットを演じたパス・ヴェガはスペイン系であまり有名とはいえない女優、さらに映画の主な舞台であるスーパーの従業員の大半がヒスパニックやインド系の人々で、彼らの多くは英語をしゃべれない。  ロード・ムービー的な展開となる後半では、彼女の車で移動中に、目的地への道を聞いたときも、店の中にいたのは中国人という状況で、英語が通じないのです。
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 つまり大半のキャラクターはマイノリティで、非英語圏の出でした。広大なアメリカ、移民を受け入れてきたアメリカではすでに共通語であるはずの英語が通じないという状況にあるのはまるでバベルの塔のようで、作中ではシニカルな笑いにしてはいましたが、なんだか不気味に感じました。  まあ全体的に見ていくと、言葉ではなく、人間としての優しさや心の強さの大切さを淡々と訴えかけてくる内容なので、抵抗感は少なく、素直な気持ちで楽しむべき作品でしょう。モーガン・フリーマンの設定はハリウッド映画俳優ではありますが、スランプ気味で何年もの間、何も出ていないという状況の役柄でした。
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 浮き世離れしながらも、肝心な部分を失ってはいないという役柄は彼そのものを表しているようでした。彼が行く先々で、人々を魅了していく様子が微笑ましい。気丈に生き抜こうとするヒロインを務めたパス・ヴェガは美しく、これをきっかけにチャンスを掴んで欲しい人材です。  全体的に見ると、この映画の時間や人物を捉える感覚がなんというかゆったりとしていて、ハリウッド映画的ではなく、どちらかといえばヨーロッパ映画の味わいを楽しめた作品でした。こういうのを普段多く見たい。
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 たまたま時間があったときにこれを目当てで見ていたというわけでもなく、チャンネルをCSのシネフィル・イマジカに合わせていたら、これが始まったというだけでしたが、観終わった後に清涼感が残る素晴らしい作品となりました。  一昨年もナタリー・ポートマン主演の10分くらい泣き続けるオープニングが印象的だった『フリー・ゾーン』をシネフィルは放送しましたが、こういう作品を買い付けてくる人のセンスの良さに唸る一品でした。  ぜひともこれまで培ったセンスと人脈を活かし、一度だけ淀川長治さんの番組で放送された、幻のホラー映画といわれる『シェラデコブレの幽霊』に陽の目を当てて欲しいと願っております。 総合評価 80点
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