良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ライト・スタッフ』(1983)宇宙開発にまつわる骨太な物語と印象的な音楽の融合。

 公開当初となる1983年に、この映画のタイトル『ライト・スタッフ』を最初に目にしたときは、ライトを“RIGHT”ではなく“LIGHT”だと勘違いし、てっきり“光るヤツ”くらいの意味だと思っていましたし、宇宙飛行士を前面に押し出したポスターもあり、てっきりSF映画なのかなあと思っていました。  それから数年が経ち、大学生になったバブルの頃、乱立するレンタル・ビデオ屋さんで、この作品は二枚組のビデオであることを知り、アベル・ガンス監督の『ナポレオン』や黒澤明監督の『七人の侍』などの大作を普通に楽しんでいたのに、この映画にかんしてはなぜか面倒くさくなり、ついつい敬遠したまま月日は経ってしまい、気が付いてみれば、ぼくがこの映画をきっちりと見たのは今回が二度目なのでした。
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 それ以外にもまったく見たことがなかった訳ではなく、会社から帰ってきてからテレビをつけたら、BSやCSなどで放送していたりするのを途中から見たこともありました。チラチラ部分的に記憶が残ってはいますが、全体を通して見たことはありませんでした。  毎回覚悟を決めて見るつもりにはなるのですが、何せ3時間近くになる作品でもあり、なかなか時間が取れずに後回しになり続けていました。この映画自体も素晴らしい作品ですが、それ以上にとても強く印象に残っているのが挿入されている音楽でした。
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 とりわけ天空を駆け回るような『YEAGER´S TRUIMPH』などは今でも様々なテレビ番組やクルマのCMなどで挿入されることもしょっちゅうなので、耳にされた方も多いと思います。  ぼくはこれのサントラを買ってしまいましたし、今でもたまに聴きます。クラシックとシンセ音楽を融合させたようなビル・コンティのスコアの数々は今でも聴いていると心地よい。彼は『ロッキー』も手掛けていますが、こちらの音楽のほうがより素晴らしい。
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 ビル・コンティがほぼ丸パクリしたのがチャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35』の第一楽章に出てくるオーケストラの盛り上がり部分なのです。第一楽章は18分くらいで、中盤の7~8分のところで、あの有名な旋律が響き渡ります。エド・サリバン・ショーの模様が流れるのはファンには嬉しい。  今回見たのは何年か前にシネフィル・イマジカで放送されたヤツで、DVDの通常版である約170分のバージョンよりもさらに30分以上も長い、約200分近い最長版でした。つまり夜の9時に見始めても、終わるのは夜中の1時前 になってしまうのです。  これを見ようと思えば、夜は早く家に帰り、次の日は休みという状況を作り出す必要があります。晩御飯やお風呂などもありますので、家人の干渉を受けずに4時間を家で過ごすのはかなり難しい。『天国の門』なんかはさらに長いし、視聴にはより困難が生じることでしょう。
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 ぼくは映画は一度再生を始めたら、見終わるまで見続けるので、長いのを見るときは覚悟します。骨太な人間の葛藤や生死の境目でしか出てこないような人間の本質を見事に描いている。  今では流行らないであろう、男祭りの映画であり、汗臭い映画であるため、現在の若い映画ファンにはアピールしないのでしょうが、ゴツゴツした映画をたまには見てほしいと思える映画です。  1960年代初頭、ケネディ大統領在任中、対共産ロシアでいきり立つアメリカ政府のあまりにも人命軽視・ご都合主義・杜撰と三拍子揃った無茶な計画のもと、よくぞ大事故もなくマーキュリー計画が完遂したものだと感心します。
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 当時の政治状況、つまり冷戦やキューバ危機、そしてなによりもスプートニクガガーリンマーキュリー計画を急がせた様子がはっきりと理解できます。政治で言えば、人気のなかったジョンソン副大統領が自分の人気取りに使うために、アストロノーツの奥さんまで利用しようとして失敗する様子は生々しい。  マスコミの取材姿勢も今と同じくしつこく、節操なく、見ていてイライラしてきます。ストーリー構成としてはイェーガーを中心とした音速や高度の限界を突破するテスト・パイロットたちの葛藤、そして彼らをただ待つしかない妻たちの不安と苦しみを描き、後半は主に宇宙開発であるマーキュリー計画の実像を時系列でドキュメンタリー・タッチのドラマとして見せてくれる。  三時間をゆうに超える作品であるため、テキサスでのストリップ・ショーなど所々間延びしているように感じる部分もありますが、宇宙開発が一歩一歩少しずつ進歩していく科学であることを考えると、テンポ良く進行していく必要もないので、これはこれで良いのかもしれません。
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 前半、何度も登場していたテスト・パイロットの憩いの場であった酒場、大空に散っていったパイロットたちの写真を飾っていた酒場が火事で焼失し、何もかもなくなってしまったシーンはヒーローが大空のパイロットではなく、宇宙飛行士に変わってしまったことを象徴するようなシーンでした。  イェーガーが最後の挑戦をしたとき、見守る人は皆無で、しかも最後の機体を墜落させてしまうのも次の時代に飲み込まれようとしている自分そのもののようでした。現状を打破しようとするも結局は諦めざるを得なかった彼を消えゆくヒーローとして寂しくもカッコ良く表すには適切なシーン作りだったように思います。  つぎいつ見るかは分かりませんが、そのときはまた覚悟してから、この190分の長編を見続けるのでしょう。『テネシー・ワルツ』や『アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー』などオールディーズ系統も使われていますし、音楽が素晴らしいので、楽しく時を過ごせることでしょう。 総合評価 87点  
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2003-09-05

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