『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(2011)
来週木曜日の6月9日にはファンによる毎年恒例の人気投票である選抜総選挙の結果開票が行われるわけですが、別にこれの結果によりメンバーの一年間の立ち位置が変わるわけではない。
あくまでもグループ22枚目のシングル曲のメンバーが歌う立ち位置が決まるだけです。アンダー・ガールズ(シングルのカップリングを歌う四十位までのメンバー)に漏れても、実際にはバーターでテレビ出演とかも出来るので、死活問題とまではならない。よって大騒ぎする必要はない。
ただしメンバーにとってはリアルに現在の自分のタレントとしての人気や力量を白日の下に曝されてしまいます。十代後半や二十代前半の女の子たちにそこまで残酷な仕打ちを強いる必要はない。
また四十位までが発表されるわけですが、基本的にAKBは3チームに分かれていて、各チーム16人ずつなので、この時点で8人は発表圏外となる。
これに姉妹グループであるSKE48とNMB48の人気メンバー(おそらく40位以内には松井玲奈、松井珠理奈、秦佐和子、山本彩、高柳明音、木崎ゆりあ、矢神久美らは入ってくるでしょう。)も絡んでくるので、さらに8人近くのメンバーが発表圏外になるという恐ろしく残酷なファン投票なのです。
ですが、あくまでもコアなファンの中だけのお祭りとして見ているくらいで良いでしょうし、さすがに来年は要らないでしょう。5000枚ものシングルを購入したファンが出るなどワイドショーネタにまでなってしまうほどの状況は普通ではない。
しかも選挙といいながら、特定の人間が何千票も一人に投じるというのは異常なので、事務所の買占めを防ぐ意味でもシステムを変えるべきでしょう。
からくりがあざといので、かつてのモー娘。の恒例行事だったメンバーの卒業と同じでだんだん注目度も下がるでしょう。投票自体は公式サイトで一人一票にした方が分かり易い。
まあ、お金にはなりませんが、現状のように大手プロダクションや一部のオタクによるCD大量買い&廃棄がなくなるので、メンバー各々の本当の実力が分かってくるのではないかとも思います。
書店のビジネス関連書コーナーで長い年月に渡り、変わらぬ人気を保ち続けているピーター・ドラッカーの代表的な著書『マネジメント』からインスパイアされて書かれた小説が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』です。
もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの『マネジメント』を読んだら
映画化に当たり、その長いタイトルは分かり易く縮められて、“もしドラ”がメイン・タイトルになりました。発売は2009年でしたので、今から二年ほど前に売り出された、この小説が話題本コーナーに山積みされているのを家の近くの本屋さんで見かけた方も多いでしょう。
ドラッカーの『マネジメント』のエッセンスを取り込んだ、この楽しい小説はすぐにベストセラーとなり、先日はアニメ化され、ついに6月には実写で映画化されることになりました。今回の映画化で主役を張るのはAKB48のなかでも総選挙の一位二位を大島優子と争う前田敦子で、同じくAKBの峯岸みなみも出演しています。
両者ともまったく売れていなかった時代を経験してきた第一期メンバーでもありますので、今の露出の多さと忙
しさには感慨深いことでしょう。さてこの作品はそもそも映画化するのに相応しいのでしょうか。
内容はドラッカーの『マネジメント』をストーリー展開の軸に使いながら、弱小野球部を甲子園大会まで導くという荒唐無稽な物語です。すべてがドラッカーの記した名言通りに、とはいっても言葉尻を捕らえて都合良く解釈しているだけでもある。
中盤以降、あまりにもすべてが望む通りになっていく予定調和な展開には現実味が薄く感じますが、青春時代にアクティブな行動をするための信念を確固たるものにするバイブルをロングセラーのスタンダードな経営書に設定する発想は機能している。
大人と呼ばれる人たちは十代の多感な子どもたちに向けて、何が大切な価値である、進むべき道であると自信を持って言えない時代になっている。
正解がどうかは分かりかねますが、それへの答えを提示している点が興味深い。ドラッカーが実社会の生活にピッタリと合っているかどうかなどはなから関係はない。なぜならば、これはフィクションなのです。また決して、お堅く有り難いビジネス書などではなく、あくまでも楽しい小説です。
無粋にこれでドラッカーが解った気になるなと意見する人もいるようですが、普通に読めば、かつて筒井康隆が書いた『文学部唯野教授』と同じく虚構であるとすぐに理解できます。ですから、この小説の楽しさを理解できない人は心に余裕がないのでしょう。
主題歌はAKB48のシングル『Everyday、カチューシャ』ですので、かなりのタイアップです。もともと作者は秋元康と親交があり、キャラクターのモデルもAKBメンバーを参考にしたとのことを小説のあとがきでも記していました。
映画の出来は思っていたよりもきちんとしていて、どうやって入れるのかと不安に思っていた『Everyday、カチューシャ』もエンディングのスタッフ・ロールでかかっていました。
無理やりに本編に入れようとしても作品の内容に合わないし、映画化とタイアップが決まった際もどう挿入するのかに興味がありました。そういう意味では前田敦子のゆったりしたテンポの初ソロ『FLOWER』のみがかかるに留めて、シングルナンバーをエンディングに回したのは作品を崩さないためにも正解でした。
前田敦子は『Q10』で主演したりしていましたので無難にクールに役をこなしていました。彼女はだんだん体つきや顔つきがシャープになってきています。露出があるわけではないので定かではありませんが、筋肉が強化されているのは明らかなので、おそらく普段からトレーニングをしているのでしょう。
共演しているメンバーの峯岸みなみが彼女を追いかけるシーンはまさに現実そのもののようで感慨深い。ともに第一期メンバーであるふたりが映画に登場しているのはたまたまなのでしょうが、女優ではないふたりが作品を壊すことなく、登場人物を成立させていることの意味は大きく、さらなるオファーが来そうな感じです。
本日の初回上映時、つまり公開初日の一回目でしたが、5割くらいと客入りはイマイチで『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』に取られているのかなあとも思いました。ただ来ている客は結構ノリがよく、笑いを取ろうとしているシーンにはしっかりとレスしていました。
カーネルおじさんみたいなドラッカーのディスプレーに笑い、そっくりさんがしゃべりだしたら笑うなど、ニコニコしながら観ている人が多く、洒落っ気のあるシーンや相手チームの高校生役の人がどう見てもオッサンであることに突っ込みながら大笑いして、思わず数人が「オッサンやんけ!」と突っ込んでいました。それについて連れとヒソヒソ会話をしている人もいました。
ノリが関西のそれでした。お菓子食べまくりの人もたくさんいて、普段なら激怒する環境でしたが、ヨーロッパ映画ではなく、邦画のアイドル主演作ということもあり、あまり気になりませんでした。
映画と原作の違いがよく映画化された際にゴチャゴチャ言われますが、この作品はほぼ原作どおりに映画化されているので原作ファンも騒がないでしょう。時間の経過を表すのに冬場はマフラーやコート、夏場にかけてはカタツムリのショットを挿入している点はスマートでした。
反対に不必要に思えたのは字幕でドラッカーの言葉をインポーズしてしまったことと前田敦子が本屋で『マネジメント』を買うときの石塚と青木さやかとの絡みでした。つまらないテレビドラマ的な演出は時間の無駄でしかない。
これを観るのがおそらくドラッカーなど知らないどころではない読書すらしないようなアイドル・ファンが多数押しかけることを想定した上での判断なのでしょうが、なんでも分かりやすくするのはかえって不親切でしょうし、読んでいる人には画面が汚れているとしか思えません。
映画を観ていて思い出したのは大昔に見た『がんばれ!ベアーズ』でした。どちらも弱小チームが強豪に育っていくまでを描いたもので、この作品も悲しいシーンがあるものの基本的に明るい青春映画ですので、嫌な感じを持つ人はいないでしょう。
真の原作であるドラッカーの労作『マネジメント』を読むきっかけになれば一番良いのではないかと思います。最初はとっつきにくいかもしれませんが、人間関係や部活や組織を有機的に動かすための指針に満ちている本ですし、自分が間違っている方向に進まないようにする羅針盤になるでしょう。
最後に一言。
がんばれ、ゆきりん!
あっちゃん、ごめんなさい。
総合評価 65点
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