良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『影狩り』(1972)ずっとお蔵入りしていた、石原裕次郎の幻の時代劇がCSで放送されました。

 美空ひばりと並んで、戦後最大のスターだった石原裕次郎が主演した時代劇映画『影狩り』は残念ながら日本国内ではビデオ時代を含めて、未だにソフト化されていない作品の一つです。  しかしながら、同じくソフト化されていない『黒部の太陽』とは事情が違い、海外ではDVDが販売されています。いつもながら思うのは、本来ニーズが多いはずの自国では販売が無理なのに外国で普通に販売されている状況に首を傾げます。  スタンリー・キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』も暴力的で過激な内容が災いし、監督が住んでいたイギリスでは長い間ずっと放送禁止及び上映禁止で、なかなか公に見ることがかなわなかったようです。
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 キューブリックのこの作品は欧州他国では普通に販売されていたり、上映されていたので、実際にはマニアはドイツなどからビデオを取り寄せていたらしく、あまり視聴には困らなかったようです。逆もあり、ドイツ国内では未だにリーフェンシュタールの『意志の勝利』は放送禁止になっていますが、わが国ではDVDが発売されています。  この作品に戻りますと、5月にはこの作品が、そして6月には続編となる『影狩り ほえろ大砲』がCSで無事にオンエアされました。災害や事件など諸般の事情により、放送直前までどうなるかがまったく分からないのがCSなので多少ヒヤヒヤしましたが、とりあえず録画も完了しましたのでホッとしました。  『ゴルゴ13』の作者であるさいとう・たかおの原作なので、当然のようにこの作品も劇画チックで荒唐無稽な仕上がりになっています。エンターテインメント性があり、マカロニ・ウェスタン的なスプラッター描写もふんだんに盛り込まれている。まるで東映ヤクザ映画のように血しぶきが乱れ飛び、首がたくさん刈られていきます。
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 暗殺や諜報活動のような陽の当たる場所に出てこない人々のお話を描くので、どうしても全体的に暗い色調で展開します。また裕次郎もかなりの髭面で、黒髭危機一髪のような顔にメイクされていて、一見すると誰だか分からなくなっていますが、さすがの存在感は健在で画面を占領するようなオーラを堪能できます。  キラキラするような存在感ではなく、死の天使のような役柄なので、国民的スターとしてのカッコいいイメージの彼の熱心なファンからすると多少イライラしてしまうかもしれません。この作品がずっとお蔵入りしていた理由としては時代劇特有の罵倒や軽口の言い回しや当時は何気なく使っていたセリフなどの描写が現在の基準にそぐわないのでしょうか。  実際に見た感じではどこが悪いのかがさっぱり分かりませんし、普通に商品化してもさしたる問題がないようにも思えます。痛快でスピーディな展開ですし、上映時間も80分少々なので飽きることなく楽しめるでしょう。  派手なアクション、当時としては強烈なスプラッター描写、お色気シーンや笑いの要素も多く、見ていて十分に楽しめる内容です。問題点は短い時間でまとめようとした弊害があり、それは説明的台詞の多さです。それでも石原裕次郎成田三樹夫内田良平浅丘ルリ子らは魅力的で活き活きしています。
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 封印が続いている理由についてですが、隠せば差別が無くなるわけではありません。放送局や映画会社からすれば、余計なトラブルを抱え込むよりましという判断なのでしょう。  作風は時代劇、スパイ物、マカロニ・ウエスタンを掛け合わせたような映画となっていますので、細かいことをごちゃごちゃ言わずに楽しめば良いでしょう。  先ほども書いたように共演は内田良平成田三樹夫で二人とも良い味を出しています。ただ惜しむらくは勝新太郎が主演していたならば、もっと違った評価と待遇を受けていたのは間違いなさそうです。もっともそう言いつつも、上記の主演級の俳優さんは3人全員がすでに鬼籍に入っているのは寂しい。  時代劇というジャンルは現在の堅苦しく、常に放送コードにビクビクしているように見える映画会社には扱い難い対象になっているのかもしれません。
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 一方でそういった言葉遣いや表現によって傷つく人がいるのならば、オブラートに包み込むようなヌルい作品になってしまうのも仕方ないとも感じています。  男尊女卑の思想が当たり前だった時代の話を映画化するのに女に弱みを見せて、優しさや甘えを表現したり、将軍が女だったなどという馬鹿げた脚本が映画化されているのはどうなのだろう。  国営放送の時代劇の主役が女ばかりになるに至ってはいくら世の流れとはいえあまりにも情けない。まあ、そんな作品に見る価値があるかどうかは分かりませんし、見たくもありません。  今年見た大河ドラマで酷かったのはお江が生まれたときに戦いが止んだというシーン…。  そんなアホな! 総合評価 75点
石原 裕次郎:影狩り/残酷な夜明け
株式会社ミュージックグリッド
石原 裕次郎

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