良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ』(1976)ロック・ファンならば一度は見てよ!見たら分かるさ!

 イギリスが生んだ伝説のバンド、レッド・ツェッペリンのライヴ・アルバム『レッド・ツェッペリン 永遠の詩(狂熱のライヴ)』をはじめて聴いたのは中学生の頃でした。  地元の大きなレコード屋さんに置いてあった、このアルバムは二枚組で四千円近くと学生にとっては高価な品物であり、新品を買うのは難しく、かといって友達に借りるのではなく、自分のものとして欲しかったぼくは中古レコード屋さん巡りをして、この二枚組を手に入れました。
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 当時の音楽雑誌ミュージック・ライフか、レコードのライナー・ノーツを読んでいてだったかは覚えていませんが、じつはこのアルバムがサントラ盤であり、映画も存在していることを知りました。  映画『レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ』を最初に見たのは数年後のレンタル・ビデオで、高校に入ってからでしたので、個人的にはこのタイトルに関してはライヴ盤レコードの印象が強かった。映画は“狂熱のライヴ”になっているが、レコードに愛着があるぼくには“永遠の詩”のほうがしっくりとくる。
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 公式作品では『Communication Breakdown』などのミュージック・クリップを除いて唯一といえる、動くレッド・ツェッペリンを見られるのはこれだけでした。ただしこの映画をじっと見ていると、ジミー・ペイジのギター・ソロのシーンなどで出ている音と触れているフレットとストロークの動きがどうも合っていないような気もします。  まあ、そういった細かいことをごちゃごちゃ言わずに、心を解放して、ZEP唯一の映像教典をじっくりと堪能していた方が良いのでしょう。ライヴ・シーンだけで十分だと思うのですが、訳の分からないショート・ドラマがあちこちに挿入されているのが難点です。
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 ライヴ会場であるMSG周辺での警官や警備員とのいざこざ、興奮しきってトラブルを起こしたファンを強制退去させるシーン、海賊版ポスターを売るチンピラ、メンバーを待ち受けるフォトグラファー、山師の巨漢マネージャーのピーター・グラントのギャラ持ち逃げへの対応、空港への移動などあまり見ることの出来ないシーンもたくさん収録されているのもファンとしては楽しい。  ぼくは中学生時代からビートルズが大好きで、多くのレコードを買い漁りましたが、レッド・ツェッペリンも同様で、ZEPのレコード盤『Ⅰ』『Ⅱ』『Ⅲ』『Ⅳ』『プレゼンス』を長いこと聴いていて、『ROCK AND ROLL』『MOBY DICK』『BLACK DOG』『STAIRWAY TO HEAVEN』『WHOLE LOTTA LOVE』の印象が特に強かったため、ビデオで最初に見たときに、ロバート・プラントの声があまりにも弱々しかったのにガッカリしました。
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 ただそれよりも、この映画での最大の不満は『移民の歌』が収録されていないことです。ぼくら世代のファンならば、もちろんZEPが好きで、この曲に出会った方も多いでしょうが、プロレス・ファンでもあったぼくは超獣・ブルーザー・ブロディの入場テーマだったこのナンバーの迫力に魅力を感じました。  特にブロディが全日から新日に戦場を移した最初の登場シーンで、このナンバーの頭にベートーベンの『運命』の「ジャジャジャジャーン!」が足されて、そのあとにジミー・ペイジのギターがイントロを奏でるミックスを聴いたときにはかなり興奮したのを覚えています。
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 プロレス会場にもよく行っていましたが、ブロディとハンセン、タイガー・ジェット・シンとブッチャー、そして前田日明はメチャメチャ怖くて、触りに行くものの逃げ帰るということを繰り返していました。藤波や長州にはしょっちゅう触りに行きましたし、馬場さんと猪木さんとは握手もしてもらいました。今となっては良い思い出です。   話を戻します。バンドのツー・トップのうち、ロバート・プラントはオープニングでパッとしませんでした。それとは反対に脇役にしか見られていなかったジョン・ポール・ジョーンズのブンブン唸るベースとジョン・ボンゾ・ボーナムの叩き出す驚異的な存在感を持つドラムスに圧倒されていきました。
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 このリズム隊がいてこそ、はじめてZEPスタイルの音が出来上がるのだと思い知らされます。もちろんジミー・ペイジのギター・テクニックは冴え渡り、バイオリンの弓を使用する奏法に歓喜し、ダブル・ネックのギターを自在に操るさまに酔いしれ、テルミンを炸裂させる音楽への幅広い柔軟性に感心させられる。  またオープニングではあまり良いところがなかったロバート・プラントも後半にはエンジンが掛かってきて、良い雰囲気になっていきます。ラストの『胸いっぱいの愛を』の最後の「Loooooove!」はさすがの迫力でした。
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 セット・リストは以下の通り。 1  Rock And Roll  デジタル化されているのだが、どうもヴォーカルが弱すぎる。ロバート・プラントの声量が小さいような気がします。4枚目のアルバム『IV』に収録されています。反対にこのナンバーではジョン・ポール・ジョーンズとジョン・ボンゾ・ボーナムのリズム隊がバンドを引っ張っていたのがよく分かります。 2  Black Dog  同じくロックの名盤『IV』に入っているグルーヴが心地よい最強ロック・ナンバーで個人的には好きな曲のベスト3に常に位置しています。 3  Since I've been Loving You  メロディアスで美しいスローなナンバーでライブ中、興奮しきった観客をいったんクール・ダウンさせるにはとても最適なナンバーです。ライブ・テイクのため、かなり長く演奏されています。
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4  No Quarter  三曲目から七曲目までは比較的緩やかなナンバーが続きます。そのうち『No Quarter』から『The Rain Song』までの3曲は1973年のMSGライヴ当時の最新アルバムだった『聖なる館』収録のナンバー群で詩的なメロディーはハード・ロックの範疇を超えていて、ZEPがさらなる高みに向かっていたことを示す。 5  The Song Remains The Same  “永遠の詩”という邦題が付けられているナンバーで、ツェッペリンの特徴でもあるライヴでの異常なまでのソロ・パート(プログレの即興演奏みたい。)の長さを誇る。彼らの悪口を言う友人は「終わるまで何日かかるんだ?」と言って、怒っていました。ヤードバーズは好きなヤツでした。レコードのタイトルは“永遠の詩”だったので、映画タイトルよりもこっちの方が好きです。
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6  The Rain Song  『聖なる館』からのナンバーで、一連の流れで演奏される3曲はクラシックのシンフォニーを聴くような感覚です。 7  Dazed and Confused  記念すべき彼らのファースト・アルバムからの収録です。個人的にはファーストでは『Communication Breakdown』や『Goodtimes Badtimes』なども聴きたかった。 8  Stairway to Heaven  彼らの代表的な楽曲で、1970年代のロックでも歴史的な価値のあるナンバーです。ロック・ファンでこれを知らないという人はいないでしょう。前半部のアコースティック・ギター、中盤から後半に唸ってくるエレキ・ギターとも心地よい。人によっては全部をアコースティック・ギターで聴きたかったという人もいますが、商業的には曲を盛り上げるためにもエレキ・ギターは必要だったと思います。ただしライブのなかでのアコギだけのプレーは大いに盛り上がるでしょう。
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9  Moby Dick   ライヴ・アルバムを聴いたときにもっとも衝撃的だったのはボンゾのドラム・ソロだけで10分間を持たせてしまったこのナンバーです。彼のドラムの威圧感は凄まじく、数万人も入っているマジソン・スクエア・ガーデンの観客を黙らせ、興奮させていく彼のプレーは必見ですし、じつは最大の見所はここなのではないかと思っています。 10 Heartbreaker  むかしバンドをやっていた友人がこれのフレーズを彼らのバンドのセッションでやってみたところ、誰も反応できずにガッカリしたとぼやいていたのを思い出しました。大昔に買ったレコードにはこのナンバーは入っていなかったのではないか? 11 Whole Lotta Love  邦題が『胸いっぱいの愛を』というロマンチックなタイトルで、なんか買うときに恥ずかしい気持ちでシングル盤を買い、レコード屋さんをあとにしてから、もうすでに30年近くが経ちます。  ライヴ・シーンが終わってから、会場を後にするメンバー映像のバックで最後に再びスタジオ・テイクの『天国への階段』がかかります。最初の数分は映像がありますが、残りは暗転したまま最後のロバート・プラントの「And She’s Buying A Stairway to Heaven.」のヴォーカルで閉めるまで流れます。
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 ライヴは1973年でこのときはまだ1976年の『プレゼンス』は発売前でしたので仕方ないのですが、もっともお気に入りのナンバーの『アキレス最後の戦い』が聴けなかったのは残念です。このナンバーは構成、迫力、そして彼らの魅力がいっぱいに詰まっていて、今でもCD-Rに焼いたのを聴いています。  彼ら以降のバンドはいまだに彼らの水準を超えていないように思えます。ロック界最強のユニットがレッド・ツェッペリンであり、誰が欠けてもZEPサウンドにはならない。その証拠にジョン・ボンゾ・ボーナムが不幸な事故で死去してからは残ったメンバーたちは抜け殻のようになってしまいました。ロバート・プラントはソロとしてのキャリアを築いていきましたが、ZEP時代の煌きはない。  でも動いている彼を見るだけでも嬉しい気持ちがあるのも確かです。  総合評価 75点