良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『怪獣ゴルゴ』(1959)なかなか見ることの叶わなかった伝説の特撮怪獣映画!

 1950年代の特撮映画といえば、日本の『ゴジラ』(1954)、ハリーハウゼンの『原子怪獣現わる』(1953)というあまりにも有名な怪獣映画が二つあります。その陰に隠れてしまっているのは否定できないものの、今回の『怪獣ゴルゴ』もまた長い間に渡り、特撮ファンの間では傑作として語り継がれている作品のひとつです。  その伝説の怪獣映画がついに昨年DVD化されました。見たい気はあったのですが、グズグズしているうちに半年以上経ってしまいました。数ヶ月振りにTSUTAYAに行ってみると、なんとこの映画『怪獣ゴルゴ』のタイトルがカルト映画新入荷の棚に並んでいたのです。
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 50年代映画でしたが、基本的にこのジャンルは低予算が多く、モノクロだと思っていたのがなんとカラー映画だったのも驚きました。さすがに今の目で見ると、合成画面に粗を見つけてしまいますが、五十年代の特撮映画であることを考えると、かなり頑張っています。  またこの作品の特色としてはモデル撮影が多い海外の特撮映画であるのにこの作品はゴジラのように着ぐるみを使用しての制作であることでしょうか。プロットは『大巨獣ガッパ』(1967年度製作なので、ガッパがパクッた?)を思い出させますし、都市破壊シークエンスは第一作目の『ゴジラ』にかなり似ています。
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 ゴルゴがアイルランドの島を踏み潰し、ロンドンの中心部を我が物顔で破壊していくシーンはとてもリアルに表現されています。何がリアルなのかというと、逃げ惑う住民たちが容赦なく、ゴルゴの破壊していくしていくビルや地下鉄の瓦礫に呑み込まれていくシーンが延々と続いていくのです。  ビルの合間を逃げ惑う住民が映し出された後にそのビルの壁面が崩れていくわけですから、当然彼らはみな下敷きになってしまったということになります。この辺の処理は日本の特撮は上手いのですが、この映画はグシャっという音が聴こえてきそうな感じに仕上がっています。
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 アメリカや日本の特撮映画ではこういったシーンはモンタージュで表現されることが多いが、さすがはイギリスだなあと妙に感心して、画面を見ていました。  イギリス海軍や陸軍とゴルゴの戦いもあるのですが、簡単に突破されていく軍隊の無力さも際立っています。本来、対怪獣兵器など都合良く用意されている訳がないので、あっさりと突破されるというのも頷けます。
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 せいぜい用意出来たのはゴルゴがやって来るであろう進路の電力を最大にして感電させることくらいでした。核兵器をしようするかどうかで迷うのも当時、所持していたのかどうかは知りませんが、核保有国だけにリアルに映る。  見せ物にしようとして失敗し、大暴れされるというプロットは『キングコング』に類似しているし、『ゴジラ』『原子怪獣現わる』の匂いもしますが、十分に楽しめる内容です。ビッグベンやタワー・ブリッジがグシャグシャになってしまうロンドン破壊シーンは特撮ファンならば必見です。
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 問題は子ゴルゴと親ゴルゴのデザインでしょうか。あまりカッコいいとは言えないルックスなのとどこかモサモサしている印象があるので、そこの好き嫌いで評価が変わってきてしまうかもしれません。  また、特撮映画というのはその作品をはじめて見た年齢によっても大きく印象が違ってくるというのも知りました。もし、ゴルゴとの出会いが幼稚園児だったり、小学生の頃だったら、受けたインパクトは比べものにならないくらい大きかったのは明らかでしょう。
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 もちろんこの作品のレベルはかなり高い部類であるのは見れば分かりますが、童心に返って、無心に作品世界に入り込んで感情移入できるかと言われれば、正直四十歳を過ぎるとつらい。30年前に見たかった映画です。  上映時間が70分程度とコンパクトなので、余計なシーンがなく子供でも集中して見ていられる長さにまとめられている。終わり方もクールで、何も解決しない感じで良い。街の後片付けや負傷者の治療が大変だろうなあと思いつつ、DVDをプレイヤーから取り出しました。
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総合評価 72点