良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『キラー・アンツ/殺人蟻軍団・リゾートホテル大襲撃』(1977)なんと出演者は砂糖水を塗っていた…

 この作品は劇場未公開のテレビ向けのフィルムで、いわゆるテレ・フィーチャーという括りになります。スピルバーグの『激突!』ももともとはテレビ映画として製作されたことを考えると一概に安かろう、悪かろうと馬鹿にはできない。  わが国の日活ロマンポルノでも制約が少なく、比較的自由に撮れた若い監督と同じように、テレ・フィーチャーも低予算でアイデアを試す良い機会だったはずです。
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 予算が少ない中ですから、たいがいのモノの出来上がりは微妙な感じになってはいますが、たまにヒットがあるので、小中学生の頃は東京12チャンネルを、そして関西に戻ってきてからは京都テレビの映画枠を小まめにチェックしていました。  ソフトが慢性的に不足している現在とは違い、テレビのチャンネルも放送時間もそんなに多くないはずではありますが、70年代に製作された、これらのテレビ映画は他所から映画を借りてくるよりも、安上がりに出費を抑えようのが目的で、大量に生み出されていきます。
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 ゴチャゴチャと権利問題や契約期間で揉めるよりも、最初から自前でちゃちゃっと製作すれば、鬱陶しい問題が激減してきます。ただし自前製作のマイナス面は失敗作を世に送り出してしまうと映画ファンだけではなく、業界の笑い者になってしまうリスク、そして費用対効果の問題が必ず生まれてきます。  製作部と経理部の仁義なき戦いになり、足の引っ張り合いが起こります。それでも数多くのテレ・フィーチャーが製作され、ぼくらの国にも玉石混合であまたの安い(見た目、役者、音楽、ストーリーなど。)作品が東京12チャンネル京都テレビに落ちてきました。
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 『キラー・アンツ』もそのなかの一本で、世間一般の評価はない(たぶんみんなは覚えていない?)か、かなり低いようなのですが、コンパクトにまとまっていて、個人的には見やすい作品です。  使われなくなった排水口に作った巣を破壊された蟻たちが次なる棲息場所に選んだのが海辺のクラシックなリゾート・ホテルでした。使われなくなった排水口の先がホテルに繋がっているという説明があるのですが、料理人は普通に流しから水を流しているのは何故だろう。
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 ホテルを支配していく過程で数人が犠牲になるが、衛生局の役人はウィルス感染を疑う。まさか小さいアリンコが犯人とは思わずに、犠牲者を増やしていき、お約束通りに自分も犠牲になってしまう。  ホテルに取り残されたのは異変に最初に気づいた工事の現場監督です。彼はヒーローみたいに立ち回るが、元はと言えば、こいつらが無神経にブルドーザーで彼らの住処だった古いパイプラインを破壊したせいなのだ!
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 ホテルのオーナーの娘は都合良く、現場監督と恋人同士です。母親と離れて厄介払いをしてから、早く結婚したい彼女はせっかくホテルの買収話があったのに、欲の皮が突っ張った母親のせいで大金を逃してしまう。  買収にきた嫌味な成金のオッサンはなぜか、この最悪のタイミングにたまたまホテルにやって来て、その翌日にアリンコに追われ、愛人は殺され、プールに逃げようとして最上階から飛び降りて死んでしまう。
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 こんな、はっきりいってどうでもいいB級テイスト以下のメインキャストの三人でした。そんな彼らを救出するために派遣されたのは知る人ぞ知る、われらがブライアン・デネヒーなのでした。  誰か分からない?そうかもしれません。彼は『ランボー』でよそ者のスタローンにしつこく嫌がらせをした揚げ句に多くの友人をヤツに殺され、のちにマイアミに転勤して科学捜査主任にまで出世するデヴィッド・カルドーソを叱り倒すものの、自身は半死半生になってしまう太っちょの警官役でした。
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 おぼろげな記憶を辿っていくと、たしか彼は『コクーン』にも出ていました。そんな彼が凶暴化した蟻の大群が蠢く、パニック現場の指揮を執るわけですから上手く行くはずがありません。  案の定、アリンコから彼らを救うために動いているはずなのに救助用ヘリコプターは爆風を巻き上げ、ついでにアリンコの大群まで空に飛ばし、100パーセント他人事でニヤニヤ顔だった見物人たちに襲い掛からせて、周りの全員にパニックのおすそ分けをしてしまう。
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 さらに被害を最小限に食い止めるためだと話し、ホテルの周りに溝を掘り、ガソリンを流すが風向き次第では反対に山火事やら火攻めになることを全く考えずにやりたい放題しています。  さらに状況を知るためにホテルの内線に電話を掛けるのは良いが、「お前らより町のほうが大事だ!」「お前らだけで、あと30分間はなんとか持ちこたえろ!」などと頼りないことを怒鳴り声で被害者に告げる。  もし自分が巻き込まれた被害者だったら、おそらく怒りが爆発するか、絶望のあまりに茫然とするかの二者択一を迫ってきます。動くなといわれて、じっと部屋の一角に集まり、壁紙で作ったすいとんの術のような空気を吸うストローを口に当てて、座り込む。
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 アリンコが身体中を這い回り、顔まで真っ黒な状態になったとき、恐怖のあまり、成金のオッサンは最上階からプールを目指して飛び降りて(大昔にジョニー大倉がやったヤツ!?)、グシャッと死んでしまう。  それを見ていたかのように『ザ・クレイジーズ』に出てきた防護服を纏って、さらに太っちょになったデネヒーが助けに来ます。肝心な救出シーンは飛ばされて、場面はすぐに切り替わり、現場監督とオーナーの娘には急に結婚話が持ち上がる。  なんだこりゃ?って思う間も与えずにエンド・ロールが出てきて、細かいことは気にするなとばかりにブツっと切れて、ビデオの巻き戻しが始まりました。うーん!? 総合評価 58点
キラー・アンツ【字幕版】 [VHS]
タキ・コーポレーション
2005-05-06

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