良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『モンスター・パニック 怪奇作戦』(1970)胡散臭さがプンプン匂うSFホラー。

 “モンスター・パニック”というタイトルの映画を近所のTSUTAYAで探していると、せいぜい見つかるのは半魚人が白人の若いオネエチャンをレイプしまくる80年代の俗悪作品にしか辿り着きませんでした。これも昔は大らかにアナログ地上波で夜9時台に放送されていました。  しかし、僕が探しているのは半魚人ではない。たしかにタイトルは“モンスター・パニック”だったはずですが、なんせ見たのは1970年代後半から1980年代初頭で、こちらも小学三~四年生くらいの時なので、もしかしたら記憶違いかもしれない。  無事にノストラダムスが過ぎて、21世紀を迎え、ネットでお買い物をするようになって、ユニバーサルやハマーのモンスター映画をかなり見ましたが、狼男とフランケンが戦う『フランケンシュタインと狼男』以外はあまり対戦モノは見当たらない。
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 Googleで狼男、ミイラ男、映画、ドラキュラ、フランケンで検索してみても、ヒットして出てくるのは怪物くんばかりでした。  やっぱり思い違いだったのかなあと半ば諦めかけていたところ、スペイン・ドイツ・イタリア合作映画でこの『モンスター・パニック 怪奇作戦』が存在していたことを知り、Amazonで探したところ、ついに30年以上も経ってしまいましたが、この作品に再び出会いました。  しかも廉価版が出ていたので即買いしました。いざ再生しましたが、思っていた以上に内容はいい加減過ぎて、今になって見直してみると、なぜ、こんなのが思い出に残っているのだろうという低レベルの駄作ではありました。
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 それでも、どこかに心を鷲掴みにした強烈な映像に巡り会えるに違いないと思い直し、午前2時を回っていましたが、最後までついていきました。  宇宙人に絶対服従するはずの洗脳された人間たちも怪物たちも勝手に意志をもって動き出してしまい、宇宙人(ウモー星人)の地球侵略作戦は失敗してしまう。  怪物たちも機能するのはフランケンと狼男だけで他はフラフラしているだけでした。結局は何が思い出に残っていたのかさっぱり解らず、無駄な時間を過ごしました。
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 しかしながら、結果は駄作ではあるものの、最近の映画ファンはシネコンのせいで同時上映がなくなり、意図しない作品を観る機会が失われてしまっていることに気づきました。  大昔はお目当ての映画がコケたときに同時上映作品に救われることが少なからずありました。同時上映のメリットは普通、お金を払ってまで観たいとは到底思わないジャンルや苦手なジャンルの映画を言わば、ただで見られることです。  興行主のセンス次第では『がんばれタブチくん』と『失なわれた航海』を小学三年生に見せるという訳が分からない同時上映もありましたし、『マッド・マックス』と『ポリス・アカデミー』、『ミッドナイト・ラン』と『ブラック・レイン』を一緒に見せるお得な併映もありました。
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 現在は無駄な時間を使いたくないという観客とタダで映画を上映したくない興行主の思惑が一致したのか、それともB級を製作する予算もないのか、映画鑑賞スタイルは一本だけ観る形になってしまいました。  ただし技術の進歩は目覚ましく、今では数百万単位でもデジタルの編集のお陰でセンスさえあれば、個性的な作品が撮れるレベルになっているそうです。  こういう作品を同時上映用に使用すれば、物好きな映画ファンが集まるでしょうし、番組に掛けた映画館にはDVD化された際にマージンを払うようにすれば、これらの作品の商業的レベルも向上するので、日本映画全体が盛り上がるかもしれない。一過性の映画祭ばかりをでっち上げるだけではなく、地力をつける方向に持っていって欲しい。
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 先ほどから書いている通り、いざ始まると三分で駄作の臭いがプンプンと部屋に充満し、胡散臭さといい加減さが両目から集中力を奪っていきます。  人間の弱味は迷信深さと欲望であると喝破して、迷信深さには伝説の怪物たちを用い、欲望には色仕掛けを用いるという作戦はイイ線をいっています。  ただしヴィジュアル化する際にもう少し気を使って欲しかった。せめてハリウッドのB級ホラー並みの予算が与えられていたならば、もしかすると伝説のオール怪物総攻撃的な大人から子供まで楽しめる作品に仕上がっていたのかもしれない。
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 いかにも12チャンが放送しそうな映画でした。エド・ウッドの最低映画『プラン9・フロム・アウタースペース』と肩を並べられる類いの残念な作品ではありますが、『トロル2』が今では愛すべきクズ映画としてカルト的な人気を誇っている現状ではこの『モンスター・パニック』も後世まで語り継ぐべきゴミ映画になってしまうかもしれません。  我が国の『デビルマン』もそうなるのかなあ。『怪物くん』は嵐の大野くんが出演していましたが、あれがもし香取君だったならば、さらにクズの王様として君臨していたかもしれない。
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 ドラマでも映画でも彼が出ているのはたいてい深みと面白味に欠ける。バラエティに出ているときには楽しいのに演技になるとどこか突き放して見ている。まあ、何はさておき、この映画に出てくるドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男、ミイラ男などの超有名モンスターの活躍を楽しみたい。と思っていましたが、あまり怪物たちが機能していません。  フランケンがなんだか奇妙で、場面によっては女性よりも小さかったり、ほかの場面では誰よりも大きかったりとサイズが安定しないのは何故だろう。せっかく生き返った怪物たちでしたが、見せ場らしい見せ場が与えられたのは恋愛も描かれる狼男のみ(なんせ演じたポール・ナッシーが脚本を書いているので、彼が活躍するのは当たり前か?)で、彼一人にミイラ男もフランケンもやられてしまう。  どうせだったら、ヴァン・へルシングの子孫も登場させて、ヘルシング三世とかにして、彼に退治させても良かったのではないか。まあ、どっちでもいいですが。  レンタル屋さんにあったら、お話のネタ用に借りてみてください。モノ好きな方は1000円程度で購入できるのでどうぞ。 総合評価 40点