良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ローン・レンジャー』(2013)ジョニー・デップ&ジェリー・ブラッカイマーな映画。

 8月30日となり、小中高生の夏休みがそろそろ終わりに近づきますので、もしかすると大勢観客がいて、ゴミゴミしているのかなあと思いながら、待ち合わせ場所の映画館内のロビーに行ってみるとそんなに人はおらず、普通の時とあまり変わりはありませんでした。  地元の大きな商業施設の四階にあるシネコン映画館なので、一階の入り口を歩いていくと銀行ATMがあり、そこに館内スタッフ数人と警察官が三人、そしておばあちゃんがひとりいて、色々と職務質問をされていました。
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 なんだろうと思い、話のネタになるかとしばらく見ていると、どうやらそれは振り込め詐欺の現場だったようでたくさんの通帳を抱えていたおばあちゃんを不審に思ったスタッフが送金を止めさせて、警察に通報したところでした。  周りはすでに人だかりが出来つつありましたので、ぼくは立ち去りました。物騒だなあと思いつつ、映画館内に進み、数分間待っていると、待ち合わせの相手も到着したので、近くのサーティワンでさっきの話をしていました。
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 彼女と話していると経営しているお店の机に置いていた電気料金の支払い用の封筒が消えていて、とてもショックを受けたと言い出しました。金額は20000円ほどだったそうで、がっかりしていましたのでとりあえずアイスをおごり、映画代も僕持ちに自動的になりました。  時間が来たので、アイスを食べながら、スクリーンに向かうとさすがに公開後一ヶ月を経過しているので、観客も三割くらいしか入っていません。
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 アイスを食べていたために予告編タイムはほとんど終わっていたために、すぐに映画はスタートし、ジョニー・デップが動き出しました。  すると聞き慣れたメロディーが鳴り響き、ぼくは笑ってしまいました。それはぼくら世代にとってはとても懐かしい、オレたちひょうきん族のオープニング・テーマでもあった『天国と地獄』なのです。
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 クライマックスでもかかるこの曲を聴くと、どうしてもタケちゃんマンブラックデビルが頭に浮かんでしまい、困りました。  物語は夏休みファミリー向けディズニー映画らしく、シンプルで、兄弟と仲間を殺された主人公(アーミー・ハマー)がアメリカ先住民コマンチ族のはぐれ者ジョニー・デップと力を合わせて、お互いに一致する仇敵に仕返しをするという伝説的な話を時を超えて、アメリカの白人少年に語って聞かせる荒唐無稽な内容です。
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 デップが活躍した1869年と少年とお話をする1933年を行き来しながら物語を語る。トント(ジョニー・デップ)が紙芝居のように少年に言い聞かせる様はほのぼのとしてはいるが、語られるのは大悪党や不当に略奪される中国人出稼ぎ労働者やアメリカ先住民たちの死に様です。  この回想と現在の時間軸の変化は15分か20分位の間に訪れる。これはまるでテレビ放送時にCMが入れやすくしたり、編集点を作りやすくするために撮っているようです。
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 さすがはあとあとまでの商売と回収方法をしっかりと考えているブラッカイマーらしく、エンディングの後のエンディングを今回も用意して、続編へ繋げようとするあたりは商魂たくましい。  雄大な西部の大自然の風景は大画面で見るに相応しく、小さなテレビでは良さが半減してしまう。CGの使い方もリアルに用いるシーンとジョーク的なアクション・シーンに用いるときのメリハリがしっかりしていて、CGの利点を上手く活かしています。
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 あちこちにクスッと笑える仕草やコネタを散りばめているので、見ていて飽きません。ガトリング砲が唸る先住民との対決場面は『ジャンゴ』『ワイルド・バンチ』を思い出させてくれますし、砂漠で死者が蘇るのは『エル・トポ』みたいです。パロディなんでしょうね。  もう見なくなってしまった西部劇を現代風に楽しめるようにブラッシュアップしたような作風は陳腐とみる向きもあるでしょうが、ぼくは楽しく見ていました。どこにでも出てくるヘレナ・ボナム=カーターには笑うしかない。ティム・バートンとブラッカイマーのタッグも最強でしょう。
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 映像で印象的だったのは真夜中に川の浅瀬をギャロップしていくシーンでの月明かりに煌めく川面の乱反射する光でした。アクションだけではなく、きれいな映像も随所に盛り込まれているので、こういう細かい部分も見たい。  悪党かどうか、どちらが正義なのかは非常に分かりづらい。正義というのは立場によって変わってくるのだろうということもやんわりと告げられます。先住民にとってはパイオニア・スピリッツなどという言葉は侵略の美化でしょうし、中国人は鉄道網の貢献者ですが、歴史的に闇に葬り去られています。  
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 ジョニー・デップアーミー・ハマー、そして常に一緒についてくる白馬(めちゃめちゃ面白いので、ぜひ見てください。)の三位一体攻撃の前には悪党どもも平伏します。屋根の上までデップたちを助けに来る馬が煙突から彼らを見下ろすシーンがあります。笑うしかない。  ディズニーらしく、主人公たちは自らの手を汚すことなく、悪党が勝手に死に絶えていくのは鼻白みますが、レイティングで面倒を起こさないためにはこういう部分の去勢も必要悪なのでしょう。
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 スケールが大きい映画ですので、劇場鑑賞が望ましい。連れてきた彼女も楽しんでいました。デートには安全ですし、子供を連れてきてもオッケーでしょう。予告編で流れた『ウルヴァリン・サムライ』にも興味があったようです。たぶん来月はこれを観に行きそうです。  色々と突っ込みどころ満載の作品ではありますが、雄大アメリカに免じて、大らかな気持ちで見ていれば、きっと楽しく149分間を過ごせるでしょう。
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総合評価 68点