良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『キック・アス ジャスティス・フォーエヴァー』(2014)小悪魔殺人マシン、ヒット・ガール復活!

 新作公開に合わせて、急いで録画していた第一作目を見た後に映画館へ走り、朝の第一回目の回を観に行きました。  午前9時過ぎの上映でしたが、チケット売り場に行くと多くの観客が順番を待っていました。まさか、『キック・アス ジャスティス・フォーエヴァー』に並んでいるとは思えなかったので、ほかの人たちを見ていると、どうやらお目当ては『アナと雪の女王』のようで、みなさんチケットを買っていました。  予告編では『LIFE』『Xメン』『ネイチャー』『アナと雪の女王』などを流していました。最近は映画泥棒が始まる前にもう一組の前座であるブタさん三匹の短編アニメが流れます。これが結構楽しくて、今回は血液型をテーマにした歌を歌っていました。今後の活動に期待したい。  『アナと雪の女王』はディズニーが猛プッシュしているのでご存知の方も多いでしょう。予告編を見た感じではアナ(たぶん主人公?)と姉の女王の物語のようで、ヒエヒエの実の能力者と思われる姉の女王(アナとあねって、ややこしい。)とのトラブルを描いたのでしょうね。
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 見たい作品もいくつかあり、さすがに宣伝が上手いなあと感心していましたが、公開後、数週間を経過した地元に近い映画館のスクリーンでは観客はまばらで、ぼくを含めて数人しかいません。R-15指定なので子供はいません。  ていうか、映画を規制する前にストリート・ファイトや射撃をモチーフにしたような暴力容認ゲームこそ規制しやがれと思いながら、スプラッター描写を見ていました。  内容はより派手にゆるキャラ祭りの様相を呈し、スケールアップされて、第一作目を見た人からすると、ちょっぴり成長して、ハイスクールにたヒット・ガールやキック・アスの活躍が見られることにワクワクしながら、劇場のスクリーンに向かったのではないか。  楽しさは前作に比べるとどうなのだろうかと期待しながらの鑑賞でしょう。スプラッター描写がパワーアップするのか、それともより多くの観客(つまり母親が連れてくる子供たち)を当て込むために一般映画として妥協するのか。
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 映画は興行なのでお金の回収が第一であり、作品の品質や表現をある程度抑えても、十分にペイするとなれば製作サイドは無理をしないでしょう。実際、残酷描写はかなり減ってきて、登場人物たちの苦悩と成長に力点が映されている。つまりハリウッド的だということです。  前作を見た後にこの新作に臨む観客の頭のなかはいろいろな考えや不安で溢れていたかもしれない。結果的には前からのファンはちょっと物足りなく思ったでしょう。しかしながら、この新作を見ただけの観客の多くは楽しく見られたのではないか。  可愛らしかったヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ。実年齢は17歳!)はハイスクールに入学し、より娘さんらしくなり、キック・アスアーロン・テイラー=ジョンソン)にも共感する若いファンが増えていそうです。  殺し屋やならず者との格闘では活き活きしているクロエがハイスクール生活へ入っていくとモジモジする可愛らしい女子高生になってしまう。学園の女王様が君臨する女の世界は彼女にとっては窮屈でしかなく、キャリーのようにさまざまな嫌がらせを受ける。
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 が、振り切れた彼女の仕返しは強烈で、ゲロゲリ棒(当然ですが、嘔吐と激しい下痢のことです。)装置を使って復讐する。クロエの攻撃を受け、学園の女王様が学校の食堂でみんなの前でゲロを吐きまくり、大量のうんこをまき散らす。まるで『ウォーター・パワー アブノーマル・スペシャル』みたい。  映画館の大スクリーンに映し出される強制排便シーンだけでも十分に年齢視聴制限を受けるのでしょう。お下劣な描写なのですが、笑ってしまうほどの大量のゲロと排便なので、多くの人はおそらく白っぽいゲロばかりに目が行ってしまい、パンツ越しに後ろへ流れ続けるうんこを見逃しているかもしれません。  前作からすれば控え目なものの、R-15を逆手に取った過激描写は健在で、画面の隅々にまで気を使っています。いわゆるヒーロー物とは違って、ヒーローになりたい等身大の人々を描いているからこその大ヒットだったのではないか。
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 前作から4年が経過し、アーロン・テイラー=ジョンソンの第一作目の印象はまるでバッド・ロナルドか、ジェレミーのようでしたが、自信と筋肉をつけた彼はかなり成長してきています。  というか、なんちゃってヒーローだった彼は盟友クロエに触発されて、本物のヒーロー修行にのめり込んでいきます。最初はノリノリだったクロエでしたが、父親を失ったあとに世話になっている養父との約束によりヒーロー稼業から足を洗い、イケメン・アイドルグループや恋愛やダンスを楽しむティーンエイジャーになっていく。  一方、ヒット・ガール(クロエ)を失い、新たな仲間を探していたアーロンは正義ヒーローのサークルである“ジャスティス・フォーエヴァー”に加入する。  そこで出会ったナイト・ビッチと恋に落ち、一発キメる。その組織のリーダーがキャプテン・アメリカみたいなジム・キャリーだったので笑ってしまいました。誰かとめてやれ(笑)
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 前回、父親であるマフィアのボスをキック・アスにバズーカで殺害されたレッド・ミスト(クリストファー・ミンツ=プラッセ)は復讐を誓い、母親を事故死させたのを機に改名し、マザー・ファッカー(ええんかいな!)を名乗る。  彼女の遺品のSMグッズ(肛門用の調教具まで登場。)を身に纏う彼は普通に考えるとかなり悪趣味ですが、町中にコスプレイヤーが溢れるこの映画ではそれほど違和感がない。ただなんとなく、彼のルックスが気持ち悪さ全盛のころのプリンスみたいだと思いました。  悪に徹したクリスは大金を支払って仲間を集めるが、集めた面子の名前がすごい。マザー・ロシア(オルガ・カーカリナ。インパクトが大きい!)、チンギス・半殺し(中国人なのに。)、ブラック・デス(もちろん黒人)、トゥーマー(腫瘍。チビの基地外!)とやりたい放題です。
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 今回の第二弾のテーマは現実と向き合うヒーローたちの苦悩と成長です。前作ではクロエとクリストファーの父親が死亡しましたが、今回はクリストファーに恨みを買っていたアーロンの父親も殺害されてしまう。  つまり主要キャラクター3人の肉親がすべて彼らを残してこの世を去ってしまう。成長を促進される彼らがどう成長していくのかを見るのがこの作品ではないか。  クロエはオープニングではアーロンを子ども扱いにしてガンガン人を傷つけていくが、養父との約束で一度は足を洗う。アーロンも父親を殺害されてから一時引退する。
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 クリストファーはヒーローだった前回と違い、父親を殺害され、母親のSM趣味を引き継ぎ、マザー・ファッカーに変貌する。    三者三様に別れを経験していくが、それは保護者を失い、大人になるために避けられない過程なのです。自分自身と向き合い、そこからどう歩いていくか。  アーロンは自分が始めたヒーローごっこが世間に与えた影響とそれが引き起こしてしまった魔女狩りのような悲惨な状況と向き合い、自分の行動の責任を取ろうとしていく。  ただ、クライマックスに用意された正義のヒーロー軍団対悪の超人(スーパー・ヴィラン)軍団とのバトルロイヤル・シーンには賛否両論ありそうです。100人規模のレイヤーさんの全員が思い思いのスーツを身に纏っているので、戦いが始まるとゴチャゴチャになり、誰が誰だかわからなくなってしまう。
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 それでもクロエ対マザー・ロシア、キック・アス対マザー・ファッカーのバトルはしっかりと押さえてあるので問題はないのかもしれない。後半のクロエがちょっぴり小太りに見えるのは錯覚だろうか。  アーロンの父親の葬儀を台無しにしたクリストファーの手下を車の屋根にへばりつきながら皆殺しにしていくクロエは他のヒーローたちとは格が違う。敵の本拠地を突き止め、皆と一緒に最後の決着をつけたクロエは大切な仲間や養父がいる住み慣れた町を出る決意をし、キカイダーのように紫色のドゥカティに乗り込み、ハイウェイに消えていく。  クリストファーはアーロンと束の間の和解をしたあと、人食いサメの待つ水槽に落ちていき、鋭利な歯の餌食になる。死亡したと思われたが、エンドロール後に生存が確認される。  こりゃ、第三弾もあるなと臭わせる結末でしたが、できれば10年後くらいに舞台を移し、クロエとアーロンをひとまず結婚させた後に、生き残ってサイボーグ化したクリストファーとの最終決戦を描くのではないかと期待したい。 総合評価 75点