良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『キック・アス』(2010)オッサンたちをノックアウトする可愛い殺人マシン、ヒット・ガール登場!

 ブログを始めた当初からお付き合いのあるトムさんからのリクエストをいただきましたので、今度の記事は『キック・アス』にしようと決めていました。  これまでなんとなく敬遠していた『キック・アス』でしたが、リクエストをいただいた後にCSで放送がありましたのですぐに見る機会に恵まれました。楽しすぎたために第二弾の『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』を観るために近くの劇場まで急ぎました。
画像
 公開が終了し、しばらくしてからTSUTAYAにDVDが並んでいた時も、好きなジャンルの映画なのに何故か手が伸びず、ズルズルと見ないままに時間が過ぎていきましたが、トムさんからのご要望をいただき、ようやく『キック・アス』に接しました。  見る前までは友人が大好きな影響で『アヴェンジャーズ』『X-MEN』『アイアン・マン』などのアメコミ系作品を一緒に観に行くことが増えてきたここ数年でしたので、たぶんそんな感じの映画なのだろうと思っていました。
画像
 ところが予想を裏切り、ブラック・コメディ要素が強く、少女の攻撃によるスプラッター描写がキツかったのでかなり驚くと共に、通常のヒーロー物にはなかった日常生活を描き出す独特の楽しさがあちこちにあり、すぐに引き込まれていきました。  コマーシャル的な最大の売りはヒット・ガールに尽きます。ニコラス・ケイジの父親(バットマンみたい。)と社会のクズを片っ端から刃物で殺害していく一連の残酷描写はアメリカでは問題となり、視聴年齢制限を意味するR-15指定を受けましたが(もちろん日本でも。)、かえって開き直った製作サイドは堂々と血みどろヒーローのコメディを見事に作り上げました。
画像
 普通のヒーロー映画との相違はこれはヒーローになりたい人たちの理想と現実をデフォルメ化した傑作青春映画なのではないか。しかもはっきり言って、ほとんどの登場人物がカッコ悪く、イケてない者ばかりです。  アーロンは憧れの女の子に近づくためにゲイを装ったり(誤解させることに成功し、彼女のヌードも拝める。)、毎晩自家発電に走ったりしますし、ニコラスは父親一人の弊害で、一人娘に自分よがりの異常な教育を施す。
画像
 サイコ親父ニコラスによって、弱冠12歳にして様々な殺人技術を身に付けている殺し屋ヒット・ガール(クロエ)が無邪気になんの疑いもなく、ギャングやならず者たちの身体を手裏剣や刀で串刺しにして、銃火器を操り、頭を撃ち抜いていく。  この『燃えよ!ドラゴン』のような大活躍シーンを爽快と取るか、やり過ぎと拒絶するかでこの映画への態度は決まってしまいます。過激だ何だと言っても、あくまでもフィクションだとして、割り切って楽しめるぼくらの方がイカれてしまっているのかもしれない。
画像
 映画を観ていても、ヒット・ガールに「行け~!」と声援を送りたくなるオッサンたちは言うことを聞かない娘たちを思い出し、キュートなクロエを思い通りに育てるニコラス・ケイジを羨ましがるでしょう。  バットマンとロビンの関係では主人公はバットマンですが、キック・アスとヒット・ガールでは主人公であるはずのキック・アスがロビンの役回りになってしまう。
画像
 そもそも主人公のキック・アスが弱すぎるのです。これは当たり前の話でただただウルヴァリンスパイダーマンに憧れているだけのモテないオタクがヒーローになりたいという衝動だけで行動を始めてしまい、それがYouTubeで流されたのをきっかけに“ヒーローになりたいムーヴメント”の創始者になってしまっただけなのです。  ただ彼には一歩踏み出す勇気があったからこそ、創始者足りえます。ひとりひとりがちょっとした勇気と正義を持てば、世の中はちょっぴり良くなるんじゃないかなあという希望がある映画です。等身大の誰でもできる、誰でもなれるヒーロー物だからこその大ヒットだったのかもしれません。また、弱いなりにも徐々に経験を積んで、ヒット・ガールの補助的な役割ではあるものの活躍するようになってくるのもリアルで良い。
画像
 実際、最初の出動でボコボコにされてしまい、身体中に金属が埋め込まれたあとに痛みを感じる神経が鈍感になり、ウルヴァリンみたいになっていく過程をアーロンが楽しんでいる部分も笑えます。ヒーロー体験が自信をつけたのか、彼は憧れの彼女に自分の正体がキック・アスであることとホモではないことを明かし、初体験をキメて、青姦までやってしまうほど大胆になってくる。  音楽が素晴らしく、B級映画への愛情もビシビシと感じます。モリコーネの『夕陽のガンマン』が流れた日には小躍りしそうになりますし、クライマックスの悪党が待つ高層ビルでの戦いなどはブルース・リー映画や『ゴッドファーザー3』を思い出しました。
画像
 鏡の間の死闘やギャングの大ボスとヒット・ガールの戦いを見ていると『死亡遊戯』での巨人とリーの体格差を思い出さずにいられません。   アーロン・テイラー=ジョンソンの冴えない仲間たちのクラーク・デューク(マーティ)とエヴァン・ピーターズ(トッド)とアーロンを合わせた三人組は一見すると三人一緒のようだが、人生のここぞの決断ではいつもトッドが仲間外れになってしまう。
画像
 この第一弾のラストでもほかの二人がよろしくやっているのに、彼一人が彼女がいないし、第二弾でもアーロンとクラークは同じヒーローサークルの“ジャスティス・フォーエヴァー”所属だが、エヴァンは敵対勢力に入会してしまう。  ヒーローの仲間募集のやり方も現代的でサイトで探したり、動画サイトで人を集めたりと「時代も変わったなあ…」としみじみしてしまう描写も多い。
画像
 日本でもTSUTAYAさんに並んだときにR-15指定シールが貼られていましたが、これは現在の基準であれば致し方がないかもしれない。  ぼくらが子供の時代は放送局もおおらかでしたが、今では気に入らないとすぐに抗議する輩のせいで無味乾燥で無難な番組が多く、見ていても楽しくない。そのため、まだ比較的自由なCS放送を見ることが増えています。
画像
 記事内容が本来ならば、この作品について書いた後に第二弾『キック・アス ジャスティス・フォーエヴァー』にすれば良かったのでしょうが、せっかく新作を見たので先にそちらを書きました。日本語字幕の監修は町山智浩さんが担当していますので、安心して観て良いのでしょうね。ヒット・ガールのキレの良い動きとともにキレのある字幕にも注目したい。  ちなみにキック・アスをそのまま読めば、「ケツを蹴っ飛ばせ!」となるのでしょうが、字幕では「悪を懲らしめろ!」となっていました。そういう意味なんですね。 総合評価 85点
Kick-Ass 2 [DVD] [Import]
Universal
2013-12-17
Kick-Ass 2

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Kick-Ass 2 [DVD] [Import] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル