良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『地底の原始人 キングゴリラ』(1970)顔は獣人、身体は小太りの白人(笑)何だこれ?

 『地底の原始人 キングゴリラ』のタイトルをはじめて見たのはいつだったろうか。はっきりとは覚えていません。しかしまあ、ふざけたタイトルです。まさかこの作品が往年のハリウッド女優、ジョーン・クロフォードの最後の映画出演作品になるなんて、彼女の経歴に大きな汚点を残しています。  もっともジョーン・クロフォードは『愛と憎しみの伝説』でも明らかになったように、養子縁組をした子供に対して虐待の限りをつくしたことがバレているので、逆に正当な評価を受けにくい女優でもあります。一番の怪獣は彼女自身かもしれない。
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 彼女はともかく、原題の『TROG』がどういう経緯を辿って、まさかのキングゴリラになってしまったのだろうか。そもそもキングゴリラなどと言われても、ほとんどの人はキングコングのパチもんだと考えるでしょう。英単語での意味は穴居人だったり、類人猿だったりするのでトロッグという言葉が造語というわけではありません。  見る前ならば、キングなゴリラだから、かなり大きいはずと考え、特撮を盛り込んだ作品に違いないと合点しているでしょう。まさか小さめの一般人と変わらないくらいの大きさで、人間による保護を得て、実験動物のように知能訓練を受けるハメになってしまう、ちょっとデカイだけの着ぐるみの猿を見なければならないとは思いもよらないだろう。
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 まさに出落ちというやつで、顔はゴリラなのに身体は本来ならば当然生えているべき体毛も生えていない、薄毛(笑)の類人猿でした。  滑り台で遊んでいた少女がキングゴリラに捕まってしまうシーンがハイライトのように予告編に使われてしまうほどのトホホな作品に仕上がってしまいました。
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 当然ながら、日本ではテレビ放送はなんとかあったもののビデオ化もDVD化もいっさいされずにここまで来ていますし、今後も難しそうです。  それでもなんとか見たいなあとAmazonを探していると、海外ではまさかのDVD化がされていました。残念ながら、リージョン違いの海外版なので字幕などはついていませんが、記憶をたどればなんとかなる。
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 Amazonでクリックを済ませ、アメリカからの到着を気長に待っていると、二週間後くらいで我が家まで『TROG』がやってきました。『獣人雪男』は日本から海外に出国しましたが、キングゴリラは入国してきました。  傑作ではないことが見る前から明らかになっているDVDに対して、ぼくらはどういうテンションで臨むのが正解なのだろうか。そんなことを考えながら、DVDをロードしていきました。
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 するとまず驚いたのが、ほとんどの英語版DVDでついていない英語字幕設定がついているではないですか。こんないい加減なC級SF映画に英語字幕が付いているのにどうしてもっと複雑な作品が英語音声だけなのだろうか。  最初は人類の進化の失われたワンピース、つまりミッシング・リンクなのだという仰々しいテーマが掲げられているのに、後半になるとみんなそんなことは忘れてしまい、ちっちゃいゴリラが何の落ち度もない地域住民たちを本能のままに殺害し告げた挙句に射殺されて終わりというゴリラ映画らしい結末に落ち着いてしまいます。
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 少女を誘拐したりするのは『キングコング』でのフェイ・レイ拉致シーンを思い出す方もいるのでしょうが、この作品ではジョーン・クロフォードが実験として、トロッグとボール遊びをしたり、人形遊びを教えているので、その延長として少女をオモチャ代わりに洞穴に持って行ったのでしょう。  今回、わざわざアメリカからのお取り寄せで見ましたが、見れば見るほどトロッグがジミー大西、またはひょうきん懺悔室の神様に見えてしまい、笑いそうになってしまいました。たぶん、今後もDVD化されることはないでしょうが、名女優、ジョーン・クロフォードの遺作(笑)として後世まで名前が残ってしまうのでしょう。
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 あの世でクロフォードは「あんなの出なきゃよかった!」と歯ぎしりしているかもしれません。晩節を汚すという見本かもしれません。ペプシの社長と結婚していたわけですから、お金に苦労していたというわけではないでしょうから、なおさら出演が悔やまれる。  彼女がゴリラマスクと絡んでいる姿は『グランド・ホテル』を知っている往年のファンからするとなんだか哀しくなってしまいます。
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総合評価 42点