良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『チェンジリング』(1979)ホラー映画という枠を超えた傑作。見せ方もストーリー構成も秀逸!

 そもそも、いつからホラーは観客を怖がらせるために鮮血が必要になったのだろうか。ショッキングで派手な描写を求めてきたのは観客だろうか、それとも理解力が乏しいであろう観客により分かりやすいアトラクションを提供し、宣伝がしやすいモノに投資してきた製作側の責任だろうか。  これまで色んな変な映画を見てきました。12チャン系はここでも多く記事にしてきましたが、それ以上に変なのを毎日毎日、何本も見ていたのはレンタルビデオ屋さんがあちこちに乱立し、店頭に並べるソフトが大量に必要だったバブル時代です。
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 1980年代当時までは映画館の興行スタイルは二本まとめての上映が普通で、たいていお目当ての映画と引っ付けられているのはまったく興味のない恋愛映画など真逆のジャンル映画との抱き合わせでした。  そのため興味のあるなしに関係なく、特撮とラブロマンスだったり、ハード・アクションとコメディだったり、アニメとパニック映画だったりしていて、さっぱり訳が分からない組み合わせが多かったのを覚えています。  そんなスタイルをレンタルでも味わおうとして、三本割り引きセットがあるお店では見たいのを二本と別に見たくもない真逆のジャンル映画を一本借りてくるようにしていました。
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 もともと興味のないヤツや下らなさそうなのを選りすぐっていましたので、たいていは見た途端に忘れてしまうクズばかりでした。それでも思いがけない掘り出し物があったりするので侮れません。  そんな抱き合わせ一本のなかでもインパクトが強かった作品に『食人大統領アミン』『ウィッカーマン』『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』『チェンジリング』『アリス・スイート・アリス』『ミミズ・バーガー』などがあります。『チェンジリング』とは言っても、もちろんアンジェリーナ・ジョリー主演作のヤツではありません。1979年カナダ製作のオカルト・ホラー映画です。
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 この作品に関してはビデオ時代にはソフト化されていましたが、DVDにフォーマットが変わってからこれまで何故か無視されていました。それが突然ソフト化が決まり、9月にはリリースされるようです。  では一体これはどのような作品だったのだろうか。いわゆる幽霊屋敷物ですが、1979年の映画なので、CGなどの特撮表現はまだ実用化されていないので、しっかりとしたセットを作って、古めかしい重厚感あふれる屋敷を作り上げています。  見せ方を工夫して、より心理的に怖く見せるような構図、背筋が凍るようなストーリー展開、気味が悪くなる音響効果を駆使しています。ラストシーンではこの大がかりなセットを炎で焼き尽くし、焼け跡もしっかりと利用して余韻が続くエンディングを持ってきていて、しばらく考えさせてくれる演出も心憎い。
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 ドバドバ血液を噴射するばかりでなく、何かあったらすぐに特殊メイクのゾンビを出すのではなく、つまり驚かせるのではなく、ホラー映画と言うのであれば、しっかりと僕らを怖がらせて欲しい。この作品はそういった古くからのホラー映画ファンを喜ばせてくれます。  毎朝6時に30秒ほど何かをどんどん激しく叩く音が聞こえてくる理由(この家で殺された身体の不自由な少年が殺された時間が朝6時で、父親に溺死させられるまでの抵抗した時間が30秒!)、川に投げ捨てたはずの一人娘の遺品だったボールが濡れたままで二階から転がってくるシーンはかなり気味が悪い。
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 作曲家である自分が屋敷に置き去りにされた古いピアノを使って、たった今書き上げた旋律が隠し部屋の古いオルゴールから流れてきたり、小さすぎる子供用の車椅子が勝手に動き出して襲ってくる恐ろしさは今でも忘れられません。  クライマックスでも目的を果たした怨霊が家じゅうに火を放ち、階段の手すりの上から一階に向かって火を回していく様子、殺されたのがこの少年であることを証明するはずの洗礼のメダルを主人公に分かりやすく見つけ出させるシーンは怖いという感じではない。
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 詳しくはあえて書きませんが、心霊現象が小さな徴候のようなものから徐々に分かりやすい現象が頻発していくさまがとてもリアルです。いきなり誰でも分かる現象が起こるのではなく、鈍感な人なら気付かないようなことから起こるのがすごい。  しかもこの映画の素晴らしさは怖いというだけではありません。怨霊になってしまった少年のどうしようもない悲しみが徐々に明らかになってくるにつけ、恐さよりもこの怨霊への同情が沸き起こってきます。霊による復讐シーンにも同情できます。
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 気づかれることでより行動をエスカレートさせていく少年の怨霊は過激になっていき、最終的には病気で歩くことすらできない自分をバスタブで溺死させて殺害した父親が自分の替え玉として用意した孤児(すでにじいちゃん)を呪い殺すところまで行ってしまう。  少年の悲痛な怨念を解き明かし、加害者の一人でもある大金持ちの議員への反省を迫った主人公や歴史保存協会のパート・スタッフのヒロインにも危害を加えるシーンには違和感を覚えましたが、相手は駄々っ子の少年なので見境がなく怒りをぶつけてしまった結果としての攻撃だったのでしょう。実際、怪我をさせるが、自分を助けてくれる人たちには命にかかわるような危害は加えない。
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 怨霊目線の視点も効果的で、肉体が滅びてもさまよう魂は漂い続ける描写がこの映画にとてもマッチしていて、ホラーへの見方が変わるかもしれません。  怨霊に感情移入できるという他にない脚本の素晴らしさで、私的ホラー映画歴代ベスト10に必ず入る作品です。発売は9月なので是非ともDVDで鑑賞しましょう。
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総合評価 90点
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