良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ジュラシック・パーク』(1993)カラー登場以来、久しぶりに映画界で起こった技術革命。

 映画界では幾度かの技術革新により、それまでの映画文法の常識が覆されていき、新たな才能と技術に順応していけた映画人たちが生き残り、新たな流れを作っていく。  短編でモノクロ、そしてサイレントだった当時の映画が編集や文法の構築により、長編が生まれ、トーキー技術の進歩で音響と音楽、映像だけでなくセリフによる説明が出来るようになり(功罪あり。)、カラー技術が進歩して以来、久々の革命が映画界を席巻します。
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 今から20年ほど前に映画館の大スクリーンではじめて『ジュラシック・パーク』を観たときの衝撃は凄まじく、特撮におけるCG技術の向上が観客にどれだけの説得力を与えたかは現在の若いひとたちには想像がつかないでしょう。  また着ぐるみによる操演が中心だったわが国の特撮映画に与えたダメージの大きさは致命的でした。これはプロレスが国民的な大人気格闘技だったのがK-1やPRIDEにすべてを奪われてしまう過程と似ているのかもしれない。
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 もちろん今でもゴジラやプロレスは一定の人気を保ってはいますが、最盛期を知るファンからすればとても寂しい状況です。もっともこの『ジュラシック・パーク』で一気に火がつき、映画の特撮ではメジャーになったCG技術も今では標準になってしまいました。  本編(ストーリー・パート)が拙く、CG部分だけが目立ってしまう場合は特撮に頼りすぎていて、脚本がどうしようもないという批判を浴びる。
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 また邦画の多くでありがちな中途半端なCGに対する批判が圧倒的になるため、どんな映画 だったのかという本質的なコメントが隅に追いやられてしまう。  映画予算の大部分を占めるのは人件費とCG技術などの演出にかかわる部分でしょうから、映画の根幹をなすはずの物語性が犠牲になってしまったのだろうか。
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 それとも大多数を動員するためにはオリジナル性よりも普遍的な、もしくは古典的な代わり映えのない要素(無理やりぶちこんでいくラブストーリーや当たり障りのない攻めない台詞など。)を必要としているのだろうか。  それらCG技術問題のきっかけとなったのが『ジュラシック・パーク』なのです。圧倒的な話題性と完成度により、早々と続編が決まり、『ロスト・ワールド/ジュラシックパーク2』『ジュラシック・パーク3』が公開されました。
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 もっともこれら続編は言うほど出来が悪いという訳ではないのに評価はどうしても低くなる。観客は最初に見た第一弾の衝撃を忘れないでしょうし、次回作品にはそれまで以上の刺激を求める。映画のアトラクション化が加速されていき、3Dも生まれています。  第三作目の『ジュラシック・パーク3』が公開されてからちょうど10年の歳月を経て、ファン待望の最新作『ジュラシック・ワールド』が公開されています。すぐに観に行きましたが、個人的には十分楽しめました。
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 ただその理由は革新性ではなく、懐かしさです。良いのか悪いのかはなんとも言えませんが、特撮ファンを圧倒的に打ち負かした『ジュラシック・パーク』の最新作として楽しみました。  それ以上でもそれ以下でもない。また続編シリーズが始まる予感(必ずかな。)があります。観に行くけどWW
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 ファンにはおなじみのヴェラキラプトルとの死闘の記憶がありますが、最新作では知的な彼らをなんと飼いならし、味方として登場させています。  途中の場面では人類よりも強力なティラノザウルス型に寝返ってしまいますが、最終的には知的な彼らがティラノサウルス型をコントロールしていきます。それが出来る理由は遺伝子にヴェラキラプトルの遺伝子を使用しているからで、彼らは会話をします。まるでチンパンジーのようにずる賢い彼らが今後、どういう進化をたどっていくのかに注目しています。
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 映画自体のメッセージは金儲けに走り(リチャード・アッテンボロー)、バイオテクノロジーの進歩(B・D・ウォン=最新作にも登場。)はただ人類に貢献するだけではなく、負の要素としてはコントロールが効かなくなった場合、生物の進化を止めることは不可能になり、攻守のバランスが入れ替わってしまうということだろうか。また借金まみれのスタッフ(ウェイン・ナイト=ネドリー)は信用ならないという教訓も与えてくれます。  また何気に過ぎ去っていきましたが、ヒロインの植物学者(ローラ・ダーン)の指摘の通り、むしろ恐ろしいのは植物の繁殖ではないでしょうか。当然ですが、植物の方が爬虫類や鳥類よりも環境への適応は柔軟でしょうし、風や鳥類が植物を食し、それを他の大陸へ糞として持ち込めば、いずれかの地でも繁殖していく。
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 毒性の強い古代植物が大繁殖していった場合の人類への悪影響の方が甚大であり、『トリフィドの日』のような植物版ジュラシックワールド的な展開も同時並行で製作できるのではないか。  地味な作風になるかもしれませんが、『マタンゴ』と『トリフィドの日』を併せ持った映画ならば、大いにぼくら特撮映画ファンを喜ばせてくれるのではないだろうか。 総合評価 85点
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