良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ウォーゲーム』(1983)冷戦構造下ではけっこうリアルだった全面核戦争の恐怖。

 出てくる機材がいかにも古めかしい。1982年くらいだったか、友人でマイコン(!)に詳しいヤツがいて、彼と一緒に電気屋に行ってコンピューターを触っていました。彼が言うにはマイコンを使うには専用の言語があるとのことでした。  もちろんマイコンに興味がなかった僕には全くチンプンカンプンで何を言っているのか半分も理解できませんでした。当時に見た機材が映っていたので、色々と調べてみると板みたいなのは8インチフロッピー、バカでかいアンプみたいなやつはアルテア8800というPC自作用のキットで、ハッキングに使うのは音響カプラ(?)という機材だと分かりました。  大昔の機材って、今の人には使い道が分からないものも多いでしょうし、さらに数十年経ってしまえば、時代劇のような感覚で見る、変な道具でしかないのだろう。
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 70年代映画では黒電話やラジカセは普通の家電ですが、2000年代生まれの人が見れば、なんだかイケてない見たこともないレトロ電化製品だなあという印象しかないのでしょう。半面、現在ではレコードプレーヤーなどはターンテーブルなどという洒落た名前で呼ばれていたりするのでよく分からない。  1980年年代、中学生の頃に見た思い出の映画の一つとなるのが『ウォーゲーム』です。あまりにも原始的なPC機材を見るとPCに詳しい現在の若い映画ファンは笑い出すかもしれない。  しかしながら、当時の日本国において、もし中高生の若者がこれらの機材を熟知して、PCの可能性に賭けていたいたならば、先駆者として大金持ちになっていただろう。仮にコンピューターの仕組みが分からないとしても、なんだか儲かりそうだと確信してアップルやマイクロソフトの株を買っていたら、リッチな生活を送れていたであろう。  いまでもハイテク犯罪に後手を踏んでいる警察が30年以上も前の段階で電話回線からのデータ改竄や国防省の最高機密へのハッキングなどの新種の手口を防げるはずはないし、初歩的なことでも理解できないだろう。
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 ウィンドウズの登場とアイコンやオフィス用ソフトの機能性の向上がどれだけ多くの功績をもたらすかはコンピューター化が浸透していく現場にいた1980年代後半(そのころはワープロ一太郎かなあ。)から1990年代の会社員の方は頷かれるでしょう。  PCが経理など簿記の仕事を奪っていくのはさらにそのあとの2000年代です。それはともかく、当時は時代の最先端だったマイコンを1980年代はじめにすでに成績管理の方法として導入していたアメリカの高校も凄いなあと素直に感心します。  日本ではようやくコピーが文房具屋さんにならぶようになり、ガリ板を使っての印刷が徐々に無くなり始めた頃なのです。テクノロジーの進化というのは末端まで来てはじめて共通認識として一般化するのでしょう。
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 たとえば携帯電話を初めて大量に見たのは日本ではなく、返還前の1990年の香港でした。その頃はすでにトランシーバーくらいの大きさまで小さくなっていましたが、移動しながら連絡がとれる機動的な仕事の現場を見たときは衝撃的でした。  その後は日本でも携帯電話と個人用PCはどんどん広まっていき、今では一人で数台の端末を所有している状況です。80年代から急にこちらの世界に来た人は進化している部分と退化している部分に驚くでしょう。  80年代はまだ東西冷戦の真っ只中にあり、全面核戦争の脅威にビクビクしながら、ガラス細工のようなバランスを維持していました。じっさいに第三次世界大戦が起こり、米ソが核戦争に突入した場合に未来がどうなるかというテーマでさまざまな映画(『ザ・デイ・アフター』『地球爆破作戦』など)やアニメ(『198X年』など。放射能の恐怖なら『宇宙戦艦ヤマト』も含まれるかも。)やハルマゲドンの恐怖を煽る宗教が作り出されていきました。
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 この映画もそうした最終戦争がテーマとして語られるライトタッチだが、ブラックなSFのひとつです。そもそも過ちを繰り返す人間と違い、感情を持たないスーパー・コンピューターに防衛システムを任せてしまえば、常に正解を出すのではないかという視点が是か非かを描き出していく。  ただ最終的に冷静に対処しつつもなんとか世界を救おうとしているのは国防省のエリートたちであり、職業軍人であり、科学者たちなのです。原始的なコンピューター画面が前面に押し出されている作品ではありますが、人間の温かみを感じる作品でもあります。  コンピューターは間違えないというのは正論に聞こえるが、誤作動、故障、停電、感電、漏電などに加え、ハッキングやPCの周辺機材の劣化を考慮しているのだろうか。  銀行のATMがシステムエラーで故障するだけで預金者はお金を引き出せなくなったりする。たったそれだけでもプチパニックが起こる現状では中国や北朝鮮などによる大掛かりなサイバー攻撃が巨大な社会不安をもたらすような被害を与えた場合に被害者側が即座に対応して効果的で報復をするのは困難でしょう。  悪意の第三者が国防システムに侵入してきた場合、誰がどうやって対応するのだろうか。被害を復旧させるだけではなく、加害者への徹底的な反撃を加える必要があります。
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 たとえば銀行自体のシステムに侵入し、預金者の口座から金銭を抜き取った場合(ビットコインもやられましたね。)、どうやって返還させるのだろう。  現在の世界情勢では1980年代の感覚のように核戦争を引き起こさずとも、敵対国の金融システムやインフラのシステムを破壊するだけで大きなダメージを与えられる。  その方法として考え付くのは自国の通貨を通貨安に導く為替レート切り下げ政策、金利を下げる金融緩和、金本位制復活、株式や債券市場を暴落させる意図で行われる表向きにヘッジファンドを用いるレバレッジを駆使する信用取引基軸通貨への造反、コモディティー市場の暴騰などでしょうか。  現在これらの多くは公開市場でならば、機関投資家や官の悪意の意図を隠したヘッジファンドによって公然と金融戦争を仕掛けられるのではないか。
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 通貨の価値を意図的に下げること(いま共産中国がシャカリキになってやっていますね。)により自国の輸出は有利になり、相手の貿易国にダメージを与えられる。  ただしこういった動きは当初は思惑通りに自国の高い収益を生み出すだろうが、やられた国も通貨価値を切り下げ返すことで元の水準に戻っていくでしょう。どんどんお互いの首を絞め合うことになり、信用は膨張し、バブルに繋がり、頂点を迎えると崩壊していく。  無傷では済まないでしょうが、冷静だった第三国には相対的に優位に動き、利することになる。積極的にプレイするか、カウンター狙いでディフェンス重視で対応するか、存在を隠して敵対国が弱ったところを攻め込むかと色々な戦略を選択する必要がある。
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 そこでウォーゲームです。果たして通貨戦争に勝者は存在するのだろうか。一時的に敵対国を痛め付けても、肝心な経済自体が弱ってしまえば、勝者の国も自国の巨大化した経済を支えきれずに社会不安から内戦や暴動が頻発するかもしれないし、局地的な抗争にあちこちで巻き込まれるだろう。  ○×ゲーム(チクタクトー)を用いることにより勝者も敗者も存在し得ない不毛という概念をコンピューターに学ばせる展開がとてもスリリングである。軍事力や貨幣バランスを変動させて保つことが世界を維持していくことなのだということなのだろうか。  米ドル、ユーロ、スイスフラン、英ポンド、人民元、そして日本円の運命はどうなるのだろうか。アメリカは弱ってきているが、その他の通貨には世界を仕切れるほどの説得力と信用はない。ちなみに日本円は三年前に1ドルが75円だったのが、今では125円近くまで暴落しています。
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 つまり我々の日本円の価値はわずか三年で半分近くまで毀損しているのです。デフレが都合が悪いのは政府と大企業であり、インフレがより都合が良いのは借金まみれの政府だろう。インフレ率が毎年10%増えれば貨幣価値は半減し、そして消費税を20%まで上げれば、単純に10年後には実質的には政府の負債は半分以下になるでしょう。  その代わり、国民生活は窮乏し、ギリシャのように年金増額などの社会保障費の過剰支出や公務員保護など甘言を弄する左派政党が支持率を上げるでしょう。海外資本や富裕層はさっさと逃げ出し、国力はさらに低下していく。  中国が尖閣諸島を皮切りに侵略をはじめ、沖縄を独立させて植民地化し、本土を窺うだろう。米軍基地に反対する前に中国の軍備増強と増長をマスコミは批判すべきだろう。国力低下を確認したヘッジファンドは大量の国債や円貨を売り浴びせてくるでしょう。
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 原子力も同じで、中国が南シナ海東シナ海を封鎖した場合、我が国の石油は半年も持たないのではないか。電力がなくなれば、病院設備などの既存インフラは影響を受けて、死者が続出するかもしれない。農業でもなんでも産業では電気は必須なので優先的に電気が使われるだろう。  その犠牲となるのは家庭であり、当然のように後回しになり、公共設備のみに電力供給を当てねばならなくなる。足元を見られれば、エネルギー価格は暴騰する。原子力を否定するのであれば、二酸化炭素を出しまくり、今よりも数倍以上に暴騰するであろう化石燃料を使用する電気代を受け入れねばならないと覚悟すべきである。  クリーンエネルギーはご立派だが、太陽光などの固定買取価格制度の甘い汁を吸っているのはゴールドマン・サックスなど欧米の悪徳企業や中国系、そして韓国系だそうだが、反対派はそれでOKなのでしょうか。もうすぐ亡国の政策である電力自由化も始まるようだ。 総合評価 68点