良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ジュラシック・ワールド』(2015)久しぶりに映画館で観る特撮映画の王道展開。

 近所の映画館へ観に行こうと思っていた『ジュラシック・ワールド』でしたが、夏休みのためか、すべて吹き替えのみという地獄の環境だったので、久しぶりに県内の東宝シネマズまで出向きました。  3D作品などでは目が疲れるからというよく分からない理由で吹き替えが主流になってしまっていますが、『アバター』以来、この上映システムは数年も経過していますし、ゲーム慣れしている世代にはたいしたストレスではない。  そもそもいつまで3Dを売りにしているのだろうか。すでに陳腐である。3Dにする必要性を感じない作品が大半であり、ホラー以外では機能しないのではないか。
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 最近は4Dまで登場し、座席が動いたり、風や香り、振動まで体感できるようにアトラクション化されています。じっさいこの『ジュラシック・ワールド』も上映形式が通常版である2D、いわゆる3D、そして今回話題になっている4Dまであります。  なかでもIMAXでは4Dが大人気で、この形式での上映回のみは毎回チケットが完売しているようです。目新しいもの好きな客層が飛び付いているのでしょう。史上最大の見世物恐竜動物園である『ジュラシック・ワールド』を観に行く僕ら観客も映画館という見世物小屋の最新アトラクションに通う下衆に過ぎないのだろうか。  最新のCG技術で当時の観客すべてを驚かせたオリジナル『ジュラシック・パーク』では事業家が投資家の不安を取り除くために保険会社の弁護士などが登場し、安全面よりも強欲資本主義が重視されていましたが、グローバル資本主義が大手を振って闊歩する現在ではさらに過剰な演出による見世物要素が強化されています。
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 表面上は夢を提供する遊園地経営の色彩を身に纏っていますが、裏に入るとバイオテクノロジーの軍事利用を影で進めるための隠れ蓑として使っています。狡猾なインド系経営者と金で動く中国系科学者の組み合わせに軍事産業が乗っかっている。  ディズニーランドやユニバーサルスタジオでは子供が欲しがるキャラクターグッズやバカ高い食べ物が容赦なくおとうさんやオバアチャンの財布から現金を減らし、クレジット経由で銀行残高を激減させていく。  遊園地という名で庶民から金銭を奪う課金システムは考え方によっては税金よりもたちが悪い。生活全般をカバーするキャラクター商品を見ると吐き気がきそうになります。
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 ハリウッドだけではなくヨーロッパのサッカーを見ていてもここ十数年思うことがあります。それはプレーヤー達が懐にしまい込んでいる巨額の報酬です。一年で数十億円を手にするプロ選手を必死な形相で応援しているのは失業の恐怖に怯える貧乏な労働者だという事実に気付くと急にプロスポーツへの応援熱は醒めてきます。  オリンピックでの自国選手の活躍は国威高揚に繋がり、贔屓チームの勝利は貧困や不満から目を背けさせる。僕らの街にやってくる映画も現実から逃避させてくれるツールのひとつなのかもしれない。  そんなことを考えつつも、特撮映画が大好きなぼくはついついこういうのが公開されると観に行ってしまう。さすがに投入される予算は圧倒的でマーケティングがしっかりしていて、キャラクター商品を大量に陳列していました。
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 これもユニバーサルスタジオのアトラクションになるのは間違いないでしょうし、ハリー・ポッターのあとはこれで大丈夫でしょう。ついでに本来は関係ないはずの『進撃の巨人』までヒットすれば、さらなる大儲けが出来そうなので、関係者はニヤニヤしていることでしょう。  それでも2001年の『ジュラシック・パーク3』以来、14年ぶりに公開された本作品の映像インパクトは観に来た観客の期待を裏切ることなく満足させてくれたことは間違いない。  スクリーンは第1スクリーンが割り当てられていますので、大勢の観客を見込んでいるのでしょうし、じっさい今日も平日にも関わらず、半分くらいは埋まっていました。予告編はなかったものの来年夏には『ゴジラ』があるよと宣伝していました。
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 物語の構成はノーマルですが、もっと狂暴な恐竜を見たいという欲求は強まるばかりのようで、DNA操作が推進された結果、人間による制御が出来ない新種を作り出していきます。安全性よりも興行利益を重視する姿勢がより大きな災難をもたらす点も皮肉たっぷりで良い感じです。  テレビCMや予告編に登場する海棲爬虫類ミノサウルスだけではなく、よりジャンボサイズで生まれ変わるティラノサウルス型の新種、調教された四頭のヴェロキラプトルを駆使して生物兵器化しようとする軍事産業との暗躍等見所はたくさん用意されています。  今回も金が大事な中国系マッド科学者によって、恐竜の胚が持ち運ばれてしまう。このシーンは第一作目のデブのシステムエンジニアが胚を盗もうとする場面を思い出させる。偶然、本日の上映を観に行ったときに近くの席にベラベラと本編が始まるまでしゃべっていたヤツがネドリーそっくりのデブだったので、「お前も喰われて死ね!」と思いながら観ていました。
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 後半のクライマックスで翼竜プテラノドンが人間たちを飛行しながら捕食するシーンが出てくるのですが、たぶんコイツは重いから無理だろうなあと思います。ジュラシック・パークのシリーズではお馴染みのクルマと恐竜の追いかけっこももちろん用意されているので昔からのファンにも楽しめるでしょう。  また、けっこうグロテスクなシーンが満載されていて、恐竜同士の戦いだけでなく、遺伝子を弄び、狂暴な恐竜を作り出す愚かな人類を爆食していきますので、残骸があちこちに散乱しています。  懐かしのジュラシック・パーク時代のレストランやグッズ販売所が出てくるのですが、20年以上は放置されていたであろうバギーが動き出したりするのはご都合主義が過ぎる。まあ、特撮映画なんだから、細かいことはすべてスルーしていかねばならない。
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 ハモンドをオジイチャンと呼ぶ今回の少年二人と叔母であるクレアの関係性は第一作目の姉弟とどのような繋がりなのだろうかとかの説明はまったくない。四作品が繋がるのであれば、こういった細かい描写があった方が古くからのマニアは喜ぶだろう。  カッコいいシーンとしては逃亡した新種のティラノザウルス型を追跡する際に主人公クリス・プラットはバイクに乗っていて、教育係として常に一緒にいた彼の周り(肉食獣なのに彼を襲わないほど知能が優れている。『ジュラシック・パーク』から見ている人にはラプトルが高知能なのは周知の事実でしょう。)を囲い込むように高速で追走する四頭のヴェロキラプトルを捉えた映像が印象深い。  今回のラプトルはこれまでと違い、ただの敵ではなく関わってきた人間へは忠義を尽くす恐竜という新たな姿を見せてくれる。超大型の新種レックスの遺伝子にはラプトルのものが混ぜられているのが理解できるシーンもあり、これが示すのは次回の第二作目でははっきりと味方として機能するレックス誕生の可能性をファンに知らせたのではないか。
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 特撮シーンではVFXはもちろん大進化を遂げているのは当然ですが、あえて古臭いアニマトロ二クスを用いて実物に近い恐竜を作り出して撮影に使っているのは温かみがあって良い。実際に使われているのは新種レックスによる狩りのゲームの犠牲となったアパトサウルスブロントサウルスのこと。)を看取るシーンに使用されています。  それと演者の中で個人的にはもっとも感慨深かったのが主人公クリス・プラットと敵対するインジェン社の現場監督(?)を演じたヴィンセント・ドノフリオです。「え、誰それ?」と思うのが普通でしょう。
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 ヴィンセント・ドノフリオ。彼の名前を聞いてもピンとこない人が大半でしょうが、スタンリー・キューブリックが1987年に発表した戦争映画の問題作『フルメタル・ジャケット』で精神に異常をきたす新兵役で鮮烈な印象を残した俳優さんです。  作中で弾倉をチェックしていた彼が「フルメタル・ジャケット!」とつぶやくシーンはかなり気持ち悪かった。眼も完全に精神異常者の目つきになっていて、危険な香りがするので覚えている人もいるでしょう。
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 見ていて、「なんか見たことある顔だなあ。」と思い、映画のエンディングのクレジットを見ていると彼の名前を見つけたので嬉しくなりました。最後まで観なきゃいかんと改めて思いました。  クレジットでいうともう一つ興味があったのが撮影場所で、コスタリカで撮ったものだとばかり思っていましたが、実際はパークのシーンはニューオリンズの廃園となった遊園地とスタジオ、そして恐竜たちの闊歩するシーンではハワイのオアフ島とカウアイ島が使われています。 総合評価 80点
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