良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ロッキー3』(1982)この映画の印象が強すぎて、ずっとミスターTが嫌いでしたww

 最近、今までの映画ファン人生を振り返り、素直になろうと思っていて、大昔好きだったアクション映画やトラウマ映画(『砂の惑星』とか。)などを再度DVDで見ています。  なかでもスタローン再評価(偉そうですいません。ただあまりにもバカにされているのは不当だとかんじています。)が始まっていて、ちょっと前に『ロッキー』の記事を書きました。  蟷螂の斧さんから「ミッキーがユダヤ人だったのは知らなかった。」とのコメントをいただきましたので、見直す意味で再度、二十年ぶりに第三作目の『ロッキー3』をTSUTAYAさんから借りてきています。
画像
ギラギラした虎の眼で闘え 闘いのスリルを味わえ ライバルの挑戦に立ち上がるんだ 最後に生き残る奴は 暗闇から獲物に忍び寄ってくる 今もずっと虎視眈眈と 眼をギラギラと光らせて 虎の眼を持ち続けろ 虎の眼を失うな  印象的なギターリフが懐かしいサヴァイヴァーの『アイ・オブ・ザ・タイガー』が掛かってきた瞬間、一気に時計は過去に戻り、ぼくの頭のなかは1982年に逆戻りしていきます。  YMOの最高傑作『テクノ・デリック』やビリー・ジョエルの『ナイロン・カーテン』が大好きだったあの時代へ戻ってきます。なんとも不思議な感覚ですが、十代を迎えてきた頃の自分に音楽が連れ戻してくれる。  この映画を一言で表すとサントラの圧倒的な力強さでしょう。もっとも有名なビル・コンティのテーマ曲、フランク・スタローンの『テイク・ユー・バック』、そしてサヴァイヴァーの代表曲『アイ・オブ・ザ・タイガー』はとても魅力的かつ効果的なサントラでした。  マスクを外した佐山聡のスーパー・タイガーも入場曲に『アイ・オブ・ザ・タイガー』を使っていました。最近、体調を崩されて、入院されていたそうですが、リングスやUWFで活躍した前田日明(アウトサイダーも好きです。)とともにぼくらの小中学生期のヒーローの一人なので早く元気になってほしい。
画像
 第二作目でカール・ウェザースとの凄絶な打ち合いを制し、ついに世界チャンピオンになったロッキーは立派な豪邸に移り、ミッキー(ベージェス・メレディス)も同居させ、順調に10度の防衛戦をこなし、CM出演や有名雑誌の表紙を飾り、アメリカン・ドリームを体現していき、フィラデルフィアのあの広場に銅像まで立つ地元の名士に上り詰めていく。  彼の成功物語に対比するようにトレバー・ラング(ごっついチャレンジャーのミスターT!)の孤独なトレーニングの様子と世界ランク1位にまでたどり着いていく軌跡を描き出していく。  傍目に観ても腑抜けた目と身体に映るスタローンとは全く違う、というよりはかつての自分の立場と同じ挑戦者にむしろ共感してしまう。彼のおかげで映画がグっと締まっています。最大の功労者がミスターTでしょう。悪役がしっかりしていれば、少々の粗さが誤魔化せるという意味でもキャスティングの勝利です。  彼が当たったから、次の敵役にはソビエト人役のドルフ・ラングレンを持ってきたのでしょう。ついでにごり押しでブリジット・ニールセンを出してきたのはどうだったのだろうか。このときはすでに恋仲だったのだろうか。すぐに別れちゃったから、どっちでもいいけど。
画像
 中学生のころに観に行ったときは単純にロッキーの味方をしていた自分も今となって見直してみるとミスターTのほうに感情移入していっている自分に気づきます。孤独な戦いをしている彼にシンパシーを感じるようになりました。  年齢を重ねると物の見方が変わってくるのでしょう。それでも彼が場外でのいざこざでミッキーを巻き込んでしまい、結果として心臓麻痺で死なせるきっかけを作ってしまったので30年以上にわたり、彼はシリーズでの永遠の敵なのも事実です。  ただロッキーを破り、彼自身がチャンピオンになってからは「個人的にロッキーが嫌いなわけじゃないよ。」とか「俺が手に入れたものを失いたくない。」などと発言し出すころには人間はみな同じなのだなあという当たり前のことを気づかせてくれる。
画像
 この作品での悪役ぶりのせいで、ぼくはどうしてもミスターTを受け入れられず、『特攻野郎Aチーム』も未だに一回も見ていない。このころはアメリカのドラマシリーズが結構流行っていて、名前は忘れましたが、戦闘ヘリ(エアウルフだったかな?)が主人公のドラマやしゃべる車(たしか、『ナイトライダー』でキットだったっけ?)が実質上の主人公のドラマがあったりしました。  印象的なのはロッカールームで息絶える恩師ミッキーを看取るシーン。蟷螂の斧さんからご指摘のあったシーンですが、ダビデの星が刻印されているミッキーのネームプレートのほかに教会の建物にもダビデの星の模様がデザインされていますので、多分間違いないのではないでしょうか。こうしてみていくとこの映画のキャラクターたちはイタリア人移民(ロッキー)、場末のジムのマネージャー(ミッキー)、アポロ(黒人)と差別を受けてきた出自の者ばかりです。  それでもチャンスの国アメリカでは自分の力で這い上がれるのだという強いメッセージを与えました。1%の富裕層が99%を支配する現在では陳腐に見えるかもしれませんし、大金持ちのトランプが共和党候補の中で一番人気が高いという現状も嫌な感じがします。  カール・ウェザースとのトレーニング、そしてミスターTとの再戦後に、スタローンとウェザースが決着をつけるためにスパーリングを始めてクロスカウンターに繋がっていく最高にカッコイイエンディング。探せば光る映画ですし、映像には強さがあります。
画像
 このクロスカウンター場面はウルトラセブンのオープニングを思わせる油絵を溶かしていくようなアートな色彩に変化し、『アイ・オブ・ザ・タイガー』とともに作品を閉じていく。  映画の構成はベタですし、かつての仇敵だったカール・ウェザースがふがいないかつてのライバルに手を差し伸べる場面などはご都合主義と言われるのでしょうが、ファンとしてみると「ご都合主義の何が悪いんだい?」と居直ってしまう。  映画を見ていて思い出したのはなぜかジャッキー・チェン初期作品である『拳精』『蛇拳』『酔拳』でした。たぶんダメなヤツが修行して強くなるという下りが一番楽しいからでしょう。あれだけやったんだから何とかなるに決まっているよという展開がご都合主義というならば、言わせればいいのです。  お金をせっかく払って観に行った映画館でわざわざ主人公がズタボロになる映画なんか観たいかいと言いたい。映画館に時間とお金をかけずに、テレビやDVDを見ただけで映画を判断しないでほしい。
画像
 たとえゴールデン・ラズベリー賞に選ばれたような駄作だって、観に行った人は必死でその映画の良さを探すだろう。観に行った自分が間抜けにならないように良さを探すか、彼女とその映画のバカぶりを探すかのどっちかでしょう。  スタローン映画はその後、駄目映画賞の常連になり、『ランボー2』『ロッキー4』(二作が同じ年にノミネートという奇跡を起こすのが我らがスタローン!)、『ロックアップ』『コブラ』『ランボー3 怒りのアフガン』『ロッキー5』『スペシャリスト(同じくラズベリーの常連であるシャロン・ストーンとの夢の共演。)』など我が道をひた走っていく。  あれっ?『ジャッジドレッド』は入ってなかったのかなあ。どっちでもいいけど。こうして見ていくとご都合主義映画というか、捻りのない作品は芸術とは認められないのだろうなあというのは分かりますが、皆が皆そういうエッジの効いた作品ばかりを求めているとは思えないのも事実で、とりあえず何か観ておこうかという若いカップルには小難しい映画よりもスタローンやシュワ、シャロン・ストーンがピッタリだったのだろう。  しかしながらぼくはこれらの映画も好きですし、『ロッキー3』で一番覚えているのはアントニオ猪木に引導を渡したハルク・ホーガンが登場し、スタローンと戦うチャリティ・マッチのシーンなのでした。このころはまだ「一番~!」とかやってませんでした。 総合評価 60点