良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『グリーンドア』(1972)CMに出ていた綺麗なお姉さんがいきなりポルノスターに!?

 オリジナル英語タイトルは『BEHIND THE GREEN DOOR』であり、グリーンドアの裏側でくらいの意味なのでしょうか。邦題はシンプルに『グリーンドア』となっています。  おそらくマリリン・チェンバースを知る人はかなり少なくなってきているに違いない。デヴィッド・クローネンバーグ監督の初期作品である『ラビッド』に出ていたチンチンが生えてくる白人女優だと言えば、一部マニアはかすかに思い出すかもしれない。  また三大ポルノである『ディープ・スロート』『ミス・ジョーンズの背徳』『グリーンドア』の一角を占める彼女を懐かしむオールド・ファンもわずかながら生き残っているでしょう。  三大ポルノにはそれぞれ特徴があり、ポルノがエンターテインメントとしての地位を確立するのに大いに貢献したのは衝撃的だった『ディープ・スロート』でしょう。画期的だったのは全編カラー撮影だったことと全国での一斉ロードショーだったことです。
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 ジャクリーン・ケネディも見たと噂されるなど話題性に事欠きませんでした。『エルトポ』などとともに1970年代文化の象徴である深夜上映作品とその意義を収めた『ミッドナイト・ムービー』でも紹介されています。  のどにクリトリスを持つ女と言われたリンダ・ラブレイスの身体を無理矢理張らされた決死の演技の賜物だったのは明らかになっていますが見世物としての効果は絶大で1980年代には裏ビデオで出回っていました。ヒモと別れたその後の彼女はポルノ反対派に回り、業界人からはビッチと蔑まれます。  リンダ・ラブレイスよりももっと醜いながらも淫靡な雰囲気を持つのは『ミス・ジョーンズの背徳』でしょう。陰鬱な雰囲気を持つこの作品は個人的にはあまり好きではありませんが、記憶には残っているので映像としてのインパクトはあったのでしょう。
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 彼女らに比べるとマリリン・チェンバースはもともと石鹸会社(超有名なP&Gです。)のCMガールを務めていたほどの美貌なので、まったく次元が違う領域に達していました。  そんな彼女がなんでよりによって性器結合のどアップがてんこ盛りで、リンダ・ラブレイズばりの口技を要求されるハードコア・ポルノの世界に迷い込んでしまったのだろうか。よほどお金に困っていたのだろうか。  詳しくは知りませんが、可愛い風貌の彼女はポルノ・スターとして圧倒的な人気を得たようです。オプティカル映像を駆使した『グリーンドア』に関してはビデオが出ていて、『グリーンドア/イヴの復活』と『グリーンドア総集編』を見ました。
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 ぼくはマリリン・チェンバースの全盛期を知りませんが、大学生になるまでには三大ポルノをすべて鑑賞済みでした。1980年代中盤でしたので、すでに時代はフィルム撮影ではなく、安価でお手軽なビデオがポルノの主戦場になっていたので当時からすでに過去の人になっていたように思います。    よって三大ポルノよりもジンジャー・リンや未成年だった頃からハードコア・ポルノに出演していたために本人や関係者ら多くの逮捕者を出したトレーシー・ローズらのほうが可愛らしく、しっくりきました。  製作年度がかなり違うため、1980年代のビデオ作品を見慣れた目で1970年代の洋ピンのフィルム作品を見るともはや懐かし映像でしかないほどに画質が圧倒的に暗い。今の若い人にはピンとこない映像になっているのかもしれない。
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 『グリーンドア』はさすがに日本語字幕版を見てから30年近くは経っていますので内容はうろ覚えです。動画を海外サイトに行って見てきました。今の目で見るとストーリー性がある洋ピンかなあという程度にしか感じない。しかしオプティカル合成を多用し、サイケデリックな映像表現と構図の妙を持ち込んできたのは才能を感じます。  ただしこれがアメリカで上映されたのは1972年で、日本で公開されたのは1976年です。いかにもヤバそうな並み以下の醜いストリッパー崩れみたいな容姿のモデルがほとんどのなか、突然皆がテレビCM(石鹸会社)で見ていた綺麗なオネエサンがポルノに出てきたことの衝撃は相当なものだったでしょう。  さらに美貌だけに甘えることなく、彼女がこの映画でやってのけたプレーはまだまだタブーだった黒人との異人種間での性行為、6人の女とのレズプレイ、4人の男との乱交5P、顏射など現在のAVでも出てくるようなプレーの数々をしっかりとこなしているのです。
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 言い換えると現在に至るまで演出は変わっていないということです。まあ、基本的に人間(スケベおやじや中高生)が見たいものはみんな同じなのでボロい市場ではあります。オールスター出演で話題作となった『キャノンボール』でジャッキー・チェンが車の中で見ていて、事故を起こしかけた時に見ているのがこの『グリーンドア』です。  秘密クラブでの仮面をつけた金持ち連中の前で上記のプレーをやらされる彼女を見て、連中も発情し、最後は乱交パーティのようになる。二回戦はわりとノーマルなプレー場面に突入していくが、この映画の肝はこの間に使われるオプティカル映像を駆使した表現の斬新さでしょうか。  画面がサーモグラフィのように青や黄色や赤に変換され、マリリンが黒チン(テッドみたいです。)をしゃぶり尽くし、顏射シーンに突入します。しつこいくらい何度も顏射の瞬間を特殊効果で映し出します。それくらい当時は珍しく、大きな見せ場だったということでしょう。
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 日本ではボカシに慣れているのでさほど違和感を覚えませんが、ポルノ好きのアメリカ人からするとなんだか不思議な感覚だったかもしれない。それとも映像では分からない薬物による興奮を視覚に訴える表現だったのかもしれない。  あくまでも40年近く前のポルノなので娯楽と割り切って見ていられますが、人種偏見が激しい南部ではよりセンセーショナルだったに違いない。  大人気だった1970年代は過ぎ去っていきます。その後の1980年代にはかつて人気があったマリリン・チェンバースは女優としての道を歩き始めるもののみんなが見たいのは、特に彼女に色々とお世話になったモテない映画製作者たちが要求するのは彼女のヌード・シーンばかりでした。
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 『超能力セックス・ウォーズ/エンジェルHEAT』もそういう作品群のうちのひとつです。この間、古いビデオテープを見ましたが、今の目で見るとただただツラい。どうしても『グリーンドア』での彼女を思い出してしまいます。  そんなこんなで日本語字幕版ビデオを見ましたが、これはこれでボカシやカットの連発のためにいったい何を見ているやらさっぱり分からない。  海外サイトまで行けば、無料で鑑賞できましたが、今さら40年近く前のポルノを見ても楽しいはずもない。宮沢りえヘアヌード写真集もそうでしたが、彼女が出来始めた頃を境にこういうポルノや写真集などは彼女チェックの対象となり、問答無用で焚書坑儒の憂き目に遭う。  何年も掛けたコレクションは出掛けているうちにゴミ出しされるか、PCからリンクが完全消去されるか、DVDなどはペンチか何かで切り刻まれてしまいます。  『ウォーター・パワー  アブノーマル・スペシャル』なんか出てきた日にはどんな酷い目に遭わされるか分からない。そんなことを何度か経験するとコレクションの無意味さに気付く。  すぐに新たな帝国を築くがいつの間にか整理されてしまうので諦めました。なにを書いているのか分からなくなってきましたが、エロ動画を見るのは独身時代の楽しみではあります。  しかし自宅には置いとけないので、誰かの家を秘密基地にして、そこで巨大なアーカイブを築く手もありますが、それも現実的には無理でしょう。
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 所有するという基本的な欲求を無くせば、無料動画サイトで十分でしょうが、変なウイルスに感染したり、変なメールが届くのは鬱陶しいのでさっさとエロ動画はU30の娯楽だと割りきって卒業しましょう。  マリリン・チェンバースは懐かしくはありますが、たとえばぼくら40代世代がビデオで見てきた黒木香、小林ひとみ愛染恭子豊丸が今普通にB級映画に出演していたとしても判別できないのでしょうし、出演者のエンディング・ロールとかで彼女らの名前を見ても残念ながら気づかないのかもしれない。  先駆者としてのマリリン・チェンバースの頑張りと名声、その後の幸福とは言えない役者生活とプライベートの人生には哀しさがこみ上げてきますが、大金を稼ぐ代償は必要だということなのでしょうか。  革新的な映像表現と衝撃的だったであろう内容があればこそ、彼女の死後でも僕らのようなかつて彼女の出演作を見た者がこうやって記憶の片隅にあった色々なことを思い出すのかもしれない。 総合評価 65点