良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)もっとも楽しいSF映画。ゼメキスの最高傑作。

 35年以上前になる1970年代中盤から1980年代前半にかけての小中学生の頃にかつて住んでいた場所にもう一度行ってみたいなあと思ったことがある方は少なくないでしょう。  あの駄菓子屋はどうなったのかなあとか、遊んでいた広場や友達の家はまだあるのかなあなどと懐かしさとともに思い巡らすものの実際問題として再度その場所へ行くには経済的にはそれほど問題はなくとも、たとえば東北から九州を移動するとなると時間的な制約があまりにも大きい。
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 そんなときに思い出したのがGoogleのストリート・ビューの存在でした。昨夜、急に現在の様子を見たくなり、PCでGoogleにアクセスして、かつて住んでいた関東のとある地域に飛び込んでいきました。  まずはランド・マークとなるはずの地元駅を探し、そこから記憶を頼りに中学校との位置関係を探り、さらに小学校まで辿っていきました。当時住んでいたのは小学校の正門近くでしたので迷うことなく、そこまでたどり着きました。
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 人形アイコン(慣れるまで面倒くさい!!)の向きを反転すれば、学校からの帰り道の視点になる。するとたぶんそうだろうなあと薄々は予想していた事態が発生しました。  通りの角にあったかかりつけのお医者さんはすでになく三軒くらいに分譲され、広かった友達の家はすでに人手に渡ったのか四軒に分割されています。
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 35年の月日のうちには日本経済が絶好調だったバブル期を含んでいるので、宅地造成が進んだのでしょう。僕が住んでいた家の跡地もピカピカになっています。三十年以上の月日を経て二回は建て替えられているのだろう。  近所にあった駄菓子屋は一軒を残してすべてなくなっています。残りの一軒も賑やかだった頃の面影はまるでなく、自動販売機と自動販売機と自動販売機とシャッターが道行く人の目に触れるのみです。
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 国鉄の踏み切りは高架と下を通る道に替わり、かつて見に行っていたブルートレインも今は存在しない。釣りに行っていた川に架かっていた小さくてみすぼらしかった橋は両側に歩道スペースがあり、しかもクルマ二台が通行できるようになっています。  友達の家々に向かってみるとアパートが建て替えられていたり、平屋建てだったのが二階建てに変わっていたりして、まだ住んでいるのかは確認できない。
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 なかでもショックだったのは幼稚園横に三軒繋がりで友達が住んでいた(当時はすぐに遊べる彼らが羨ましかった!)家々が跡形もなくなっていて、周りの家もろとも大きなマンションに変貌していました。  さらに驚いたのは近所の大きな通りを挟んで両側にあった商店街のうち、片側のお店が全て無くなり更地と化していたこと、残っているもう片側には昔あったお店が無くなり、全部がチェーン店しか存在していないことでした。唯一残っているのは公民館が敷地内にある神社だけで、鳥居を見つけたときは嬉しくなりました。
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 美味しいと評判だった中華料理屋さんやお寿司屋さんもなく、駅前のデパートもなくなっている。たぶん再開発でしょうが、テナント名も変わってしまっているのでなんだか分からない。ザリガニを捕りに行っていた近所の田んぼは全部民家になっています。  こんな感じでいくつかの都市をGoogleストリート・ビューでまわって行きましたがあまりの変わりように驚かされました。浦島太郎になるにはほんの20~30年なのです。
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 タイムトラベル物のSF映画の設定では百年だか数百年後の世界に行きたがりますが、たった数十年でも暮らしぶりや街並み、テクノロジーが恐ろしいスピードで変化している。  これからSF映画を見るときにはそういう感情や戸惑いがあるはずだという思いも浮かべながら、苦闘しているだろう登場人物たちとの思いの共有を図りながら作品に接したい。
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 さて。タイムトラベル物のSF映画で思い出深い作品といってもあまりにもたくさんあるのでひとつに決めるのはむずかしい。そしてひねり出したのがこの映画。  ちょうど30年前の1985年に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』です。ぼくが思い出すのはトッチャンボウヤの主人公であるマイケル・J・フォックスであり、教会に落ちるはずの雷の一撃に賭けるデロリアン号のシャープな造形です。
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 未来では良き友人かつ過去での一番の協力者となる変人科学者ドクを久しぶりに見るのは嬉しく、1984年の『ハート・オブ・ロックンロール』を超える大ヒットをかますことになるヒューイ・ルイスが歌っていた『パワー・オブ・ラブ』も懐かしい。  そしてクライマックスにかけての怒涛の展開。まずは両親をくっつけるために苦闘するパーティでギタリスト(これもパーティ・バンドとして入っている黒人バンドのギタリストがマイケルを救助するために指を怪我することから出演が決まる。はじめて人前で演奏するという希望もかなう。)としてハジケた演奏を見せるマイケルの『ジョニー・B・グッド』のパフォーマンスは素晴らしい。  これをチャック・ベリーに聴かせるという演出も笑えます。ザ・フー、ジミヘン、エディ・ヴァン・ヘイレンがやっていたハウリングを生かしたフィードバックやライトハンド奏法などを1950年代の田舎の高校生にかませば、びっくりするに決まっています。
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 落雷を未来に戻る唯一のチャンスをとらえ、当時のできる限りのテクノロジーを結集してマイケルを帰そうとするものの、電気ケーブルが外れまくるというギャグのようなサスペンスが何度も繰り返され、一方のデロリアンもエンジントラブルばかりという姿は『スターウォーズ』で何度も故障するハイパー・ドライヴみたいで笑うしかない。  帰ってきたら帰ってきたで、リビア人に殺害されるクリストファー・ロイドを見てしまうマイケル。未来を知りたくないといいながら、結局はマイケルの意見に従い、きちんとテロリスト対策をしているのもこの手の映画ならオッケーでしょう。
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 また帰ってきたときにはちょっとずつみなが幸せになっていたり、デロリアンの燃料がプルトニウムから生ごみとアルコールというバイオ燃料に変化しているのも先駆的です。  たぶん一般の大多数の方も同じような意見をお持ちでしょう。誰も傷つかない、よく出来たハリウッド古典的娯楽作品であり、ロバート・ゼメキス監督にとってもキャリア上で重要な位置を占める作品(ぼくは『抱きしめたい』が一番好きです。)に違いない。
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 活き活きとしたキャラクターたち、飽きさせないストーリー展開、上手くハマった音楽、デロ リアン号のスタイリッシュな姿と設定の妙、舞台となった1950年代の古き良きアメリカの郷愁を誘う雰囲気とユーモア感覚など優れた点がたくさんあります。  久しぶりに見たくなったので、WOWOWかスカパーで録画したDVDを引っ張り出し、デッキで再生しました。ムダが多すぎて楽しい懐かしのお目覚めシステムのシーンから物語は始まります。ストーリーについては映画ファンならだれでもこの映画には思い入れがあるでしょうからあえてゴチャゴチャ書きません。
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 脇役たちが魅力的で、マッド・サイエンティスト(モノクロならそのまま『メトロポリス』に出てきそうですし、時計台のシーンなどはそのままオマージュに見える。)然のクリストファー・ロイドの印象があまりにも強い。  ヒロインとなるべき女性は二人いて、マイケルの母となるリー・トンプソンと恋人であるクローディア・ウェルズです。今回はリーが主体になっていて、実はやさぐれていた母親に当惑するマイケルの様子がおかしい。
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 MVP的な脇役がジャイアンのようなビフ役のトーマス・F・ウィルソン(スケボーに乗って逃げ回るマイケルを車で追いかけて、肥料(糞)トラックに追突していくときに「シット!」と言いながら、糞に突っ込むのはギャグでしょう。)で彼の好演が演技面での良いスパイスとして機能しています。俳優たちが活き活きしているのがとても気持ち良い。  設定も今でいうリンクがいろいろ張り巡らされていて、現在シーンでの何気ない会話や登場人物が実は過去シーンでとても重要だったことが徐々に分かってくるのも楽しい。見所が一杯で気がつくとエンディングを迎える。
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 映画ファンにとってもっとも幸せな気分で楽しさいっぱいにさせてくれる作品のひとつです。その後、続編が製作されていきますが、やはり第一作目の完成度が尋常ではなく圧倒的なレベルを誇っています。  同時間に同一人物は存在できないというSFの掟には背いていますが、せせこましいことを言うつもりもないですし、誰も気にしないでしょう。マイケル・J・フォックスの病状が安定している時期を上手く使いながら、若手俳優を起用して、新たなる第一章を進めて欲しい。
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 ぼくはスター・ウォーズのファンではありますが、観たいのはマイケル・J・フォックスが元気な姿で脇を固めてくれる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の新作なのです。  もちろんサントラはあのテーマ、そして主題歌はヒューイ・ルイスに頼むか、もしくは彼をどこかのシーンで歌わせるかしてくれると古くからのファンは感涙にむせぶでしょう。
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 学生のころ、これを観る前はなんで“フューチャー”に“バック”するのかと思いましたが、観た後は過去に行っていしまったマイケルが現在に戻ってくるからこれで良いのだと妙に納得したのを覚えています。  あまりにも続編が多いと嘆きのコメントが多い今日この頃ではありますが、この映画の続編にもしマイケル・J・フォックスが脇役で出演してくれるのならば、映画館まで観に行きたい。
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総合評価 100点
バック・トゥ・ザ・フューチャー オリジナル・サウンドトラック
ユニバーサルインターナショナル
2015-11-04
エタ・ジェイムス

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