良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『恐怖のワニ人間』(1959)大昔、12チャンではこんなのをやっていた…。実は悲しい作品。

 大昔に一度だけテレビで見た映画でも強烈な記憶として残っている作品がいくつもあります。今になって調べてみると大ヒットした映画のコピーみたいでショボいとか言えますが、見る順番が反対で二番煎じのほうを先に見てしまった場合、印象が違ってきます。  今回のケースでは先に見たのが『恐怖のワニ人間』でオリジナルの『蠅男の恐怖』を見たのはその数年後でした。情報量がまったくないに等しい小学生にとってはワニ人間のヴィジュアルは強烈でした。
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 たぶん映画雑誌などでこの映画のスチールを見たならば、ほとんどの人は「なんだこりゃ!?」と大笑いしながら、ただのクズだと思うでしょう。日本語版も当然のように出ていませんので、変なのに違いないと判断するかもしれない。  ただ幸いなことに動画サイトには全編がアップされていますし、英語版もそれほど難しい会話はありませんので十分に楽しめます。見た目はへなちょこですし、出来損ないのショッカー怪人みたいです。
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 しかし彼がこんな姿になってしまったのは大火傷を治療する人体実験が失敗したからであり、しかも科学者のミスではなく、彼の妻を強姦しそこねて、有り余る性欲をもて余した使用人であるロン・チェイニーJr.(ユニバーサルの『狼男』が有名。)が実験室で大暴れしたからです。
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 またこのワニ人間になってしまう元軍人の旦那は徐々にワニ化していく自分の姿、そして実験失敗により完全なワニ人間になってしまった自分の変わり果てた自分に絶望して湿地帯に逃げ込み、途中で何故かワニと格闘し、底無し沼に落ちて絶命する。
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 この物語の視点は生き残った妻がショックで記憶を無くしているために精神科医催眠療法を行い、浮かび上がってきた彼女の記憶を頼りに科学者が実験材料として語るものです。  ワニ人間として亡くなった旦那、この不幸な出来事にショックを受けて記憶を喪失した妻と夫妻揃って科学の犠牲になってしまうという暗い顛末なのです。しかもワニ人間は妻を襲ったロン・チェイニーJr.と人間として戦うのみであり、他人に危害を加えない。
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 そこがこの映画の良い点なのですが、反対に獣に成りきれないためにモンスターとしては中途半端になってしまいました。上映時間も74分間と短めですのでスッと見ることができます。まずは見てから判断しましょう。  スチールを見るとどうしてもバカ映画だと思われてしまうでしょうが、中身は悲しいエンディングを迎える物語でした。久しぶりに全編を見ましたが、子供の頃に見たときよりも、なんだか深みと哀しみを感じさせます。科学的な考証のデタラメさやデザインのチープさをおおらかに受け入れれば、真面目に作っているのは伝わります。
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 総合評価 58点