良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989)明後日10月21日。デロリアンがやってくる!

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』での“未来”とはいつだろうか。ちなみにこの映画での現在とは1985年であり、過去は1955年です。そして近未来となるのは2015年、つまり今年の10月21日、つまり明後日(時差があるので現地時間では明明後日かな。)のことです。  デロリアン号がやって来る日が近いのです。マニアにとってはハロウィンどころの騒ぎじゃないですね。映画で描かれた近未来にあるコモディティのうち、すでに一般家庭にまで行き渡っているのは指紋認証の鍵(防犯システムでの本人画像認証があります。)、3D画像(スピルヴァーグJr.監督のジョーズが出てきます。)。
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 冷凍ピザをチンする電子レンジ、ファックス(PCが発達している現在では電子メールがあります。)などでしょうか。履けば靴ヒモが勝手に締まる仕掛け付スニーカーはナイキから今年出るということを聞いています。  それでもぼくらが欲しかったのは第二作目と第三作目に登場するホバーボードですが、まだないですね。ドラえもんタケコプター的な移動アイテムとして欠かせないホバーボードが出たら、オッチャンは買うよ。そもそもタイムマシンがまだですね。
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 スティーブン・スピルバーグ製作、ロバート・ゼメキス監督作品として全世界でメガ・ヒットした前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はユニヴァーサルのヒット作の必要性からすぐに続編の製作にかかります。  それでも完成までには四年の歳月がかかりました。前作の大ヒットを受けて、主演のマイケル・J・フォックスは人気スターの仲間入りを果たし、多忙な日々を送る。もともと忙しいスピルヴァーグやその他の俳優陣も仕事を抱えていたでしょう。
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 すぐにはこの続編に取りかかることは出来なかったでしょうから、PART2までには四年の歳月が必要だったのでしょう。クリストファー・ロイドはともかく、他の俳優陣とマイケル・J・フォックスとの業界での地位の格差が圧倒的になっているだろうことは画面では伝わらないが実際はどうだったのだろうか。  映画のストーリー展開としては最初から第三弾に続いていくことが既定事実になっていて、二作目と三作目を合わせて一本と考えれば二作目では何も解決しないことへの不満は減るでしょう。
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 ただ、映画館に観に行ったときに“TO BE CONTINUED”とやられると期待感にワクワクするよりも焦らされるほうのイライラが強い。この何も解決していないまま映画が終わってしまう感覚は『スターウォーズ/帝国の逆襲』から『スターウォーズ/ジェダイの復讐』に繋がっていくモヤモヤした感じを思い出す。  シリーズ物の序破急の破に当たるのであちこちに展開の幅を広げていく過程となる。また登場人物たちに試練が降りかかる破の展開の性質上、スカッとくることはない。
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 全体を通して見ていくと、第一作目と第三作目にあるカラっと明るいこのシリーズ特有の楽しさは消えていて、近未来では愛する故郷が精神的にも物理的にも良さが消え失せ、ビフの下劣で荒んだ心証風景ディストピア的世界観が全面に出ている暴力的で希望がない暗さが観客に迫ってくる。  たとえ、完結編となる第三作目がハッピーエンドになるだろうことが期待できたにせよ、近未来の世の中は暗くなっているというだけで気が重くなってくるだろう。もちろん大団円に向かう前の試練は必要だろうと言うことは出来ます。
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 しかしそれは三作を通して見れば言えることであり、もしこの第二作目が歴史的な大失敗に終わっていたとすれば、当然ですが第三作目に突入しなかったでしょうから、違う未来がやって来たのかもしれない。  話の展開としては現在・過去・未来を目まぐるしく行ったり来たりしていて、登場人物たちも混乱している様子を見せるので、見ている観客も大いに混乱してしまう。あまりにも駆け足過ぎるように思えます。
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 そもそも同時代の同時間に同一人物は存在できないというSFのお約束を完全無視していてややこしいのに、マイケルが一人二役三役とこなしていくのは洒落が効いているが、悪ノリしすぎているきらいはある。  もちろんこの設定が産み出すコメディ効果は絶大で、第一作目でぼくらが見たシーンをアングルを変えて再現していく構図は斬新であり、新しい映画の楽しみを与えてくれます。
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 映画撮影では同じシーンでも、全体を撮っているエスタブリッシュ・ショットがあり、登場人物を各々捉えているクローズアップ、2人を撮しているカメラがあります。  その他クレーン・ショットなども撮影されていたでしょうから、使えるフッテージはしっかり使い、ボディダブルや会話が必要なシーンを撮り直したのでしょうか。
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 四年という短くはない時間が経過しているので、配役その他すべてを再現していくのは困難でしょうから、繋ぎに難があるシーンなどは使われなかったのでしょうね。  ハリウッドでは続編ありきで製作されている作品も多いが、この『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の続編である『バック・トゥ・ザ・フューチャー/PART2』ほどの完成度を誇る作品はそうそうなく、名作『ゴッドファーザー』の続編である『ゴッドファーザーPART2』か、同じSFというジャンル映画ならば『スターウォーズ/帝国の逆襲』くらいしか思い付きません。
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 第一作目と比べてしまうとバタバタした展開やマイケル・J・フォックスの彼女役クローディア・ウェルズ(彼女にはスターとして輝く未来が無くなってしまったのか!?)が唐突に変更されていたりする。今回はエリザベス・シューが務めている。  ヒューイ・ルイスの『パワー・オブ・ラブ』ほどの名曲が生まれなかったりと見劣りする部分があることや楽しすぎた第一作目との比較になってしまう。それでも素晴らしい作品であることには変わりはなく、凡庸な第二作目映画とは格段のレベルの違いがあります。 総合評価 88点